どうしてスペインでコロナウイルス感染が拡大したのか

2020年04月25日 06:00

スペインでコロナウイルス感染者の数はピークを過ぎて減少を始めている。今月13日から一部企業は封鎖が解除されて再開されている。

スペインでなぜコロナウイルス感染が急激に拡大したのかという分析は色々とされている。今回は電子紙『el diario.es』(4月10日付)にて分析されている内容をもとに筆者による補足説明などを加えて以下に説明しよう。

病院の受け入れ態勢を整えるNATOのスペイン部隊(NATO公式flickr

コロナウイルスがスペインで拡大した一番の要因は、スペインで細菌などの研究所においてこのウイルスの感染力が如何に強いかということを事前に十分把握していなかったというためだった。ということから、WHOから2月に注意を促す情報を得ていたが、それに対してスペイン保健省は危機意識の不足からより真剣に受けとめていなかったようだ。

何しろ2月24日付の国家安全局のまとめでもスペインでの感染者は僅か2人しかいなかったからである。コロナウイルスについて末端の医師にまで十分にこのウイルスの危険性について情報が伝わっていなかった。全国にある診療所の医師の間では一般の風邪やインフルエンザと同じような診断がされていた。(参照:dsn.gob.es

スペインでコロナ感染者で最初に死亡した人は2月13日にバレンシアで死亡している。調査によって、彼はネパールに旅行して感染したことが判明している。彼の死因がコロナ感染によるものであったと判断を下すまでに彼がネパールから帰国して3週間が経過していた。すなわち、それまで彼の体内にコロナウイルスが潜伏していたということになる。それが他の人に感染させて行ったのである。

しかも、コロナウイルス感染者でそれが軽症の場合は風邪と混同し易かった。だから、感染しているにもかかわらず医師に診断を仰がなかった感染者も多くいた。同様に診療所の医師もコロナに感染していた軽症患者ののどの痛みや発熱なども2月という寒い時期的なこともあって風邪やインフルエンザによるものという診断を下していた。それが要因となって、診療所の医師でコロナに感染した者もいた。

余談になるが、バルセロナで2月24日から27日まで開催される予定であったワールド・モバイル展示会の開催を主催者側が中止させたのは今から見ると正しい判断であった。この展示会には世界から10万人の訪問が予定されていた。しかも出展者側からのスタッフの参加も加えると10万5000人くらいをコロナ感染の危険にさらすことになっていたのである。

連日奮闘中のバルセロナの病院(Hospital CLÍNIC/flickr)

コロナ感染者が増加して行くのを観たスペイン政府保健省は感染しているか否かのテストの実施が必要と判断した。ところが、従来のPCR法では時間がかかる。しかも、瞬間試薬テストも不足していたということで、検査の対象には仮に感染していても症状のない人は検査の対象から外された。まさか感染しているとは思われなかったからである。

コロナに感染していても症状そして発病までの潜伏期間が2週間、人によっては3週間以上を要する。ということから、それまで感染しているのにその自覚がない人は検査の対象から外された上に、他人に感染させて行った。それによって急激に感染者の数が増加して行った。

感染拡大を防ぐには感染している人を対象に隔離を実施して行く必要があった。それを保健省は十分に実施していなかった。何しろ、感染した症状のない人まで感染テストの対象にしていなかった。また、それが出来ない事情もあった。瞬間試薬テストの不足とPCRによる検査は時間を要するという理由からであった。しかも、中国から輸入した試薬テストはどれも不良品という問題も抱えていた。

この検査を実施しない間も感染者は毎日のように増加して行ったのである。コロナウイルスの感染力の強さは当初スペインでは全く想像を絶するものであった。

感染している医師や看護師の場合も本来は治療看護にあった初期段階で検査をしておくべきであった。残念ながら、感染患者の急増の前にそれを実施するだけの時間的な余裕がないとして保健省は検査を受けさせなかった。検査をしたのは医師が疲労などを訴えた時であった。それまでは感染していても治療看護にあっていたということから、他の医療班に感染させていたのである。治療・看護にあたっている医療班は6万4000人いるが、その15%が感染者だったのである。この悲惨な現状は許されるべきものではない。彼らを守る医療安全防具の不足と事前のテストの実施不足がその理由である。

ZARAの創業者アマンシオ・オルテガや他の大手企業も中国から医療防具品を輸入して保健省に寄付し、また政府もそれらを輸入していたが、初期段階で十分にそれらを用意しておくべきであった。そのツケが医療班の死亡になって表れて4月20日までの時点で33人の医療班が亡くなっている。(参照:cadenaser.com

現在までの感染状況などから判断して、インペリアル・カレッジ・ロンドンはスペインにはコロナ感染者は700万人いるという報告をしている(参照:elconfidencial.com)。

社会労働党とポデモスの連立政権による対応の悪さへの批判はやむことがない。しかし、このような事態はスペインでは内戦以後経験したことがない。政府への批判はどうであれ、今年後半のスペインは大不況に見舞われることは確実だ。すでに、今年のGDPはマイナス10%から15%、失業率は25%という非常に悲観的な予測も出ている。これまでスペインの10年余りの経済発展のための努力が一挙に崩壊することになるのである。

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白石 和幸
貿易コンサルタント、国際政治外交研究家

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