コロナ危機を乗り越えるために。国会版「アジャイル開発」のススメ

2020年05月02日 06:00

異例のスピード成立。思わず連想した「アジャイル開発」

新型コロナウィルスが猛威をふるう中、29日の衆議院本会議では令和2年度一般会計補正予算が全会派一致で可決されました。アゴラ編集部が「競争から共闘へ」と報じたように、今回の流れでは野党も評価されていい働きを国民に示してくれたと思います。

左から共産・笠井氏、維新・足立氏、国民・玉木氏、立憲・福山氏(「外食産業の声」委員会中継より)

一連のスピード成立にあたっては思うところが二つあります。ひとつは野党が今回のような「あるべき姿」にもっと早く立ち戻れていたら、更なる加速が期待されたのではないかという残念感。もうひとつは松田公太・元参議院議員のように患者の家族としても経営者としても貴重な「当事者の知見」が、ダイレクトに政策提言として反映されたことに対する驚嘆です(参照:松田氏エントリー)。

松田公太氏(「外食産業の声」委員会中継より)

こうした一連の流れですが、ソフトウェア開発手法のひとつとして近年再評価の機運が高まっている「アジャイル開発」にも通じると感じました。俊敏、あるいは素早いという意味ですが、一連のコロナ対応に関わる法整備ではまさにこれが求められます。私自身も尾崎財団の研究員を名乗る傍ら、普段はIT系企業に勤務していることもあり、改めて注目した次第です。

アジャイル開発と、立法システムの共通点

私たちが日ごろ使っているインターネット上の各種サービス、また企業や役所で使われている基幹システムなどは多かれ少なかれ、システムを動かすためのソフトウェア(プログラム)が介在しています。わが国のさまざまな仕組みや社会そのものをシステムに置き換えるならば、ソフトウェア開発は法整備にも置き換えられるでしょう。

アジャイル開発は大規模開発のウォーターフォール型、プロジェクト管理重視型のスパイラル型とならぶ手法のひとつで、その概要は情報処理推進機構(IPA)のサイトでも見ることができます。

細部はサイトに譲りますが、どのような手法なのかというと、「アジャイルソフトウェア開発宣言」と題された一文に凝縮されています。

私たちは
プロセスやツールよりも個人と対話を、
包括的なドキュメントよりも動くソフトウェアを、
契約交渉よりも顧客との協調を、
計画に従うことよりも変化への対応を、
価値とする。すなわち、左記のことがらに価値があることを認めながらも、私たちは右記のことがらにより価値をおく。

というものです。「個人」を「法整備に関わるすべての当事者」に、また「ソフトウェア」を「法律」、「顧客」を「国民」に置き換えたら、そのまま応用できると思いませんか。

アジャイル開発という概念自体は2001年に端を発し、決してごく最近あらわれたものではありません。もしかしたら松田さんはすでにご存知かも知れませんが、少なくとも私には一連の進行プロセスがアジャイルの手法に重なって見えました。

アジャイル開発を定義するものは前述の宣言のみならず、「12の原則」が掲げられています。法整備をソフトウェア開発に置き換えたと仮定して、ぜひ順にお読みいただけると幸いです。(太字は筆者によるもの)

原則1:顧客の満足を求め続ける
原則2:要求の本質を見抜き、変更を前向きに
原則3:成果物を2-3週間で、リリースし続ける
原則4:全員で共通の目標に向かおう
原則5:人の意欲は信頼から
原則6:コミュニケーションは直接対話で
原則7:進捗も品質も現物で
原則8:一定のペースでプロジェクトにリズムを
原則9:よい技術、よい設計、よい品質の追求
原則10:ムダ=価値を生まない、を探してヤメる
原則11:よいモノはよいチームから
原則12:自分たちのやり方を毎週、調整する

この連休初日に成立した法案ですが、おそらくは一度作ったらおしまいではなく、現場で運用されることで新たな課題も見えてくることでしょう。

そうした時に、従来の法整備プロセスでは不十分で、どれだけ審議に時間を費やしたかと時間だけを掛ければよいというものではありません。適宜改正や見直しを繰り返し、修正(パッチ適用)も必要になることでしょう。
開発宣言のなかでもっとも肝心なのは、単に従来の手法や価値観を否定することではなく、むしろ認めながらも新たな価値を求めようとする。この点に尽きます。わが国唯一の立法機関である国会の一員である皆さまには、そこにこだわっていただきたいのです。

「永田町に染まり切っていない」皆さんへの期待

写真AC

もっとも、これまでのわが国の法整備を担って来られた方からすれば「法律とプログラムを一緒にするな」というお叱りの声も頂くかも知れません。

ただ、今年で130年目になるわが国の立法もしくは法整備のプロセスは、果たしてどれだけ進化しただろうか。尾崎財団の一員としては、明らかに「ここだ」というポイントが未だ見つけられずにおります。あえて挙げるならば、敗戦と引き換えに手にした現在のプロセス位でしょう。ただ私にすれば敗戦のそれは突然変異みたいなもので、わが国がみずから獲得しえた「進化」とは言いがたい。

だからこそ、今年がその契機、あるいは元年となって頂きたいです。その際、誰に期待するのかというと、良い意味で「永田町に染まりきっていない」方々に希望を頂いています。

アゴラの執筆陣だけでも足立康史さんや音喜多駿さん、小林史明さんや鈴木馨祐さん、そして玉木雄一郎さん、柳ヶ瀬裕文さんには大いに期待しています。

「日本でいちばん澱み、そして遅れている場所」永田町にこそ、どんどん新風を吹き込んでほしい。不偏不党の立場から、改めてそう思います。

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