菅原前経産相不当不起訴の検察、告発状返戻で「検審外し」を画策か

2020年07月28日 19:00

官邸サイト、Wikipedia

6月30日の記事【菅原前経産相・不起訴処分を“丸裸”にする~河井夫妻事件捜査は大丈夫か】で詳述したように、検察が菅原一秀前経産大臣に対して行った不起訴処分は、公職選挙法違反事件の刑事処分として凡そあり得ないものであった。東京地検次席検事が行った異例の不起訴理由説明も、犯罪事実が認められるのに罰金刑すら科さない理由には全くならないものだった。

しかも、菅原氏の指示で選挙区内の有権者の葬儀・通夜に香典を持参していた当時の公設秘書のA・B両氏の話によると、彼らは、昨年11月頃から東京地検特捜部の取調べを多数回受けており、現場の検察官のレベルでは、起訴に向けての捜査が行われていたように思えた。それが、最終段階に来て、捜査を指揮する上司・上層部と菅原氏側と間で、何らかの話し合いが行われ、それを受けて不起訴の方針が決まったようにしか思えなかった。

菅原氏の不起訴処分の前提として認定された有権者への寄附の金額は約30万円とされているが、A・B両氏の供述によって認められる公選法違反の犯罪事実は、3年間で約300万円になることは明らかだった。

2000年に、秘書と共に選挙区内で約1000円の線香セットを551人に配った公選法違反で罰金40万円と公民権停止3年の略式命令を受けた小野寺五典衆院議員の事例との比較からもあり得ない。罰金刑すら科さない「起訴猶予」は、交通違反で罰金も取らずに「お目こぼし」するに等しい。

菅原氏の不起訴処分を他社に先駆けた東京新聞の記事【「法軽視が顕著と言い難い」 菅原前経産相の起訴猶予で特捜部が異例の説明】で、

刑事告発した市民側は、本紙の取材に「公選法違反を認定しながら不起訴としたのは不当だ」として、検察審査会に審査を申し立てる方針を明らかにした。

とされていたこともあり、この時点で、私は

菅原氏に対する不起訴処分については、告発人が、検察審査会に審査を申し立てれば、検察も「証拠上起訴は可能」と認めている以上、「一般人の常識」から不起訴には納得できないとして、「起訴すべき」との議決が出る可能性が高い。それによって、菅原氏に対する「不正義」は、いずれ是正されるであろう。

と述べ、検察審査会で検察の不起訴処分が覆ることを確信していた。

検察による「検審外し」の画策

ところが、その後、実は、検察は、菅原氏の不起訴処分について、検察審査会での審査に持ち込まれないようにする「検審外し」の画策としか思えない、不可解極まりない動きをしていることが判明した。

菅原氏を告発していた「市民」のC氏本人に取材した記者から得た情報によれば、菅原氏に対する告発状は、昨年10月下旬に、東京地検に提出され、その告発を受けた形で、A・B両氏の取調べや他の関係者の取調べ等が行われていたが、不起訴処分が行われる直前に、その告発状が、告発状の不備を指摘する文書とともに告発人のC氏本人に返戻されていたというのだ。

告発事件について不起訴処分を行えば、告発人は、検察審査会に審査を申し立てることが可能だ。ところが、検察は、その告発状をC氏に返戻し、それと別個に、検察自らが菅原氏の公選法違反事件を独自に認知立件した形にして、その「認知事件」を不起訴にしたということのようだ。

そうなると、検察は告発事件について不起訴処分をしたものではなく、検察審査会に審査を申し立てる余地はないということになる。検察が、検察審査会の審査を免れるために、敢えてそのような姑息な手段を用いたとしか思えなかった。

C氏は、新聞出版業を営む会社の代表取締役であり、「国滅ぶとも正義は行わるべし」をモットーに、特に、日本国の中枢に位置し、国政を運営する責にある者、社会的影響力を有する企業経営者に対して、国法の正しい運用を厳しく求めている人物だった。過去にも、新聞、週刊誌等で報じられた多くの事件について、法を厳正に適用して処罰を行うことを求める告発を行っていた。

私も、過去に、C氏が告発した、日産自動車株式会社代表取締役社長(当時)西川廣人氏に対する不起訴処分について、C氏からの委任を受け、申立代理人として、検察審査会への審査申立を行ったことがあった。

私は、C氏本人に連絡をとった。C氏は、菅原氏の不起訴処分には全く納得できないので、検察審査会への申立てを行う意向だった。しかし、告発状が返戻されているということは、検察庁では、菅原氏の事件を告発事件として扱っておらず、C氏に「不起訴通知」は届かない。通常、検察審査会への申立ては、不起訴通知を受けて、その事件番号を記載して申立書を提出するので、不起訴通知が届いていない以上、申立ては困難だと考えられた。

私がそのように説明したところ、C氏は、「先生、何とかなりませんか。こんなことがまかり通るのであれば、この国の正義は滅びてしまいます。」と憤慨していた。

「検審外し」を打破する審査申立の検討

私は、C氏から告発状と、検察庁がC氏に返戻した際に添えられていた「東京地検特捜部」名義の書面を送ってもらい、告発状とその書面を精査し、検察が不当に告発状を返戻した上で行った不起訴処分に対して、「検審外し」を打ち破って審査に持ち込む手段がないかを検討した。

そこで、検察審査会法の規定を改めて検討してみた。

検察審査会法2条2項は、

検察審査会は、告訴若しくは告発をした者、請求を待って受理すべき事件についての請求をした者又は犯罪により害を被った者の申立てがあるときは、前項第一号の審査を行わなければならない

としている。「前項第一号の審査」というのは、「検察官の公訴を提起しない処分の当否の審査」のことだ。ここでは「告発をした者」が申立てできるとされているのであり、「検察官が告発を受理したこと」は要件にはなっていない。告発人が犯罪事実を特定し、正当に告発状を提出しているにもかかわらず、検察官が告発を受理しなかった場合も、「告発をした者」に該当し、その事件について不起訴処分が行われた場合は、審査の申立てが可能なはずだ。

検察審査会事務局にも問合せたところ、告発が行われ、その告発事件について不起訴処分行われたのであれば、審査申立ては可能であり、申立てが行われれば、不起訴事件の特定のため検番(検察における事件番号)については、検察審査会事務局から検察庁に照会するとのことだった。

そこで、検察がC氏に告発状を返戻した理由が正当なものか(C氏が提出した告発状に不備があり「有効な告発」とは言えないものか)、告発された事件について検察の不起訴処分が行われたと言えるか、という点について検討を行った。

検察が告発状を返戻した理由

告発状が返戻された際に同封された「東京地検特捜部」名義の書面では、以下の理由で、「本件告発状においては、犯罪構成要件に該当する具体的な事実が具体的な証拠に基づいて特定して記載されているとは認められない」としている。

(1)告発状記載の「法令の適用」には、その根拠条文として、公職選挙法199条及び同法248条(請負その他特別の利益を伴う契約の当事者である者による選挙に関する寄附の禁止規定及び罰則)並びに同法199条の2及び同法249条の2(公職の候補者等の寄附の禁止規定及び罰則)が列記されており、いずれの寄附禁止規制違反を問題とされるのか不明確であり、また、このうち同法249条の2の各項に罰則の定めがある寄附禁止規制違反については、選挙に関する寄附の禁止違反、通常一般の社交の程度を超える寄附の禁止違反及びこれら以外の寄附の禁止違反等の各種類型があるところ、上記「告発状」記載の「犯罪事実」及び「法令の適用」等からは、これらのいずれに該当する旨主張されているのかも不明である。

(2)「有権者買収行為」である旨の記載や「告発の趣旨」欄の「当選無効に該当する」旨の記載からすると、同法221条等所定の買収罪に該当する旨主張されているようにも拝察され、これらの点がいずれも判然としない。

(3)「犯罪の事実」の疎明資料としては、インターネット上に掲載された雑誌の記事概要をプリントアウトしたと思われるものだけが添付されており、犯罪構成要件該当事実の根拠・資料として十分ではない。

(4)代理人による告発は、刑事訴訟法に規定がなく、認められないと解するのが通説。

告発状を返戻する理由は全くない

しかし、(1)については、本件告発状が、「公職の候補者等」が選挙区内の有権者に対して、秘書が議員の代わりに香典を配る行為に適用される「寄附の禁止」の規定の適用を求めるものであることは、「公選法が禁ずる寄附の禁止を犯す犯罪行為」と明記していること、香典の贈与が公選法の「寄附の禁止」に違反するとの法律専門家の解説を含む週刊文春の記事を添付していることから疑いの余地がない。「法令の適用」に第199条及びその罰則を記載しているのは、公職選挙法について知識に自信がなかったことから「念のため」に付記したに過ぎない。

(2)については、告発人が、告発状に「有権者買収行為」と記載したのは、週刊文春で報じられた「カニ、メロン」の贈答など、長年にわたる有権者に対する買収行為の一環として行われたものとの認識を示したもので、また、「当選無効」と書いたのも、正確には、公民権停止に伴う「失職」であり、「当選無効」ではないが、週刊文春記事での専門家の解説で、寄附の禁止に違反した場合について、「最長5年間の公民権停止となり、当選も無効となります」とされていたことから「当選無効」と表現したもので、告発人が「買収罪」に該当すると主張しているものではない。

(3)は、告発状の添付資料では犯罪構成要件該当事実の根拠・資料として十分ではないというのであるが、添付された文春オンラインの記事だけでも、秘書に代理で通夜に出席させて香典を贈与した公選法199条の2第1項違反の事実は十分に特定されており、香典を差し出す写真も添付されているのであるから、告発の根拠としての証拠は十分だ。

しかも、東京地検特捜部は、本件告発後、同告発事実を含む公選法違反事件の捜査に着手し、被疑者の刑事処分のために必要な捜査を行い、「起訴猶予」処分とし、被疑者の公選法違反の犯罪事実を認定しており、結局、上記記事で指摘した被疑者の公選法違反の疑いは検察の捜査によって裏付けられている。

(4)については、本件告発は告発人自身の意思による告発人自身が自らの名前を記載して押印して告発しているのであり、本件告発状には告発人に加えて代理人名を付記しているにすぎない。告発状の返戻が、代理人に全く連絡なく、告発人本人に対して行われていることからも、東京地検が、本件告発を代理人によるものとして取り扱っていないことは明らかだ。

そもそも、(1)、(2)について、専門知識がなければ厳密に正確な記載はできないような点に因縁をつけ、他方で、法律の専門家である弁護士の代理人による告発が認められないなどと述べるのは矛盾している。

東京地検特捜部の書面に書かれている告発状返戻の理由とされた(1)~(4)は、いずれも、C氏の告発が不備で、有効な告発ではないことの理由にはならないものだった。

告発状を「預かり」のまま7カ月以上も捜査を継続

しかも、本件告発は、昨年10月25日付けで行われ、検察官は、告発状を受領したまま7ヵ月以上にわたって受理の判断を留保し、被疑者の公選法違反の捜査を継続していたが、不起訴処分を行う直前に、告発状を返戻したものだった。検察官が、本件告発状に、そのままでは受理できない問題点や不十分な点があるというのであれば、なぜ、受領後、早期に返戻して、是正・補充を求めなかったのか。

菅原氏は、今年1月20日の通常国会召集日に、久々に国会に出席した際、「告発状が提出されていること」を、国会議員として疑惑についての説明を拒絶する理由としていた。告発状が不備で受理すべきではないのであれば、検察官は、速やかに告発状を返戻して、菅原氏に、告発状の提出は説明拒否の理由にならないことを明らかにすべきだった。

検察官が、本件告発状について是正・補充を求めないまま7カ月以上も「預かり」にしたことからも、告発状の不備が問題にされていたのではないことは明らかだった。

A・B両氏の話からも、少なくとも、本年6月に入る頃までは、被疑者の公選法違反事件に対する捜査は積極的に行われていたことは明らかだ。検察官が告発状を返戻したのは、告発状の内容の問題ではなく、当初は、被疑者を起訴する方向で捜査を行っていたところ、その後、何らかの事情で不起訴の方針に変更されたことから、告発人に対する不起訴処分通知を行わないで済まし、検察審査会への審査の申立が行われないようにすることが目的だったのではないか。 

不起訴処分は、告発された事件についてのもの

もう一つの問題は、「告発された事件について検察の不起訴処分が行われた」と言えるか、という点だった。告発事件について不起訴処分にしたという「不起訴処分通知」が告発人に出されていないので、この点について明確な根拠を示すことはできない。

しかし、通常の事件の不起訴処分については、検察は、全く情報開示も説明もしないが、菅原氏の事件については不起訴処分当日の令和2年6月25日に、東京地検斎藤隆博次席検事が記者会見を開いて「異例の不起訴処分説明」を行っていたため、告発された事件との関係が明らかにだった。

告発状に記載された犯罪事実は、

被疑者は、平成29年10月22日投票の衆議院議員選挙の東京9区で当選した衆議院議員であるが、令和元年10月17日の夕刻、東京都練馬区所在の宝亀閣斎場において、同選挙区内に居住する地元町会の元会長の通夜に、自己の公設第一秘書A氏を自己の代理として参列させ、「衆議院議員菅原一秀」と明記した香典袋に二万円在中の香典を受付に手渡して贈与させ、もって、自らの選挙区内にある者に対して寄附を行ったものである。

という事実だった。

一方、斎藤次席検事の説明によると、本件不起訴処分の前提として認定された犯罪事実は、平成29年(2017年)~令和元年(2019年)の3年間に、選挙区内の有権者延べ27人の親族の葬儀に、枕花名目で生花18台(計17万5000円相当)を贈り、秘書らを参列させて自己名義の香典(計約12万5000円分)を渡したというものだった。

この不起訴処分で認定された被疑者による香典、枕花の贈与の事実は、昨年10月25日にC氏が提出した告発状の添付資料とされた文春オンラインの記事に書かれている内容であり、告発状提出直後の11月上旬頃に捜査が開始されたものだった。不起訴処分が、告発状に記載された事実を含む被疑者の公選法(有権者に対する寄附の禁止)違反の被疑事実に対するものであることも明白だった。

審査申立書を検察審査会に提出、受理通知が届く

そこで、私が、C氏から委任を受け、申立代理人として審査申立書を作成して、7月20日に東京の検察審査会事務局に提出した。申立書では、C氏の告発状は、公選法違反の「有権者に対する寄附」の犯罪事実について処罰を求めており、告発状が返戻される理由は全くないこと、不起訴処分はC氏の告発事件についてのものであることなどから、C氏は「告発をした者」に該当し、審査申立てができることを述べた上、菅原氏の不起訴処分が不当極まりないものであることを記載した。

検審事務局に、検察官が告発状を不当に返戻したので不起訴通知を受けていないこと、一方で、検察官は、同じ事件を独自に認知立件して不起訴にしたと解されることを説明したところ、「検察官の不起訴処分を確認した上で、受理の判断をする。受理した場合には、どの審査会が受理したかを通知する」とのことだった。

そして、4連休明けの7月27日、私の事務所宛てに、東京第4検察審査会から「令和2年(申立)8号事件として受理した」旨の通知が届いた。

こうして、菅原氏の公選法違反事件の刑事処分は、東京第4審査会の11人の審査員の判断に委ねられることになった。

菅原氏の事件は、「起訴猶予」にした検察官も、「起訴しようとすればできる」と認めているのである。しかも、その菅原氏を「起訴猶予」とする理由は、罰金すら科さない理由には全くならないものだ。検察が、7カ月以上も預かったままにしていた告発状を不起訴処分の直前に告発人のC氏に返戻することで「検審外し」を図ったと考えられることも、菅原氏の不起訴処分が検察審査会に持ち込まれたら覆る可能性が高いと検察も考えていたことを示すものと言える。

検察審査会の審査を受ける立場である検察に、このような手段で審査を免れることができるとすれば、「公訴権の実行に関し民意を反映させてその適正を図る」(検察審査会法1条)という検察審査会制度の目的は没却されることになる。

本件におけるこのような審査申立に至る経緯についても、審査会で審議し、議決で触れるべきだ。

そして、我々市民にとって必要なことは、検察の不当な不起訴処分によって、菅原氏が今なお、衆議院議員としての地位にとどまっていることを忘れることなく、検察審査会の審査に注目し続けることだ。そういう意味で、たまたま菅原氏の事件の重要な関係者であるA・B両氏の代理人として話を聞ける立場であった私が、菅原氏の不起訴処分の不当性を論証した【菅原前経産相・不起訴処分を“丸裸”にする】と題する記事を出すことができた意味は大きい。

少しでも多くの人に同記事を拡散し、現職国会議員の菅原氏の起訴猶予の不当性について声を上げ続けてほしい。それが、無作為に選ばれた「市民の代表」からなる検察審査会で「民意を反映した議決」が出されることにつながるはずだ。

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