トランプの悪あがき:バイデン勝利を覆せるか?

八幡 和郎

Gage Skidmore/flickr

トランプの悪あがきを誉める気はないが、2000年大統領選当時、フロリダの開票でゴアがごねたときに、マスメディアはそれほど批判しなかった。トランプの勝利宣言もおかしいが、先行されていた段階でバイデンが記者会見したのは、これも慣例に反している。

さらに、そもそも、トランプの強引な政治手法も問題だが、オバマもパリ協定、核兵器、オバマケア、ダッカなどで、さんざん、大統領権限を脱法行為的に行使していた。

選挙結果については、法的にバイデンの勝利を動かすのは、かなり無理がある。しかし、なんとも後味が悪いことになりそうだ。①郵便投票についての不正防止の不徹底と途中でのルール変更、②テレビ討論会のルール変更、③マスメディアの報道しない自由の行使とSNSなどの不公平な措置—などを総合的に見て、果たしてバイデン陣営のやり方がフェアな選挙だといえるかは、法的問題と切り離されて問われるだろう。

そしてまた、法廷闘争に対しても心証において影響を与える可能性がある。そうした場合に、最高裁もどこかで、揚げ足取りにしてもバイデン勝利にストップをかけるような措置を執る可能性は否定できない。

そうした工作を批判できるかというと、2000年の大統領選挙のときのゴア陣営の悪あがきを思い起こさせる。

副大統領時代のゴア氏(米政府撮影/Wikipedia)

フロリダ州の集計では、アメリカ東部時間の20時にゴアの勝利を報じたが、ついで取り消し、未明にはブッシュの勝利を報じ、ゴアはブッシュに祝いの電話を入れた。

しかし、フロリダでの票差は州法によると再集計が求められる0.5%未満であることが判明し、ゴアはブッシュに対して取り消しの電話を入れた(8日に発表した同州の開票結果は、ブッシュが290万9135票、ゴアが290万7351票、差は1784票)。

そして、機械による再集計が行われると、差が1000票ほどに縮小したが、ブッシュの優位は変わらず、これで終わりのはずだった。ところが、ゴアは、一部の民主党優位の郡での手作業再集計を求め、再集計が開始されたが、ブッシュ側は、手作業再集計の中止を求める訴訟を連邦地区裁判所に起こした。

一方、州最高裁は民主党寄りだったのでゴア陣営寄りの決定を下していたが、あまりもの手を変え品を変えの訴訟に嫌気をさしたか、いったん、何度目かの再集計は却下され州務長官が537票差でのブッシュ勝利を認定した。しかし、ゴア陣営が求めた再集計の再開などを認め、150票差に。ブッシュ陣営は連邦最高裁に差し止め請求を行う。翌9日に連邦最高裁は差し止めを承認し、12月12日、連邦最高裁は再集計を禁じる判決を下し、ブッシュ勝利とする州務長官による公式認定を確定させた。

ここに至って、12月13日夜になって、ゴアは「最高裁判決に同意できないが、受け入れる」「国家を分断させるよりも団結させるべきだ」と敗北宣言をテレビ演説で行った。

この経緯と比べて、トランプの悪あがきをどうして批判できるだろうか。そしてまた、最高裁が、意外なポイントに着目してどこかの州での結果を覆す可能性は残る。

もともと、郵便投票は問題が多いのだが(本当に本人の意向なのか確認できない)、慣例的に認められていた。しかし、今回のように、バイデン陣営が戦略的にこれを推奨したのはフェアでない。もしそれが組織的な不正と結びついていたことが判明すれば民主主義の基本を破壊したことになる。

そして、ウルトラCとしては、州議会が選挙結果と違う結果の認定をしたら、それを裁判所は覆せるのかといった憲法上の問題も生じる可能性がなくもない。