行政事業レビューで問われた公教育の変革

2020年11月17日 06:00

秋のレビューが終了した。僕は「教育現場のオンライン化の推進」事業を担当したが、そこでは公教育の変革に関わる議論が多く行われた。

行政事業レビューで発言する筆者

政府はGIGAスクール構想を推進している。子どもに一人一台ずつ端末を与え、それを利用して教育するのがGIGAスクール構想である。

子どもたちがICT活用能力を身につけることは、わが国の将来のために必要不可欠である。行政事業レビューは個々の事業の必要性・有効性・効率性について検証し改善を求めていくものだが、この事業の必要性に疑いの余地はない。

紙の教科書を使った今までの教育(アナログ)を、GIGAスクールなどを通じてデジタルに変革する際、変革期にはアナログとデジタルが混在するために予算規模が膨らむ。それをノーマルな状態にどう着地させるのだろう。

数名の評価者は、社会生活の基本を教える小学校低学年はアナログ教育が中心で、高学年以上はデジタル教育という考え方だったようだが、文部科学省は将来展望を示すことができなかった。

文部科学省は事業全体のロジックモデルを説明した。ロジックモデルとは、事業に注ぎ込むインプット、事業で実施するアクティビティ、そして、それがどのような短期的な結果(アウトプット)を生むか、さらには、中長期的に社会にどう影響(アウトカム)するかを、ダイヤグラムで示すものである。

僕が指摘したのは、アクティビティの中にある現職教員研修への取組の弱さ。すでに5年以上にわたってICTを活用した教育法の研修が全国で実施されてきた。しかし、行政改革推進本部事務局の説明資料にある通り、東北各県では毎年2割程度の教員しか研修を受けていない。そんな教員にデジタル教育が担当できるはずはない。レビューは、研修の受講について今まで以上に強い処置を求めるものになった。

ぱくたそ

しかし、この議論には語られなかった部分がある。それは、教育委員会制度である。戦前の反省から教育委員会制度が生まれたが、この制度では各地域に決定権を与えているため、文部科学省から一律に研修を求めることなどむずかしいのだ。この公教育の在り方に関わる本質的課題については、行政事業レビューではなく、国会で議論すべきである。

デジタル教育は個々の子どもに寄り添えるというのが文部科学省の主張である。普通教室には、色覚異常や難読症(ディスレキシア)、日本語がわからない帰国子女、障害者手帳を受け取れるほどではない軽度の障害児など、多数の障害のある子どもがいる。そのような子どもを教育する際にデジタルは有利である。

色表示を変える、読み上げる、外国語に翻訳するなどのメディア変換機能がデジタルには備わっているからである。これらを総称して情報アクセシビリティ対応というが、今の事業はこの点が弱く、アウトカムも設定されていなかった。そこで、情報アクセシビリティ対応の強化を求めたが、すぐに藤井比早之副大臣が賛意を口にしてくれた。そして、この点もレビューの結論に書き込まれた。

デジタル教育では学習記録がクラウド上に残される。その子どもが東京から大阪に転校した際に、学習記録は引き継がれるだろうか。これを実施するには、学習記録データについて標準化が必要になる。これを僕が求めたところ、直後に河野太郎大臣が「同じ秋のレビューの中で取り上げたシングルペアレント問題でも指摘された事項であり、文部科学省は取り組むこと」とサポートしてくださった。ありがたいことだ。

デジタルになれば、豊富なメディア変換機能も活かせるし、今までよりも詳細に学習記録を学校間・関係者間でやり取りできるようになる。一方で、すべてデジタル化すればOKというわけでもない。そもそも、現職教員が転換を担えるかという問題もある。

今回のレビューは、公教育の大変革をどのように展望するかが問われた、意義深いものになった。

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山田 肇
ICPF理事長、東洋大学名誉教授

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