東京都での新車販売、2030年までの脱ガソリン化

2020年12月09日 14:00

小池都知事が東京都における新車販売について2030年までに脱ガソリン化を目標とすると発表しました。自動車の電動化については肯定的な立場である私もややびっくりしました。そこまで踏み込むのかと。唐突感がないわけでもないのですが、菅首相が世界最速グループとなる2050年までの温室効果ガス実質ゼロを打ち出している中でそれに呼応した形なのでしょうか?

(写真AC:編集部)

(写真AC:編集部)

新製品や技術革新は消費者や世論の理解度が徐々に進み、それが市民生活に浸透していくのがナチュラルな流れです。例えば携帯電話についてもスマホが日本で販売されたのが2008年。その当初はAUの当時の社長が「iPhoneは一般ユーザーには魅力的でない」と酷評したりして売り手ですらその評価が定まりませんでした。(個人的にはAUのその社長は先見の明がなかったとは思っています。)今でもガラケーを使う人はいらっしゃるし、スマホになってもその性能をどこまで引き出せているかと言えば過半の方がその半分にも達していないと思います。つまりたかが携帯電話ですらスマホが普及してから既に12年経つのに未だに完全な市場浸透性に達していないのです。

ではEVはそんなに簡単に普及するのか、というのが公平な立場に立った場合の疑問であります。まず、EVに乗ったことがある人がまだまだ少ないのが現状。そして日本で発売されているEVの種類も極めて限定されています。むしろ欧米の高級EV車が日本市場では押している感じです。これでは自動車業界の明治維新の廃藩置県じゃないかとも思うのです。既に市場にそれなりの選択肢がある中で10年後にガソリン車はだめですよ、というならともかく、まだ黎明期なのにそこまでするのかというのが私の正直な意見です。

次に東京都の目標ではHVも可としております。HVやプラグインハイブリッドは現状の選択肢の中では確かに魅力的なチョイスに見えますが、世界中でEVが開発の中心となれば存在感が無くなり、いつかは消えざるを得ないとみています。音楽で例えればレコードからカセット、MD、CD、ダウンロード、ストリーミングと変わってきたように時代の変化で必ず淘汰されるものであり、メーカー側は一定の市場規模がなければ生産を止めるのは致し方ないところであります。

私は東京都のこの目標はそれでも無理があると思っています。理由はインフラの整備が追い付かないだろうと思うのです。それは充電設備です。EV所有者のベストの行動は夜間、駐車中に充電することですが、その充電設備を自宅などを含め、一気に普及できるのかであります。次いで出先で充電する需要も急増するわけでそのインフラの整備も必要でしょう。特に東京の場合、マンション内の駐車場、屋外の月ぎめ駐車場にどうやって充電設備を作るのか、これは簡単ではないと思います。特にマンションの場合、そもそも電圧のキャパシティを増やすなどの工事費用をだれが負担するのか管理組合では大きな議論になるでしょう。

他方、ガソリン車が減ればガソリンスタンドが急激に淘汰されます。とすればガソリン車に乗る人がガソリンを入れるところがないという問題が生じるでしょう。ここバンクーバーもダウンタウンにはガソリンスタンドは1軒だけかろうじて残っています。そこも再開発計画があるのでいつまであるのかわからないような状態です。ガソリンを入れに郊外までひとっ走りというわけのわからない無駄な事態が生じるかもしれません。

では小池都知事はなぜ、それでも踏み込んだ目標を設定したのか、ですが、個人的に思うところは政治的ステートメントではないかと思うのです。私は今でも小池さんは国政に打って出て首相の座を狙えば女性初の首相になれる最右翼だと思っています。好き嫌いというより強い指導力、発信力、発言力、知名度において今の自民党の有力者の誰よりも有利だと思っています。

今回の目標設定は普通の努力では到達しえないところまでバーを引き上げています。これにより次元の違うレベルを引き出し、構造改革を推し進め、また、現在、国の指導力が劣っていることから東京都が日本のあるべき目標を代行し、実行しようとしているように見えるのです。ある意味、ものすごい政治的挑戦と野望ではないかという気がします。

小池都知事のポジションがすごいと感じたのは自動車業界とあまり摺合せをしないでこれを発表したような形跡があることです。今までの国のやり方なら業界の声を聞きながら利害関係を調整するのが当たり前でしたが、それを仮にすっ飛ばしたとすれば副作用もあるかもしれませんが、大変な挑戦のようにも思えます。

この話題、賛否両論色々出そうですが、小池都知事はどこまで突っ走るのか、日本の官僚制度と政治の構造改革に挑むのか、注目に値します。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2020年12月9日の記事より転載させていただきました。

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