幕を開ける新しいアメリカ

1月20日にバイデン政権が成立します。過去4年間、アメリカはユニークな経験をしてきました。政治家経験がない不動産事業家でテレビの人気番組「アプレンティス」の過激トークの司会者を巨大国家アメリカのトップに座らせました。結果として国民の審判でYou’re firedとなってしまいました。

(バイデン氏公式Facebookから:編集部)

(バイデン氏公式Facebookから:編集部)

トランプ氏が4年後の大統領選挙を狙っているという話もありますが、個人的にはあり得ないと考えています。それはトランプ氏が4年の間に行ったことは刺激的であり、政治家には不可能な常識観を覆し、アメリカ人が政治に声を出すようになり、国民レベルで高い関心を持ったという点は「アプレンティス」の視聴率のごとく、成功だったのでしょう。国民の分断と言ってしまえばそれまでですが、アメリカ人がアメリカのあるべき形をじっくり考える機会だったと前向きにとりたいところです。

トランプ流アプローチは世界中が驚き、注目した中で政治に新鮮な切り口を提示しました。しかし、数年たてばアメリカ人は気がつくはずです。「あれはあれで挑戦的だったが…」と。そして歴史のページが戻らないなら4年後に彼の時代が再び訪れることはその選択肢にすらないとみるべきでしょう。

一方、二大政党に陰りが見えた点も見逃すわけにはいきません。二大政党がぶつかり合うだけでは柔軟性ある政策がとれないのです。それが永続的なものか、一時的なものかはバイデン政権がその亀裂を埋めるかどうかというところでしょう。

ではバイデン政権はどんな色になるのでしょうか?私は色の薄い政権になるとみています。つまり、一人の政治家が圧倒的な指導力を持って引っ張るような大統領ではなく、幹部による集団統治型政権となるとみています。今日の組織、会社や国家、自治体などを含めその運営は異様に複雑怪奇になっています。一人のスーパーマンがコントロールできる時代はとうの昔に終わっています。とすれば幹部がそれぞれのパフォーマンスをどれだけ上げらえるか、そしてその指揮者であるバイデン氏が様々な声や圧力をかわすだけの器量と才覚、人格、人脈、バランス感覚があるかにかかってくるでしょう。

色が薄い政権となると国民は必ずその代替を探します。もしかすると中国をそのはけ口とするかもしれない、もしかするとテスラやGAFAといった民間企業のありかたに着目するかもしれません。アメリカ人は枠の中に納まることができない人種です。よってオバマ政権の時に国民がイライラしたように必ず、出る杭が生まれます。もちろん、日本のように叩かれることはありません。杭はどんどん伸びて新たなヒーローやヒロインになるかもしれません。

とすればバイデン政権は民間主導の時代ともいえそうです。バイデン政権が波風を立てずにうまくやるには国民の裏方に回り、国家としてやるべき課題と積み上げられた残務を一つひとつこなすことで民力をアップさせることかもしれません。

政権発足後の100日間(約3カ月)はハネムーン期間であまり政権の批評をしない暗黙のルールがあります。私も様子を見るしかないと思います。外交のカウンターパーツもお手並み拝見というところでしょう。多分、コロナ対策に7-8割のエネルギーを使うとみています。

経済復興はたやすくないとみています。理由は国民がカウチに座って政府からの支援金を貰って株で儲ければよいという味を占めてしまったからです。いったん気が抜けたコーラに炭酸を注いでも同じ味にはならないのと同じ。アメリカは過去数十年に渡ってこのカウチ族を続けてきたことで製造することも汗をかくことも忘れたのですが今回は働きに戻るということを忘れた人が増えたかもしれません。厳しい反動が待っているとみてよいでしょう。国内の不和と治安には要注意という気がします。

それではジョーバイデン氏のお手並み拝見といたしましょう。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2021年1月18日の記事より転載させていただきました。