バーチャル五輪を、そろそろ本気で考えよう

コロナによる3度目の緊急事態宣言が延長に向かう中、7月からの東京オリンピック、パラリンピックの開催は相当苦しくなってきた。

Ryosei Watanabe/iStock

クソ度胸で強行する事も可能かも知れないが、たとえ無観客でも国内外でのワクチン接種が予想以上に万遍なく速く進み、かつその効果が劇的に現れでもしない限り、その開催後の日本、世界での変異株による感染爆発等の引き金になりかねないため、リスクが大きすぎるだろう。

日本側から中止を言い出すと、経済損失数兆円に加え、一説では保険でもカバーしきれないIOCへの違約金やその他の賠償金を数千億円単位で負担させられる可能性もあるようだ。

現下の緊急事態宣言を招いたコロナ対策は、遅々として進まない医療キャパ拡大については、政府、都道府県、医師会の失策であり、加えて後手後手ゆるゆるの水際対策については政府の失政であるが、その点を突かれれば未曽有のコロナ禍でも違約金や賠償金が免責されない事も起こり得る。

それを避けるためにも、医療キャパと水際対策等について政府等は立法措置を経ずしても出来る事を行い、野党は立法協議に応じる必要があるが、相変わらずやる気と当事者意識は感じられない。(参照:「3度目の緊急事態宣言は不要だった」)

さて、そんな状況でも五輪についての決断は迫ってくる。前述の通り筆者は開催に極めて慎重だが、ただの中止では芸がない。

これまで「バーチャル五輪」については所々で誰からともなく語られてきたが、そろそろ本気で検討してはどうか。コロナで花火大会が中止となり行き場所を失った尺玉も、本来の会場以外で無告知で打ち上げられ場合によってはTV中継されてそれなりに生かされた。

例えば記録競技等は、世界各地のアリーナで分散して出来るだけ同時刻に行ってそれを中継し、格闘技等の接触系競技は1年程度延期する。

鍵を握るのは画になり視聴数を稼げるかを懸念する米TVネットワークだが、コロナ下の五輪の形として国際世論で機運の盛り上げに成功すれば渋々でも乗ってくるのではないか。

強行開催と中止の二択は、どちらもリスクとデメリットが大き過ぎる。コロナ敗戦の損失を少しでも抑えるためにも、東京都、組織委は政府と連携し、このオプションを実行可能にして置くべきだろう。