菅総理大臣は4月23日の記者会見で、新型コロナ対策本部の開催に基づく3度目の緊急事態宣言の発出決定を発表しました。
緊急事態宣言等により営業や行動に実質的に規制を掛ける措置は、それがどの程度効果があるのかは科学的に明らかではありません。その上、人々の生活と経済と財政を大きく棄損するものの、現下大阪で医療崩壊を起こしている点に至っては、やむを得ない面もあったかもしれません。
けれども、それ以前に医療キャパ拡大と水際対策に成功していたとしたら、3度目の緊急事態宣言は不要だったと考えます。
東アジアやニュージーランド等を除いて圧倒的に少ない人口当たりの感染者数、重症化率、致死率でしたが、大阪では医療崩壊を起こしてしまいました。これは政府に加え、都道府県、医師会等の失策と言わざるを得ません。
記者会見の質疑応答で、医療キャパ拡充の遅延について質問したニュース専門ネット局・ビデオニュース・ドットコム代表の神保哲生記者に対し、菅総理は次のように答えています。
「まず、今回のコロナの中で、やはりそうした医療関係者に対しての政府の権限というのは、現在、お願い、要請ベースでしかなかなかないというのがこれは現実です。(中略)そうしたことを、落ち着いたら、そうした緊急事態の際の特別措置というものをつくらなきゃならない。こういうふうに私は思っています。(後略)」
つまり、法律の制限で出来なかった。落ち着いたら立法措置をして対処出来る体制にするという事だが、当事者意識が欠落していると思わざるを得ません。
あとの祭りを絵に描く対応です。
たしかに立法化が遅れているのは、野党、マスコミ、国民世論にも責任はあります。
けれども、政府は、医療キャパの拡大のために、損失補償による民間病院のコロナ受入れの促進もできたはずです。それ以外にも、プレハブ式コロナ専門病棟の新設、医療スタッフのコロナ対応への相応の待遇での募集・訓練などによって、法改正を経なくとも対応はある程度可能だったはずです。
また水際対策では、緊急事態制限下ですら「特段の事情」により許されている入国条件の厳格化は法改正を経なくても可能だし、14日間の隔離と移動制限の厳格化・罰則化は、入国全面禁止の回避とセットにすれば立法化も可能だったかもしれません。
これらを行って、ワクチン接種の浸透に繋げば、緊急事態宣言のような実質的な営業規制、行動規制は極力避け、経済を回しながらの対策は打てたはずです。
さらなる強力な変異株が現れ、流行期の冬季になってからでは手遅れになります。政府、都道府県、医師会等は、今回の失政を反省し当事者意識と主体性を持って医療キャパ拡大・水際対策に直ちに着手すべきでしょう。