選挙戦略の勝利といえます。 ―中川信博―

2009年08月17日 16:09

―マニフェスト―

この言葉の訳語が「選挙公約」なのか「政権公約」なのかで、私達の選挙後の対応が大きく違ってくると思います。前者であるならば―米国の大統領選挙は選挙中にいったことと当選後にやっていることが食い違ってもある程度許されると聞いていますのでこちらに近いのかと思います―、私達は「ほぉ~、いいこといってんじゃん」程度に受け止めれば良いわけで、「それが実現されればいいのになぁ」と密かにほくそ笑みながら、この党首が首相になったらどうか、この人が○○大臣になったらどうなのかを想像しながら、投票すれば良いということだと思います。

しかし後者であったならばそうはいきません。「政権公約」、私達に政権を任せていただけたならば、赫々然々のお約束は絶対に果たします、と公に約束したのですから、私達はその約束によっていかに利益―幸福の最大化と言っても良いかと思いますが―を得るかを勘案して投票しようとすることになります。―当然そうではなく人柄や組織などの統一行動の場合もありますが―

そしてその幸福の最大化の基準と範囲は、個人としてだけでもいいですし、親戚一同でも、隣近所や地域全体、国家全体でも世界全体でもと、個々人の自由に任せられているわけです。

―各党のマニフェスト―

現時点の主な政党は民主党自由民主党公明党日本共産党社会民主党国民新党改革クラブ沖縄社会大衆党新党日本みんなの党(順番は参議院の議席数による)であります。あと今回の衆議院選挙に候補者を擁立する予定である党に幸福実現党があります。

各党それぞれマニフェストと公表しておりますが、単独で政権担当の可能性がある、自民党と民主党、そして幸福実現党の―幸福実現党は現時点の情報では300以上の選挙区に候補者を擁立すると表明しているので、政権担当の可能性があるといたします―、マニフェストは「政権公約」として受け取ってよいものであると思いますし、現行連立を組んでいる公明党のマニフェスト―連立を考慮に入れるとすべての党に政権担当の可能性があるわけですが、現行実現しているのは公明党だけでありますので限定します―も「政権公約」といえると思います。

残りの政党のマニフェストは「選挙公約」というのがふさわしいのではないでしょうか。―「政権に携わる可能性が極めて薄いということです―

―公職選挙法―

公職選挙法の第221条の第1号に以下のような文言があります。

(買収及び利害誘導罪)
第二百二十一条  次の各号に掲げる行為をした者は、三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。
一  当選を得若しくは得しめ又は得しめない目的をもつて選挙人又は選挙運動者に対し金銭、物品その他の財産上の利益若しくは公私の職務の供与、その供与の申込み若しくは約束をし又は供応接待、その申込み若しくは約束をしたき。

さらに3、4、5号には

三  投票をし若しくはしないこと、選挙運動をし若しくはやめたこと又はその周旋勧誘をしたことの報酬とする目的をもつて選挙人又は選挙運動者に対し第一号に掲げる行為をしたとき。
四  第一号若しくは前号の供与、供応接待を受け若しくは要求し、第一号若しくは前号の申込みを承諾し又は第二号の誘導に応じ若しくはこれを促したとき。
五  第一号から第三号までに掲げる行為をさせる目的をもつて選挙運動者に対し金銭若しくは物品の交付、交付の申込み若しくは約束をし又は選挙運動者がその交付を受け、その交付を要求し若しくはその申込みを承諾したとき。

とあります。

―バラマキ政権公約と買収選挙―

前項の公職選挙法221条を要約しますと、「候補者または候補者の選挙運動人が、利益もしくは職務の供与を約束または供応の接待の申し込みや約束を有権者にしてはいけない」ということです。

もう少し具体的に申し上げますと、「あなたが私に投票してくれて、当選したらこれから毎月2万6千円ずつ私の選挙資金から差し上げます」とか「あなたが私に投票してくれて、当選したら今後あなたのビジネスが不調なときはそのマイナス分は私の選挙資金から補填しまうよ」といって選挙運動をした場合はその候補者の当落にかかわらず、「三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金」だとしています。―少し誇張していますが―

すこし言い方をかえてみます。「私達に投票してくれたら、あなたの子供に一人当たり年間31万2千円、国の税金から差し上げます」、「農家の皆様にはご商売がうまくいかない場合は個別に税金から減った分を補填します」、これらは上記の公職選挙法には抵触しないことは周知でしょうが、両者の違いはお金の出所が個人から税金にかわっているだけで、その主旨はそれほど違いないといえないでしょうか。―念のため付言しますが、事例は民主党のマニフェストから提示しましたが、自民党のマニフェストも大同小異だと思います―

―選挙戦略の勝利―

前回の総選挙では自民党世耕議員のメディアに対するアプローチ戦略が功を奏し、自民党が圧勝しました。そのことを充分に分析し対策を練ってきた民主党は、今回究極の選挙戦略を実施しようとしているとはいえないでしょうか。それは合法的国民買収選挙―はっきりと公職選挙法には違反していないといえます―ともいえなくもない戦略ですが、合法的であるだけに、結果選挙で勝利したならば見事といわざるを得ません。―再度付言いたしますが自民党も同じく買収といえなくなくはないと思います―

戦略的思考をすれば、法というのは書いてあること以外何をやってもよいということですし、たとえそれに抵触しても立件できない、もしくはさせなければよいということです―後者は倫理の問題です―。そしてそれは相当豪腕な戦略家によってのみ実現できるものです。―そのような戦略家が民主党には存在して、自民党にはいないという証左でしょう―

そのような視点で民主党のマニフェスト―自民党も―を改めて読みますと、「政策集」ではなく「戦略集」といえなくもありません。そしてそれは圧倒的に民主党のそれの方が具体的でインパクトがあると思います。

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