上海の土産話 - 松本徹三

2009年10月23日 10:28

たまたま商用で3日間を上海で過ごしました。上海の活気は相変わらずで、リーマンショックの余波は見た目には殆ど感じられませんでしたが、「日本の政権交代」については、色々な人達(中国の産業界で活躍する相当上層部の人達)から聞かれました。

相手が中国人ですから、先ずは「新政権は『これまでの米国とのあまりに緊密な関係』を薄め、アジア諸国、特に中国との関係を深めようとしている」という話からはじめましたが、私に質問してきた三人の相手は、例外なく、その話題には殆ど興味を示さず、すぐに経済問題に話を振りました。


はじめは少し意外に思いましたが、良く考えてみると、それは理解出来ないでもありません。仮に私自身が中国の産業界の人間だったとしたら、「日本の景気がいつ回復するか」ということについては多大な興味はあっても、「日本が米国より中国を重視する姿勢に転じそうだ」ということを聞いても、「へえ、そうなんですか?」という以上の感慨は特に沸かないと思うからです。

中国人の殆どが、日本が台湾に肩入れすることには極めて神経質ですし、チベット人やウィグル人に同情することにも極端に神経を尖らせます。そして、靖国問題に象徴されるように、日本人に「かつての大日本帝国時代を懐かしむような風情」が少しでも見えると、過敏と思われ程に反発します。しかし、日本が米国の核の傘の下にいることや、日本人が親米的であることについては、既に「当たり前のこと」と受け取っているようであり、それが短時日の間に抜本的に変わるとは、あまり思っていないようです。

私は、「日中間に将来深刻な衝突が起こるとすれば、それは、尖閣列島問題のような海洋資源の争奪に関連して生じるだろう」と思っていますが、もし不幸にしてこのような衝突が起これば、日本は、(いくらアジア重視と言っても、まさかベトナム海軍やフィリピン海軍の助けを求めるというわけにも行かないでしょうから、)結局米国に仲介を求めざるを得なくなり、米国は、たとえ日本との関係が若干疎遠になっていたとしても、地政学上日本に肩入れせざるを得ないだろうと思っています。そうなると、中国にとっては、日米関係が一時的に冷却しようとしまいと、あまり関係はないということになります。

(日本の「空想的平和主義者」の中には、「仮想敵視されることがないような友好関係を結んでいる限りは、尖閣列島問題などについても、中国はそんなに理不尽なことはしない筈だ」と考えている人達もいるのかもしれませんが、こういう考えについては、あまりに馬鹿々々しいので、ここでは敢えて論評はしないことにします。)

私も、ビジネスで関係のある人達を相手に、わざわざ尖閣列島問題のような深刻で困難な問題を議論するのは嫌ですから、早々に話題を経済問題に移しました。しかし、そこからが問題でした。

彼等とて、日本の一般大衆が「経済危機は長年の自民党政権の失政の為である」と考え、それが「Change」を求める大きなうねりとなって民主党に圧勝をもたらせたことは知っています。しかし、今、彼等にとって興味があるのは、そんな経緯よりも、「勝利を収めた民主党が如何なる政策によってこの経済危機に対応しようとしているのか」ということなのです。日本経済が、今や、巨大市場としての中国、食品や軽工業製品の一大供給元としての中国に大きく依存しているように、中国経済にとっても、日本の経済動向は大変重要なのです。

しかし、大変残念なことに、このような彼等の質問に対して、私は何も明確には答えられませんでした。私が辛うじて言えたのは、「選挙戦の中で、民主党はあまりに多くの『経済的弱者救済の為の施策』を約束せざるを得なかったので、先ずはその約束を果たすのが急務になっている。この為、日本経済が急速に上向くことは当面あまり期待できず、結局日本は更なる国債の増発に追い込まれざるを得ないだろう」ということだけでした。

ちょうどその場に居合わせた英国人が、「要するに、『社会主義国日本』がますます社会主義的になるということだね」と茶々を入れたので、「そうですよ。その間に、『世界中で最も資本主義的な性格をもった人達の国である中国』は、ますます資本主義的になっていくでしょう」と切り返して、大笑いになりました。(こういう話をしていると、大抵の中国人のビジネスマンは、概ね少し嬉しそうな顔をしています。)

以上、埒もない上海の土産話です。

松本徹三

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