飯田泰之氏への質問 - 池田信夫

2010年02月23日 00:57

問題提起の意味で、勝間和代・宮崎哲弥・飯田泰之『日本経済復活 一番かんたんな方法』についての岩本康志氏の感想を引用しておきましょう。


勝間「世界中の経済学者がデフレ脱却の処方箋を書いてくれました。答えはきわめてシンプル。おカネの供給を増やせばいいのです。」

私は同意できない。このメッセージは正しくないし,有害であると思う。将来のマネーストックを増やすことを皆が確信してくれれば,インフレが起こる,というのなら正しい。しかし,「『インフレ目標』をめぐるネット議論の陥穽」で説明したように,中央銀行が将来にそういう政策を確実にとらせるようにルールを導入する方法は簡単ではなく,専門家の意見も割れている。専門家の多数が納得した方法は見つかっていないのである。


しかし勝間氏は、そういう簡単な方法が見つかったと断定しているのです。それは「バーナンキの背理法」として知られる冗談(を彼女が真に受けたもの)です。彼女はこう「論証」しています:

「いくらお金を刷ってもインフレが起きない」のなら、民主党が大騒ぎしている財源不足も日本の中央銀行である日銀が通貨を発行することで賄えるようになりますし、いっそのこと税金を取るのをやめてしまって通貨発行で国の財政を賄えばいい。いわゆる無税国家の誕生です。パチパチ。しかし歴史上、無税国家は存在しません。つまり、背理法により「いくらお金を刷ってもインフレが起きない」という仮定は間違い。

そして彼女が提案する政策は「インフレになるまで定額給付金を配り続ける」というもので、「残高が100万円を超えるまでになれば、みんな必ず使い始めますよね」という。1世帯100万円ということは、全体で50兆円。日本の税収を上回るのですが、そういう政策は財政的に可能なのでしょうか。またこういう政策によって日銀が破綻して信用が失われた場合、インフレはコントロールできるのでしょうか。

つまり勝間氏の議論には、50兆円以上の定額給付金に何の副作用もないという暗黙の仮定が含まれているのです(これが金融政策ではなく、財政政策であることにも気づいていない)。財政破綻やハイパーインフレのリスクを考えなければ、どんな政策も可能です。植田和男氏もいうように、

資源配分への悪影響、中央銀行の財務状態をへの配慮等を無視してよければ、デフレの克服はたやすい。財を大量に購入して廃棄するということを続ければ、デフレは止まる。中央銀行が政府の代わりに公共投資を大量に実施しても同じである。あるいは大量に株式を購入し、株主としてその企業に設備投資を命じることも考えられる。

勝間氏は、もう自己啓発のネタが尽きて商売としてやっているんだろうからしょうがないとしても、それを「まったくそのとおりです。見事な説明ですね」などと持ち上げている飯田氏は、こういう勝間氏の「提言」が正しいと考えているのでしょうか。「アゴラ」のスペースを開放するので、お答えいただきたいものです。投稿は、そのまま掲載します。

追記:私の意見はJBPressに書きました。

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池田 信夫
アゴラ研究所所長 SBI大学院大学客員教授 学術博士(慶應義塾大学)

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