やはり聞き置くだけのネット審議会? - 原淳二郎(ジャーナリスト)

アゴラ編集部

経産省のアイデアボックスが23日オープンした。同省ホームページに開設された投稿サイトで、産業構造審議会情報経済分科会の審議に広く国民の意見を求めるのが狙い。一部の有識者だけで審議してきた審議会が国民に開放されたという意味でネット審議会とか国民審議会と呼ぶ人もいる。登録すればだれでもIT政策について意見が書き込める。23日現在2500人あまりが登録している。同時にツイッターでリアルタイムに意見表明できるようにもなっている。


 昨年実験的に開設されたアイデアボックスのフォローアップ版だが、ツイッター機能が追加された。今回はIT政策について9つのテーマについて意見を求めている。初日から多くの意見が書き込まれている。投稿された意見には賛成反対の投票ができるほか、コメントもつけられる。

筆者も登録した。昨年のアイデアボックスでも登録して「官庁の記者会見をすべてネットでライブ中継したら」というアイデアを投稿した。今回はどんなアイデアを投稿しようか思案中だ。

参加者の多くはこうした開かれた審議会形式を評価している。半面、これまで審議会が出した中間報告に国民から意見を求めるパブリックコメントとどこが違うのか、という意見もある。パブコメは電子メールでも手紙でも提出可能だった。

提出期限後、官庁がまとめて発表する形式が多く、利害関係者しか関心が持たれなかった。忘れたころにホームページに掲載されるので部外者の注目を集めることが少なかった。今回はリアルタイムで掲載され、賛否も表明できるから、パブコメより人気を集めたのだろう。

しかし、昨年もそうだったが、ここで表明された国民のアイデアや意見がどのように政策に反映されるのかは、はっきりしない。昨年のアイデアボックスはわずか1ヶ月間しか開設されなかった。今回も3月15日までのわずか3週間である。なぜ恒常的に意見を述べる機会を設けないのか。なぜIT政策にのみアイデアボックスを開設するのか。他の政策でも同じ機能を備えたらもっと政策立案能力が高まるのではないか。疑問に感じることは多い。

昨年の事業仕分けは国民の関心を呼んだが、仕分け作業期間と、平行して仕分けアイデアボックスを開設していたら、さらに効率的かつ有効な仕分けができたのではないか、とさえ感じる。会場のリアルタイム映像中継をするだけがIT活用法ではないはずだ。。

国民から寄せられる意見は多様である。それを全部政策に反映できるわけでもない。しかし聞きっぱなしでも困る。つまり国民のアイデアや意見がどのように集約され、あるいは排除されたのか、分かりやすく編集する機能が必要である。今回は経産省の担当者が司会役というかまとめ役をしているようだが、何ができて、何ができないか、官庁側が説明しないとやはり聞き置くだけの国民審議会になってしまう。