政治家に公約を守らせるのは国民だ ー大西宏

2010年06月07日 13:01

政治の場合、昨今はマニフェストが次第に浸透してきています。いずれにしても昔なら公約なんて誰も信用していなかったものが、次第に公約の重みは増しつつあり、鳩山総理の辞任まで追い込む大きな原因となりました。
さて、「公約を守らない政治家」というブログが、ブロゴスにでていました。海外の人の書いたものを紹介しているものですが、ご自分でもそうだと思っているから紹介されたのでしょう。

公約を守らない政治家

しかし、このブログを書いた青木さんは、公約がなにかという点について認識の混乱があり、間違っています。


公約が「約束」だということで、「ビジネスでも当然約束ぐらいはする。そしてその遵守は司法制度によって担保されている」というくだりにそのことが端的にあらわれています。

ビジネスの世界で、政党が示すマニフェストなり公約に匹敵するのが、経営計画なり経営ビジョンです。その経営計画や経営ビジョンが、株主やさまざまなステークホルダーに向けて表明されます。

株主は、それを評価し投資するかどうかを決定し、また取引先は、その経営計画や経営ビジョンに照らし合わせて、自社の経営や、その企業との今後の取引のありかた、提供する商品やサービスを考えます。社員や就職を考える人たちは、その会社に就職していいかどうか、働きがいを見いだせるかどうか、またこの会社に働きづるけるべきかどうかについても重要な判断材料となります。

さて、ビジネスの世界で、企業経営の最大の約束であり経営ビジョンや経営計画が達成できず、守られなかったということで、司法が関与し、経営者が罪に問われるのかは常識的に考えてありえません。

なぜなら、先のことは誰にもわからず、状況の変化によって、経営成果は大きく変化するからです。しかし、業績が上がらなければ、投資家の信用は得られず、株価は下がり、また最終的には、株主からの審判を仰ぐことになります。いや株主だけでなく、他のステークホルダーからも見放されます。

しかし、企業が法的に負っている責任をまっとうしない、遵守しなければならない法を守らなければ、企業も告発され、司法が裁きます。

さて、政治も同じことがいえると思います。政治家も法を守らなければ、告訴され、司法が裁きます。国民や選挙民との約束としての公約が守らなければ、ペナルティーが課せられるとして、それは誰がペナルティを与えるのかです。さらにどのようなペナルティを課すのかの問題もあります。
それを司法が行うとすれば、それは独裁政治、さらに恐怖政治に他なりません。

「政治家個人が自分の資産を担保にしてもよい。公約を守らなければ家を第三者に寄付するという契約を結べばよい」というのも乱暴な議論です。

なぜなら、きめられた法律を守るというのと、実際に政党や政治家が、なにかを約束し、その実行にむけて努力するというのは次元が異なります。経営にしても、政治にしても、予測できない状況の変化が必ず起こってきます。

しかも、なにかのアクションを起こしてはじめて分かってくることがいかに多いかを実際のビジネスをやっているとよく分かります。だから、仮説をたて、実行し、その成果や結果で、修正を行い、PDCAのサイクルを回します。

公約のすべてが100%できなければ、駄目だという審判をくだす国民はそう多くないと思います。しかし、本当に実現に向け、努力したのか、国民にも納得できる不測の事態が起こったのか、あるいは障害が想定したよりも大きく公約が実現できなくなった場合でも、問題はそういった事態や障害にどう対処したのかを国民は見ているのだと思います。問題対処能力も含めての審判が選挙によって下されます。

いずれにしても、審判を下すのは国民であり、選挙民にほかなりません。マスコミでもなければキャスターでもありません。

もし、公約を守らない政治家や政党に、ペナルティも課せられないということであれば、問われているのは国民のほうです。

また、「20代、30代の官僚からランダムで選ぶということもできる。もし私が政治家になるなら、いかにこの層から意見を集約できるか考えたいぐらいだ」という発想は古いように感じます。

「毎回ランダムに人を集めて議論を行うそのプロセス・結果を公開し、実際にそれに従ったかを自ら公開する政治家ぐらいはいてもいい」ということですが、すでに、ランダムではないにしても、党派を問わず、ネットを通した公開の議論やインタビューは、始まっており、若手の官僚をそのなかに加えることはいいにしても、 若手の官僚だけを集めて行う議論がどれほどの意味を持つのかはかなり疑問といわざるを得ません。

日本は自らの手で民主主義を勝ち取ったわけでなく、その成熟には時間がかかると思いますが、昨今はインターネットを通して、さまざまな意見やものの見方を知ることができる時代になってきました。

一票の格差など、問題はあるとはいえ、選挙制度という賽はすでに投げられており、あとは選挙を通して審判を下すのも、厳しい目や、温かい目で、政治家や政党を育てるのも国民だと思います。

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大西 宏
株式会社ビジネスラボ代表

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