いろいろ考えたけどやっぱりリフレを支持します- 池田信夫

池田 信夫

藤沢数希さんの記事には、目から鱗が落ちました。私も、同じ趣旨でリフレ政策を支持します。

日銀は、デフレ脱却議連の提言に従って2%超のインフレ目標を設定し、無制限に国債を買い取るべきです。日銀が拒否したら政府は総裁を更迭し、国会決議によって国債を引き受けさせればよい。日銀があらゆる有価証券や不動産を買って1000兆円以上の資金を供給すれば、数百%のインフレ(あるいはバブル)が起こり、実質賃金も実質政府債務も激減し、年金の実質額も大幅に減って老人から現役世代に巨額の所得移転が起こり、日本経済の問題は一挙に解決します。


「ゼロ金利でマネタリーベースを増やしてもインフレは起こらない」という多くの金融経済学者の議論は誤りです。インフレは貨幣的現象だが、サージェントもいうようにハイパーインフレは財政的現象なので、日銀の信任が失われてレジーム・スイッチが起これば、ハイパーインフレが起こります。これは途上国ではありふれた現象で、それを止めているのは中央銀行の政策なので、ブレーキをはずせばいいのです。

二つのレジームは複数均衡なので、両者の中間のマイルドなインフレで止めることはできない。「日銀が狂った」とマーケットが判断すれば、ただちに金利が暴騰し、円が暴落して、大幅なインフレが起こるでしょう。しかし物価が上がったら日銀が金融を引き締めてはだめです。インフレ率というのは物価の上昇率なので、引き締めるとデフレになって元にもどってしまう。そういう常識的な行動をマーケットが予想すると、最初から何も起こらない。

だからクルーグマンのいうように、日銀は無責任な行動にコミットし、ブレーキを壊す必要があるのです。白川総裁が約束しても誰も信用しないので、大多数の人々の予想を決定的に変えるには、白川氏を更迭して亀井静香氏が(議員辞職して)総裁に就任し、参院選に自民党から出馬した三橋貴明氏を副総裁にし、理事をすべて金子洋一氏や勝間和代氏などのリフレ派に交代させるぐらいのショックを与える必要があります。

大インフレによって一時的には大規模な倒産が起こり、失業率は数十%に達するでしょうが、日本には生きている意味のないゾンビ企業が多すぎるので、この際それを一挙に清算すれば、政府が「構造改革」なんかするより、はるかに速く問題が片づきます。このような一時的ショックによる失業は、価格調整がすみやかに進めば、産業構造の転換で吸収できます。金融資産は大幅に減価するが、それは海外に逃避すればよい。

最終的には、亀井総裁を更迭して「新円」に切り替えれば、インフレは止まります。それには数ヶ月から数年かかり、物価がオーバーシュートして数百倍のハイパーインフレになって日本経済が壊滅するリスクもありますが、今のようにゆるやかに衰退するよりましです。終戦後の焼け跡から、日本は世界史上最高の成長を実現したのです。

コメント

  1. 故郷求めて より:

    この手の「解」(崩壊の壊、かも)は、女性ウケすると思います。女性はややこしいことをしないでリセットしちゃう勇気がありますからね。で、思い出したんですが、これが「希望を捨てる勇気」ですね。

    ※誤解なきように付言しておきますが、女性を蔑視するわけではありません。将棋を見てもサッカーを見ても、女性は本当にポジティブで攻撃的です。対戦すると男子が勝つので女子のやり方は間違ってると思われがちですが、攻撃に徹するのは実は非常に難しい。池田さんの今回のエントリーは守りを気にしない女流将棋に似てると感じましたので・・

  2. bobbob1978 より:

    終戦後の焼け跡からの再出発ですね。
    戦後の日本を築いて来た人達とっては寂しいことかも知れませんが、若い世代にとってはワクワクする話です。
    日本を取り巻く環境が変わったのに高度経済成長期と同じ方法でこれからもやっていける考えている人々が表舞台から退場してくれれば日本の未来が開けます。

  3. forcasa3 より:

    就職氷河期世代なので若者を名乗るのも憚られますが、こういう話を聞くと本当にわくわくしますね。
    自分も物心が付いた頃から、この国は「カイゼン」によって立て直すのは不可能なのではないかと漠然と感じていたのですが(実際のところ有効なカイゼン策も小泉竹中改革くらいしかありませんでしたが)、いよいよ二進も三進もいかなくなってきましたね。

  4. 池田信夫 より:

    これは9割は冗談だけど、1割ぐらいは本気。そのうち本当にこうなる可能性も小さくない。リフレ派が政権に入る可能性はないが、財政再建を先送りしていると、こういう事態に追い込まれる。

    リフレ派のいうように、ゼロ金利状態でマイルドなインフレを起こせるという根拠は、理論的にも実証的にもない。起こせるとすれば、high inflationだけ。

    http://www.econlib.org/library/Enc/Hyperinflation.html

  5. パソコン教室でパソコンの調子が悪くなり,講師があれこれ直そうと試みたけど全くダメで,さじを投げかけたのを,生徒のおばさんが「こうすればいいのよ」と言って,いきなり電源を引っこ抜いてスイッチ入れなおしたら,本当に直ってしまったというエピソードを思い出しました。

  6. nippon5050 より:

    先生、残念ながらこの作戦(笑)も実行は不可能です。

    一体だれが亀井氏を日銀総裁にすえて、また後に解任するでしょうか?

    先生がご指摘のように日本における権力の中心が空白である以上、政治的リーダーシップによる構造改革も、リフレによる日本強制リセットも不可能なのです。
    天皇陛下が自衛隊を引き連れクーデターを起こし、独裁体制でも確立しない限り、構造改革もリフレもありませんよ。

    そしてクーデターなどは絶対起こらない。
    米軍か、下手すると人民解放軍が介入してくる。

    小泉改革があったばかりに、わたしも政治的リーダーシップによる構造改革は可能だと思ってましたが、参院選でしがらみの無いはずの新党までがドラスティックな構造改革案を打ち出せないでいる。
    法人税なし、解雇規制の緩和、社会保障はベーシック・インカムで一本化、これぐらいはマニフェストに載せる政党が一つくらいあってもいいでしょうに。

  7. qingmutong より:

    中々名案ですが、そうなれば日本は手持ちのアメリカ国債を投げ売りするので暴落するし、日本国債の保有額を増やしている中国も、その暴落を指をくわえて眺めることはないでしょう。

    米中共同管理下におかれるかもしれません。わが自衛隊は米軍の下請けですから屁のつっぱりにもなりません。

    アメリカはこれまでドル減価によって日本にさんざん保有米国債の為替差損を負わせたのですから報復したいのは山々ですが。

    昭和20年敗戦の時日本の経済的プレゼンスはゼロでしたので、自国のことだけ考えればよかったのですが今はそうは行きません。

  8. sincosintan より:

    藤沢さんに私も賛成です。投資ファンド関連の仕事をしていますが、日本の案件が儲からない大きな理由は、金利が低すぎることです。大量の国債残高を理由に長期金利は抑制死守となっており、景気浮揚を理由に短期金利もゼロとなったまま十年。中小零細企業でも公庫から2%でカネを借りられ、延滞しても借換えOK。こんなデタラメでユルい国ではまともな金融業も実業も競争で勝てません。一度破壊的に金利を引き上げ(=リフレと同じ)、ゾンビ企業や寄生虫産業を一掃することが必須です。明治維新のときは国難でしたが、欧米化するための需要が無尽蔵でした。終戦後は焼け野原からの復興で需要が無尽蔵でした。今われわれに必要なことは、いちど既得権益層が「すっからかん」になることです。そして岩崎弥太郎や本田宗一郎などの偉大な企業家から怪しげな起業家まで、玉石混交でリスクテイカーに勝手にやらせることでしょう。東南アジアや中国の諸都市のような熱気と「何でもアリ」の雰囲気の中で再スタートを切れれば、経済成長率は10%くらいにはなるような気がします。もちろん大変な痛みを伴い、短期的には失業者が街にあふれるでしょうが、座して死を待つよりいいのではないでしょうか。

  9. yukiorav より:

    9割冗談とのことで安堵しました(笑)

    >起こせるとすれば、high inflationだけ

    にも賛同します。

    劇薬が必要なのでしょうね。

    ただ、わたしはもしそれを使う権限があったとしても使う勇気がないな。

  10. disequilibrium より:

    これは実行できるんですかね。そもそも、リフレ派は、ハイパーインフレなんて起きず、本当に単に景気が良くなると考えているようですけど。
    池田さんはそれを支持されるわけではないですよね。

  11. ゆうき より:

    そういうおもしろい話を聞くほど、「質素で退屈で憂鬱な低成長が続く」という池尾和人氏の描く未来って現実的だなぁと思ってしまいます。

    江戸時代でいうと今が明治維新期みたいに錯覚してる人多いと感じますが、日本の現実は享保の改革みたいなのがようやくはじまったタイミングだと思います。行政刷新会議にみられるような質素倹約のムード。似てると思いませんか。

    江戸時代は200年以上続きました。1940年体制も200年ぐらい続くかもしれません。今いきている人の人生は、その中で終わる気がしてなりません。

  12. katrina1015 より:

    1000兆円の焚き火というやつです。それをやると体力のない銀行が潰れるとか、ハイパーインフレになるならない?とかはありましたw
    $\相場から貿易黒字になるとか~
    ま、インサイダーはいけませんw
    とりあえず、ハイパーというほどでもないインフレに全部w1万倍はないと予想してます。
    ふ~ん博打ですね。

  13. eugene43 より:

    この20年の政治の状況をみると冗談ではなく近い将来に起こりうることですね。増税はイヤ、構造改革はイヤ、既得権は手放さない。でも景気は回復してほしい、、、。
    景気回復を聖戦完遂に置き換えれば自体は驚くほど65年前と似てます。堅実で科学的な議論をしないで、自分の今の状況に都合のいい奇策ばかりがはびこる。
    あれだけ大きな悲劇を二度と繰り返さないと誓ったんではないですか?あれから私達は学ばなかったんでしょうか。

  14. jajamata より:

    あれだこれだと既存の体制で手を尽くすよりクーデターの方が早いような気がします(笑)

  15. nnnhhhkkk より:

    1000兆円の資金供給をすれば、たぶん最初の数年は超巨大バブルが発生するのではと思います。
    80年代後半のバブルなんて目じゃないぐらいの凄いことが起きて、その時にインフレ(リフレ)派はそれみたことかと勝ち誇るような気がします。
    しかし、遅れて物価に火が付きだした時に、取り返しのつかない結果を生むと考えています。

    あるいはバブルなんて発生せずに、いきなり円の信用が失われ、インフレが発生して日本人が一気に貧乏になってしまうかもしれません。
    おそらく多くの日本人が心の奥底でバカにしている韓国や中国人よりも貧乏になるかもしれません。
    その時初めて日本は特別な国ではないことに気づくのではないでしょうか?とくに三橋とその信者達。
    日本の技術力は世界で一番で対外債務もいっぱいもっているから大丈夫。問題ない。国債は暴落しない。有り得ない。
    これらすべてが幻想かつ日本人の奢りだと気づくまでは目が覚めないでしょう。

    インフレが発生しようがしまいが、今の大企業や金持ちや成功者を妬む税制が残っている限り、単純労働者の雇用を大量に生めるレベルまで海外との賃金格差が縮まるでしょう。
    日本国内で縫製工場が復活できるほどに貧乏になるかもしれません。
    そうならないための構造改革や税制改革なのですが、日本人は全体的にインフレ幻想へと走りだす程に落ちぶれてしまっています。
    札を刷って楽して良くなろうという怠け心が日本を蝕んでしまっているのは悲しいかぎりです。

  16. livedoa555 より:

    ?国が「国債の償還をしない」と宣言して、国の借金を
     バランスシートから削除する。
    ?価値がゼロになった国債を保有している金融機関の
     損失を日銀が紙幣を刷って穴埋めする。(実際は、
     キーボードを叩くだけ)

    このような、スキームではどうなるんでしょうか?
    同じでしょうか?

  17. https://me.yahoo.co.jp/a/u540mrdbVIb5etvNTFCFUJ40iuo- より:

     タイトルだけでジョークと分かったんだけど、90%がジョークというのは遊びすぎです。
     ハイパーインフレになれば確かに所得移転は起きると思いますが、貧乏人は即明日の米が買えなくなるのに対し、金持ちはいくら資産がめ減りしようと、少なくとも明日の米は買えるわけです。
     金額ベースの金融資産ではなく不動産など、ある意味では絶対的な資産を持つ本物の金持ちは動じません。
     藤沢さんのジョークは彼の持ち味として妥当な範囲ですが、池田さんには真似してほしくないですね。ジョーク率が99.9%なら、そんなものかなぁとは思いますが。

  18. https://me.yahoo.co.jp/a/Lw3RE1VEUPSdFXEBETkjoQTnv2tI#54bbd より:

    コメントを寄せられている皆さんはご理解されているようで、私恥ずかしいのですが、どういった層からどういった層へ所得移転が起きるのでしょうか?それによりどんな日本の経済問題が解決するのでしょうか?
    教えてください。

    池田教授は年金や国の債務の実質減額が生じることによる・・・と、挙げられていますが、

    1)現年金制度には下方硬直性がある物価スライド制が導入されており減額効果は軽減される
    2)統計的に見て、年金受取世代は勤労世代よりも、土地(資産)を持っており、値上益あるいは賃貸やリバースモーゲージという手段でキャッシュフローを得る手段を有している
    3)年金受取世代は勤労世代よりも、株式(資産)を持っており、値上益のみならず配当いうキャッシュフローを得る手段を有している

    その一方で

    世代間扶助という形で年金原資を負担している現在の勤労世代は、年金世代が若かりし頃のほど、住宅ローンを抱えていることは少なく、インフレによる実質債務削減の恩恵は少ないのではないか?

    と、私は、親や伯母達あるいは友人たちを見ていて、思えて仕方がないのです。
    この稿で挙げられている日本の経済問題のひとつが、世代間不平等を指しているのであれば、リフレでは解決しない気がして仕方がないのです。

    国の債務にしても、その時点での債務は実質減額しますが、国家予算の多くが老人福祉と年金債務であることを思うと、物価スライドによって、新たな価値に引き直した債務で積み直されるだけの気がして仕方がないのです。

    勤労世代を一度失業者にして強制的に労働人口の産業間移動を図り、産業構造を変革をせまるいうのであれば分かるのですが・・・、これも勤労世代にストレスを押しつけることになるので世代間不平等を覚えます。

    リフレよりも
    『統計的に見て』孫の幸せよりも自身の快適さを優先する強欲を制する方に揮う、剛腕・蛮勇はないものでしょうか