海外で売れる製品を国内でも徹底的に優遇せよ、恣意的に - 小川浩( @ogawakazuhiro )

円高が進みますね。80円を切る可能性も現実味を帯びています。
輸出産業には大きな痛手とは思いますが、本来ならば自国通貨が強いことはよいことだと僕は考えます。ただし、今回は米国が恣意的にドル安に振っており、その戦略に円が過剰に反応してしまっている。つまり円が強いんではなく、踊らされて高くさせられている、という点で、やはり憂慮すべき事態かなと思います。日本の産業は、現時点ではそれだけの円高に見合う高評価を受けるような状況にないからです。

僕は長く貿易業務に携わっていたこともありますが、日本は輸出立国であると信じています。世界が欲しがる製品を作り続けることが日本を守る本道であると。

しかし、最近の日本のメーカーの姿勢と行政のあり方に、長期的な視野に基づく戦略がない、もしくはずれていると感じています。


まず分かりやすい例を話します。

僕はオートバイが好きなのですが、日本のバイクは長らく世界中の若者の憧れであることを、どれだけの人が意識しているでしょう?最近バイクが売れない状況が続いていますが、それは行政を含め、日本人がバイクをコミューターとして軽視していることに起因しています。
アメリカの代表的なバイクであるハーレーは世界中に輸出されていますが、ハーレー自体がアメリカ人のアウトロー精神の象徴として、米国内でも強く愛されています。つまり、国内と国外での製品評価とブランド価値がちゃんと一致している。

しかし、日本人の多くはバイクに対する愛情があまりに薄い。行政も、バイクを乗るための環境を整えてくれず、街中の駐輪場を整備してくれないのにも関わらず、路上に停めておけばすぐにクルマ同様に駐禁切符を切りにかかります。安心して停めておく場所がなければ、バイクを乗ることをためらってしまいます。事実、僕も2年前にはハーレーを手放し、いまも保有しているベスパを乗ることが極端に減ってしまっています。切符を切られるのが怖くて日常の脚として使うことができないからです。

だから売れない。日本のバイクは世界で評価される素晴らしいブランドであるのに、肝心の日本国内で売れない。日本人が愛さないなら、世界での価値も堕ちていくことになります。この、輸出して高い評価を受ける商品と、国内で売れる、あるいは愛される商品が異なっていることがガラパゴスのゆえんであり、ひいては日本の国力を削ぐ、一因になっていると僕は考えます。

自動車も、最近では駐車場の整備によって乗りやすくはなっていますが、さまざまな原因によって若者の関心を引くことができず、家族向けのワンボックスや軽自動車ばかりが売れて、少年達が憧れを抱けるようなクルマが国内ではほとんどありません。結果として、富裕層が買うクルマはほぼ100%ドイツ車かイタリア車の高級ブランドです。自動車は日本の最大の輸出産業であるのに。

家電はどうでしょう?
3D機能こそが最大の焦点になっている国内の薄型テレビ市場ですが、米国でも欧州でもテレビ売り場の60-70%はサムスン製品が占めています。それらのほとんどは3Dのような機能ではなく、そこそこの低価格でカッコいい、というコンセプトの、ファストファッション的な商品です。日本メーカーは3Dが、こうしたファストファッション型にフォーカスするサムスンに勝てるほどのイノベーションと考えているのでしょうか??

とにかく、ガラパゴス状態はケータイだけでなく、日本中のあらゆる市場にはびこっています。それはメーカーの怠慢なのか、日本の消費者の特殊な嗜好なのかは分かりませんが、少なくとも、僕は行政が、輸出産業として成立して、日本の国力向上に寄与する商品をピックアップして、それらがそのまま国内でも通用するようなバックアッププランを作るべきだと考えています。
どうしても自動的にガラパゴス状態に陥りやすいのが日本の特殊事情だとすれば、それを法的に矯正すべきです。

冒頭の例で言えば、いますぐバイクの駐輪場の整備をするか路上の駐輪を条件付きで認めるべきです。バイクイコール暴走族のような扱いをいますぐ止めて、大人がシティコミューターとして楽しめる環境を作るべきです。クルマでも家電でも、ケータイでも、海外で売れるような商品を作り、その仕様で日本国内でも通用するような環境づくりを後押しするべきです。

国内と国外の製品評価や仕様を極力一致させていくこと。それが日本の国力を高めることになると僕は思います。ガラパゴスでいいでしょ、海外が分からなくても日本人の嗜好が特殊で何が悪いの、という姿勢は絶対に間違っています。
グローバルで売れる製品を作る。そしてそれを国民全員で支援する。

戦時に言っていた「欲しがりません、勝つまでは」というスローガンを良しとするつもりはありませんが、世界で売れる製品の仕様が、多少僕たち日本人の本来の嗜好とは違っていたとしても、それを受け入れて使う。使わせる。メーカーに作らせる。そう強制されて、矯正されることを受け入れる。

それしかないと僕は考えています。

世界で売れる製品を優遇する。
それをマニフェストにする政治家が出れば、僕は一票投じます。

コメント

  1. heridesbeemer より:

    ま、お説は、わからなくはないのですが、だからといって、政治になにかをしてくれ、とか、政策的優遇とかは、いかがなものかと思います。

     たしかに、都市交通のあり方を踏まえた駐輪場の問題や、原付から、AT限定、大型二輪まで、5種だかもある、この惑星上でもっとも、厳しいクラス分けされた、ガラパゴス免許制度、運転免許の取得にかかる費用が、この惑星上で、最高レベルにたかい、など、行政ができる事はあるでしょう。

     しかし、日本の電話屋が、ガラケーしかつくれず、日本の車屋が、トールボーイのワゴンもがきしか、つくれず、日本のバイク屋が、バッチがなければ、どこ製だかわからない判でおしたようなバイクしかつくれないとしても、ユーザーのニーズにかなうイノベーションのネタがあるなら、世界のどこかの誰かがきっとやるでしょう。

     国内でしかうれないガラケーの春、夏、秋冬、3度のモデルチェンジ大会で、ガラケーの開発、購入に時間と金を使うかつかわないかは、経営者と消費者の問題で、そんなことは、政治は、関与すべきではないと思う。

     政治がやらないといけないのは、資本の流動性を高めること。それが、衰退産業から成長産業へのシフトを引き起こす。その為の制度設計をやりなおすことだと思う。

  2. kiokada より:

    海外で売れる製品かどうかは別にしてわざわざ人知れず経済活力をそぐ規制が強化されている現状に政治家は気づいてほしい。

    行政としては国民の生活の質の向上のためとして行っている規制の強化が結果として経済の活力をそいでいると思われることを見聞きすることが多くなってきました。

    バイクの件しかり、廃棄物処理管理の強化然りです。設備など新たに納入する業者は発生する廃品の処理を先の先まで証明しなくてはなりません。手間と時間がかかり設備の更新の強い足かせになっていると聞きました。一部の不心得者のために多くの善意の業者の首を絞めている現状です。

    行政が大きな観点を持てないのはしかたない。けれど政治はその点の目配りをしてほしいと思います。

  3. 未来 より:

    賛成します。

    また、記事に日本に対する愛が強く感じられ共感しました。

    自動二輪は素晴らしい文化の一つ。
    それなのに敵視する風潮がある気がします。
    暴走族は別問題として考えて欲しい物です。