宰相より日本の�眷小平に!- 小沢氏の立候補に落胆 - 北村隆司

2010年08月27日 12:00

鳩山前首相から全面的な支持を取り付けたとして、小沢一郎前幹事長が民主党の代表戦に立候補する事を発表しました。「一寸先は闇」と言われる政界ですが、先ずは小沢氏の代表就任は間違いなさそうで、こうも早く「政治と金」疑惑コンビが復活するとは誠に情けない限りです。


重量感、指導力、安定感、カリスマ性など、鳩山氏や管首相とは比較にならない存在感を持つ小沢氏ですが、透明性や国際性、経済知識に欠ける小沢氏が首相になれば、ボスの胸先三寸で政策が決まる時代に逆戻りする恐れが充分です。

立候補に先立つ25日の「小沢一郎政治塾」で講演した小沢氏が、「僕は米国人は好きだけれども、単細胞で駄目だ。決して米国人は利口だとは思っていない。」と述べる一方、英国について「さんざん悪いことをしておいて、紳士面をして澄ましていて好きではない」と発言したと国内の主要メデイアが一斉に報じました。

報道内容に疑問を持った私は、小沢講演のビデオを見てみました。実際の講演は、精神訓話が殆どで具体策は欠けていましたが、傾聴に値する部分も多く、センセーショナルな見出しで読者をミスリードする報道の質の悪さに腹立たしさを覚えた位です。

英米を軽蔑した発言は「自国の民主主義が危機に直面すると、国民の自由な意思による選択が実行されている国」として米国を高く評価し「その知恵と自立心は、七つの海を支配しただけの民族だ」と英国を称えた言葉の枕詞として使われたもので、小沢氏はメデイアに揚げ足を取られたと言う方が正解かもしれません。

講演では、天皇の名で厳しい軍規を守ったかに見える皇軍も、捕虜となると忽ち烏合の衆と化すのに比べ「戦場にかける橋」に登場する英国人捕虜の規律正しさを見ると「自分たち自身の社会であり、国であるという民主主義の基本の意識が徹底している」英国に敬意を表し、アメリカについては「スクールバスが停車すると、誰に言われるまでも無く対向車も含めて全ての車がぴシャッと止って子供達の昇降が終るのを待つ」と言う実例を挙げて公衆道徳の高い事に驚いたと語っていました。

返す刀で「本来の日本人ならいざ知らず、政界でも官界でも財界でも、一般日本人に至るまで、精神の荒廃が急速に進みモラルが地に落ちた現在の日本では、我々が直面している難問解決も難しい」と、国民の自立を強く促す事も忘れませんでした。

米国人が利口でなく単細胞だと言う例に挙げた2000年の大統領選やスクールバスのエピソード、米国人は英国に学べと説教した根拠が、全て新聞報道を鵜呑みにした誤解で、小沢氏が勉強家でもなく深い知識も持ち合わせていない事も、この講演から汲み取る事が出来ました。

最高栽まで争われた2000年の米国大統領選挙問題は、小沢氏の言う様な計算間違い等と言う単純な問題ではなく、地方と連邦、司法と行政、フロリダ州務長官の権限問題などに、旧式の投票機械を使った投票結果の読み方などが複雑に絡んだ問題でした。

米国社会のモラルが意外に高いとして例に挙げた米国のスクールバスのエピソードも、モラル問題ではなく交通法規で規定されているに過ぎません。

アメリカ人に会うと「君たちは単純過ぎる『英国から学べ』と説教している」と誇っていましたが、アメリカの憲法は、英国のマグナカルタに範を取とった修正10条の規定を冒頭に掲げ、信教の自由の侵害など当時の英国が侵した国民の基本的人権を権力から守る工夫をしたものです。小沢氏が首相になられたら、マグナカルタが制定された当時の英国は、臣民(国民)の信頼を失った王は、自ら退位するか処刑される風習であった事を忘れないで欲しい物です。

国家のあり方について、内田樹教授はその著「日本辺境論」のなかで「日本人は国家的危機に際会した時に、『そもそもなんの為にこの国を作ったのか』と言う問いに立ち帰りません。日本は理念に基ずいて作られた国ではないからです。日本には立ち帰るべき初期設定が無いのです。それに対して建国時から国家のあり方について明確な初期設定をしているアメリカは、国がうまく機能しなくなると初期設定に戻り『そもそも何の為にこの国を作ったか』と言う起源に戻れば良いのです。」と書いて居られます。

小沢氏の母校慶応大学の開祖である福沢諭吉が、米国で学んだ事を纏めた「独立自尊」も正にこの事を指しており、残念ながら単細胞の弊害はアメリカ人より日本人に多く見られるのが現実です。

菅氏が首相に相応しいか否かは別として、金銭に汚く、陰険な策士と言うイメージが消えない小沢氏が相応しくない事だけは確かです。�眷小平氏の様に、表に立たずとも卓越した指導力を発揮して文化革命でモラルを失った中国を、共産主義と市場経済を並立させて現在の繁栄に導いた様に、小沢氏は、官僚制度と自由主義と言う一国二制度に悩む我が国が歩むべき方向を指示できる、稀有な人物にも見えます。

方向は正しくとも、権力を持つとプロセス(これこそ民主主義の真髄です)を無視して、目的の為には手段を選ばず、金と権力を振り回す小沢氏を首相にする事は、日本の品格への挑戦です。小沢氏はこの際.闇将軍と言われても、権限を持たない指導者の地位に就いて欲しい物です。

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