PB後進国日本の現実(その1)

2010年09月14日 10:19

【横行する自称PB】

いまや衣食住のほとんどすべてのカテゴリーにおいてプライベートブランド(PB)が登場している。大手スーパーの総売上高に対するPB比率は年々上がり続け、高いところでは15%に近づきつつある。それでもPB先進国と較べればお話にならないほど低い。ドイツのディスカウンター・アルディの総売上高PB比率はなんと95%といわれるほどだ。


それはともかく、日本の各小売業はなぜしのぎを削ってPBを開発し、売ろうとしているのか? 不況感漂うなかで、消費者の低価格志向がいよいよ強まっており、ナショナルブランド(NB)より2割から5割も値段が安いPBが支持されているからにほかならない。

しかも、1990年代初頭の第1次PBブームの時と異なり、品質はNBに比べて遜色ない。いや、モノによっては明らかにNBを上回るPBも登場している。かつての「安かろう、悪かろう」のイメージは払拭されたと言ってもいい。

 では、なぜPBはNBよりも安くつくれるのか。小売業自らが企画し、仕様指定してメーカーに製造委託するPBは、いっさい中間マージンを取られない。売り場は自分たちが持っているので、販路開拓の必要がないし、NBのように宣伝広告費がかからない。しかも全量買い取りシステムなので、委託先メーカーはその分安く供給してくれる。

その結果、NBよりも2~5割も安い販売価格にもかかわらず、粗利益率は平均3割とNBを上回る。PBが小売業にとり”魔法の商品”と言われる所以である。

ただし日本の小売業がPBと称して消費者に提供している大半はまがいものの”自称PB”で、本来はメーカーとの共同開発商品、ダブルチョップと呼ばれるものだ。それは商品のラベル表示をみれば一目瞭然で、自称PBは、健康被害や不具合をもたらしたときの責任の所在を意図的に不透明にしてある。

 実際にコンビニで売られるPB商品を手にとってみると、著名小売業のブランドPBであるにもかかわらず、「販売者の欄にメーカー名が記載」されていて、製造者の欄には製造所固有記号が印字されている。つまり、本当につくられている工場はわからなくしてある。しかも「問い合わせ先」が小売業でなく、メーカーになっている。これではPBとはいえない。 (下記は自称PBの例)

PB悪い表示例

本来PBの販売者となる小売業は、製造委託者に対して、製品の仕様を決定、原料の履歴、生産工程、流通、販売までの全工程を管理しなければならない。何が起きても、販売者たる小売業が全責任を負わねばならないのが原則だ。(下記は正しく表記されているPBの例)

本来のPBの表示

【中国産毒入り冷凍ギョーザは生協のPB】

  PBを出す小売業が製造・流通過程を管理できていない場合に消費者がデメリットを受けた典型例が3年前の「中国産冷凍ギョーザ事件」である。犯人は拘束されたようだが、われわれが忘れてはならないのは、問題のギョーザ「CO・OP手作り餃子」が日本生活協同組合連合会(生協)のPBであったことだ。生協が輸入業者のジェイティフーズ(日本たばこ産業子会社)に丸投げし、中国の天洋食品につくらせた製品が事件を起こした。

残念ながら、その時点でメディアはPBについて正しく理解できていなかったと思う。PBがなんたるかを理解していれば、「本当に責められるべきは生協ではないか」と報じたはずなのに、天洋食品と一向に動かない中国当局を攻撃し続けた。

 本件の冷凍ギョーザが生協のPBであるということは、生協は販売者としてすべての責任を負わなければならない。これが基本中の基本である。

 生協に社会的責任があるのに対し、実質仲介役となったジェイティフーズは生協に対して責任があり、天洋食品はジェイティフーズに対しての責任があるという構図となる。

 生協がPBを名乗るならば、原材料の選定から生産、流通、販売に至る全工程をチェックしなければならなかった。そもそもジェイティフーズに丸投げしているのだから、その時点でPB失格だし、おそらく生協はPBがなんたるかも知らなかった。ただ名乗っていただけというのが真相であろう。

 そうすると、割を食ったのは中国ということになる。PBについて正しい認識があれば、日本の抗議に対して、「そうは言っても販売者は生協だろう。お門違いではないのか」と突っぱねることもできたはずである。

 日本、中国双方がPB後進国であったばかりに、まったく的外れな日中攻防戦となってしまった。いま当事者のなかでいちばん安堵しているのは生協だろう。生協は同様にPBに無知だった日本政府とメディアに救われたのだから。

 大手から中小まで、日本の小売業が出している自称PBが大手をふって臆面もなく売られている現実。これが、日本がPB後進国であることの何よりの証左だろう。ちなみに最高裁では2007年3月、「小売業が消費者に売った商品の責任は、最終的にその小売業が負う』との判決が出ていることを報告しておこう。

ノンフィクション作家 加藤鉱

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