PB後進国日本の現実(その3)

2010年09月28日 08:28

【小売業がコールセンターを持つ意味】

 メーカーにPBを製造委託する小売業には、販売者責任だけでなくPL(製造者責任)も生じる。なにか事件や不具合が起きたときには、消費者に対する説明責任を負うことになる。

 取材で何度か会った外資系スーパーの商品開発担当副社長はこう言う。


「安易にメーカーを信用していたらどうなるでしょうか。日本のメーカーは消費者をあれだけ裏切ったのです。メーカーに対して、小売業は協同責任があるわけです。けれども、PBを作らせている小売業の大半は、実際には自社で製造工程の管理ができないし、いわんや工場の検査も指導もできません。これではPB販売者としての説明責任はまったく取れませんよね。

 われわれはその上で、PB商品の問い合わせ先となっているコールセンターを非常に重視しています。オペレーションコストはかかりますが、コールセンターにはお客さんから細かい不具合情報、クレーム、あるいは改善提案などがダイレクトに届いてきます。これらはわれわれにとり、ある意味財産で、次の商品に必ず活きるわけです。

 こうした情報がメーカーのコールセンターに届いたらどうなりますか? メーカーはそれを使って、変な話、こっそりと仕様を変えてしまうかもしれない。そんなことをされてごらんなさい。われわれ小売業者は、アクシデントがあったときにトンチンカンな説明しかできなくなってしまう」

メーカーに対する性善説は通用しないのだ、と彼は断言した。

 要は、メーカー側としては自社のコールセンターを窓口にすることで、様々な画策が可能となる。悪い情報は秘匿できるし、PB発注先の小売業への対応はラクチンになる。そして実際には、問い合わせ先をPBの製造委託先メーカーにしている小売業が圧倒的に多い。これが日本の現状である。

先の副社長が指摘する。

「イギリスのテスコ、アメリカのウォルマート、ドイツのアルディといったPB先進国のトップ小売業たちは、いずれも販売者として自社名を表示し、連絡先電話番号は自社コールセンターになっています。

 ここが重要なのですが、少なくとも、小売業が自分のブランドで売るPBにメーカー名が入っていて、連絡先電話番号もメーカーとなっているケースは、おそらく世界では日本だけだということです」

 同じようなことを、欧州系穀物商社のベテランバイヤーも語っていた。

「欧米の消費者は、メーカー名が入っていたり、連絡先がメーカーのコールセンターとなっている商品をPBだなんて思わないですよ。

 ただし、製造者名を表示しなければならないカテゴリーは存在します。日本の牛乳やヨーグルトやビールなどのような日配品で、国内生産を義務付けられているカテゴリーです。海外から勝手にもってこられないようにするために、どこの工場でつくったのかを明示しなければなりません。これは国単位でまちまちですがね」

【PBのグローバルスタンダード】

また、先ごろ亡くなった戦後日本の小売業界の先頭に立って、チェーンストアづくりを指導してきた経営コンサルタント・渥美俊一氏もおそらく最後の著書となったであろう『チェーンストアの商品開発』のなかで自称PBを売る日本の小売業に厳しい注文をつけている。

「近ごろ商品の表装には小売業の社名を冠しながら、客からの問い合わせ先は『生産者(製造者)あるいは『販売元』として、メーカーあるいはベンダーの電話番号だけを表記している例が漸増している。これはもってのほかの反社会的行為と、私は発見のたびに強く弾劾している。また商品について不祥事が起こったときに、直ちに生産者側に釈明や安全証明を要求すると公表する一部小売業の態度は、右と同じく販売者としての責任放棄であり、商道徳としても避けるべき態度と理解してほしい」

 自称PBを売っている小売業も、生産しているメーカーもできるだけリスクを少なくしたいのだから、仮に事故が起きた場合どうなるか。おそらく責任分担で両者が揉めて発表が遅れ、被害が拡大する可能性が高まるはずだ。

 グローバルスタンダードに則る本来のPBであれば、販売者である小売業が全責任を負うわけだから、万が一のときは、他者に責任転嫁することなく、事実確認をして公表する。それがいかにダメージコントロールに有効であるかを、欧米の小売業は経験を通じて学んでいる。

 そのときに説明責任を果たせるための自前のコールセンター設置であるし、トレーサビリティの強化なのだと思う。説明責任を果たすことの重要性を、小売業トップがどこまで認識しているかだろう。

 日本のPBの現状は玉石混交の、玉が僅かしか見られない状態で第2次PBブームに突入している。1日も早く「ガラパゴス化」しつつあるPBを正しい方向にもっていかなければ、第2、第3の「中国産冷凍ギョーザ事件」が起きない保証はない。

ノンフィクション作家 加藤鉱

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