ブランディングにおけるペルソナのあり方- 小川浩( @ogawakazuhiro )

僕はビジネスパーソンとして、いくつかの社会的な顔を持って(使い分けて)います。こういうのを、ペルソナ、といいます。
もちろん全面に出るペルソナは株式会社モディファイというネットベンチャーの経営者としての顔ですが、その本業の中でも ソーシャルメディア周りのコンサルティングサービスを行うクリエイティブユニットであるオガワカズヒロの一人としてクライアントや著書の読者の方々と接するときもあります。

ブロガーとしての活動も長く、同時に十冊を大きく超える著書があるために、文筆家やジャーナリストであるかのように公衆の面前で紹介されることも少なくありません。
よく、芸能人が歌手であるときと俳優であるときの芸名を使い分けたりすることがありますが、最近ではあの気分が少しわかったりします。複数のペルソナを使い分けるときに、そのときの気合いや心持ちを切り分ける必要があるからです。

このペルソナは、個人・法人に関わらず、ブランディングのあり方に大きな影響を持つものです。


ソーシャルメディアを活用したCRMを自社のマーケティング戦略に組み込もうとする企業はだいぶ増えてきました。個人の自己実現のためのコミュニケーションツールとしてBlogやTwitterなどを使いこなす人も、もはや珍しくありません。だからこそ、どのようなペルソナを用いて発言し、態度を示していくのかを明確に定めることが重要になっています。

例えば企業は自社ブランディングのためにキャラクターを使うことが多いのですが(例:地方の町おこしのための ゆるキャラなど)、従来はビジュアルと比較的単純なペルソナの作り方でよかったのですが、ソーシャルメディアを使うとなると、より詳細なプロフィール作りが必要になります。例えば、宇宙人のキャラを用いた場合、ドライブに行きました、といった「つぶやき」をうっかりしてしまったとして、フォロワーから「免許持っているの?」「身長が3メートルなのにどんな車で?」などと突っ込まれてしまうことになるからです。最初はおもしろがってくれたとしても、そうした、ペルソナをよく考えていないことによる矛盾の発生は、徐々に嘘くささやいい加減さをユーザーに知らしめることになり、関心を減じさせてしまうことになるでしょう。

僕自身の例でもそうです。正直なところ、経営者、という立場での物言いをするときは、やはり自社の取引関係状況や業界内でのポジションなどを鑑みて発言することになります。大人なら(苦笑)当たり前の配慮、政治的な判断が必要になるのはいうまでもありません。しかし、ブロガーや著述家として、ある分野の(僕ならネット関連の)未来予測や現状分析をするのであれば、そうした配慮からは自由でなければならないし、過激ともとられる表現もエンターテインメント or より分かりやすいロジックのためには必要になったりします。
僕はよく、Appleという会社がテクノロジーの間引きをしている、と言っています。古くはフロッピーディスクをいち早く切り捨てたり、iPhoneにおける物理的キーボードを捨て去ったりした行為は、発表当時には相当の反発がありました。業界内の他社を間接的に攻撃することにもなるからです。いまでいえばAdobeのFlashをもはや必要のない技術だと断じているのも、そうした例の一つです。
しかし、その過激なスタンスこそが、彼らの革新性を作っています。

だから、僕もビジョナリーとして情報を発信しようと思えば、過激であると怯んだとしても正しいと思うことを明確に表現する必要があると思っています。そのためには、自分のペルソナを切り分けなくてはならないわけです。

実際、ブランディングというのはそういうものです。

例えば、僕は以前、BlogでマンダムVS.資生堂のワックス戦争の話を書きました。整髪料としてトップシェアを持つのはワックスであり、そのワックスのトップブランドはマンダム、二位が資生堂です。
資生堂はワックスの補助ではなく、ワックスの代替としてのスプレー型の整髪料FOGBARを発表し、「さよならワックス」というタグラインで勝負をかけ、確実にマンダムのショアを奪ってきました。言い換えると、自分たちのワックスの売上を減らしかねないことを知りつつ冒険し、リスクをとったわけです(だから成功した)。
マンダムも、FOGBARと同じジャンルの商品を出したものの二番煎じのため、対抗できず、苦戦したあげくに、今度はリキッドタイプのウォーターワックスという商品を対抗策として展開し始めています。彼らのタグラインは「やっぱりワックスでしょ」です(笑)。

つまり、ブランディングとはリスクをとっても、過激であっても、明確に自分のポジショニングを示すことです。
ソーシャルメディア時代には、さまざまなペルソナをつかいわけ、同時に一つ一つのペルソナを細心の注意を払って設計し、忠実にならなくてはなりません。

そうした努力なしにはソーシャルメディア時代のブランディングはできない。
企業で言えば、TwitterやFacebookなどによるコミュニケーションを行うのであれば、担当者の属人的な所作にならず、そうした自社の専用ペルソナをちゃんと設計する必要があることを認識するべきだと考えています。