ベトナム、そしてコネクティング・ノードとしての坂本龍馬

2010年11月10日 23:51

実は弊社のお客様の、

「オイッ!次はベトナムだ!」

の鶴の一声で、ベトナムで鉱物資源の開発案件に取り組むことになり、そちらのお手伝いに振り回されておりました。


現地入りする以前に聞かされていた内容と、現地入りしてからの全く違う現状にひっくり返りそうになりながら、なんとか合弁契約をまとめてきました。

とはいえ、「想定の範囲外」の展開に対する、自らの仕事ぶりへのイライラ。ホテルの会議室にこもりっきりの生活。「気分転換」と、外に出てみればスクーターの大洪水。日本語、英語、広東語、ベトナム語が飛び交うマラソン商談。ともすればボーッとしてくる頭に、ペルーで廃鉱銀山をつかまされてボーゼンとする高橋是清翁の若き日の姿(国広富之@TBSドラマ「熱い嵐」1979年放映 製作協力:日本銀行)のイメージが頭をよぎったりして、なかなか面白い経験をさせてもらいました。

合弁契約締結後、ヤレヤレと、帰途についたホーチミン・シティーの空港で開いた日本の新聞には次の記事が、

ハイテク製品に欠かせないレアアース(希土類)について、日本とベトナムがと共同開発に乗り出す。今月31日にハノイで開く日越首脳会談で合意する見通し。世界の生産量の9割超を握る中国が、尖閣諸島沖の漁船衝突事件を機に対日輸出を制限するなど、“チャイナ・リスク”が露呈する中、同国への過度の依存からの脱却を図る。合意を受け、日本の大手商社は開発を積極化する。

菅直人首相は、東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議などに出席するため、28日からハノイを訪問し、31日にベトナムのグエン・タン・ズン首相との会談を行う予定。

ベトナム北部には、液晶パネルや電気自動車などのモーターに必要なセリウムやジスプロシウムといったレアアースが埋蔵されている。共同開発での合意を受け、日本は探査や製錬などのノウハウを提供し、産出を支援する。

ベトナムでは、豊田通商と双日がレアアース開発を進めているほか、他の大手商社も参入する見通しとなっている。(10月22日付産經新聞)

やはり日本で成功する為には、否、失敗しない為には、官僚の後にくっついて、彼らの指示を仰ぎながら仕事をするのが一番リスクの低い生き方なのだな...と、疲れのせいか、いささかクサリましたが、所詮は「生き方」の違い、価値観の問題なのだと、胸をさすって香港で待つ家族の元へ旅路を急ぎました。

「おもしろきこともなき世をおもしろく」

すみなすものは

「寧為鶏口無為牛後(鶏頭となるといえども牛後となるなかれ)」

という心なのだと。

国益の為、当然の努力をしておられるお役人様に八つ当たりするのもオトナげない。当方としては、手中のプロジェクトをなんとかいち早く稼働させ、政策投資銀行の融資査定(当方のリサーチでは通常約6ヵ月強のプロセス)を経てヤットコサ動き出す大手プロジェクトに先んじ、先回り分だけでもせいぜいもうけさせてもらおうと、健全至極な経済活動を目論んでおります。

忙しくしていた10月はベトナムの他に、日本の某私立大学で教鞭をとる尊敬する先輩と共に、勉強会を立ち上げてみました。その第一回にはアゴラの執筆者の方にも数名参加していただいたのですが、お互い初対面の参加者がほとんどであったにもかかわらず、なかなかの盛会でした(自画自賛かもしれません)。

その勉強会の二次会で、元ベネッセ取締役の栢原伸也様と、大河ドラマ「龍馬伝」つながりで、幕末の人物群像に関してあれこれ意見を交わしていたのですが、栢原さんの

「10年や20年ぐらいの歴史の停滞でそう騒ぐな。」

という、骨太な大局観に触発され、根が横着者の私は、

「実は坂本龍馬って、同時代人の視点からすれば、それほど個性が強烈なヤツじゃなかったんじゃないかと思うんですよ...」

と、閃いてしまいました。

幕末の偉大な「個性」は、高杉晋作、久坂玄瑞や西郷のような人を指すのではないかと思うのです。所属する組織で重きをなし、人を魅了し、うがった見方をすれば、周囲の人を巻き添えにせずにはいられない。とても魅力的、かつはなはだ物騒な人々です。龍馬の至近距離にいた人間では、武市半平太がこのタイプでしょう。

しかし龍馬は「巻き添え」にするタイプではなく、「繋ぐ」タイプの人間でした。所属する集団の不分律や価値観を越えたところで、他の集団とも自由に交流することが出来る存在。以前も触れましたが、そうした龍馬の性格をかくあらしめたのは、土佐藩という所属組織の価値観ではなく、才谷屋という商家の価値観だったと思うのです。

そして、いま出現しつつあるグローバルな大競争世界においては、こうした龍馬のような「繋げる」性格が、日本人に必要とされてくるのではないかな、と思うのです。土佐人でありながら、脱藩して日本人としての視野を持てた龍馬のように、日本人でありながら、「世界」の視野を持てる日本人。(別に龍馬にならって、「日本」を脱藩しなくてもいいと思いますが。)

そんなわけで、第二回の勉強会では「脱・国内奴隷」というテーマを下敷きに、「世界という視野で日本を考る為の教育」というテーマでのディスカッションを企画しています。今から楽しみです。

オマケ
嵐のような10月を経て、11月はいまのところ、月初めの上海出張だけでことたりています。私がみるところ、中華圏における「尖閣騒動」報道もちかごろでは下火のようですが、当地香港のニュースで、日本の中国大使館、および各領事館に、脅迫状や、白い粉末が同封された手紙が舞い込んでいるという話題が流れていました。

ことの真偽はわかりません。しかしもし本当のことだとしたら、悲しいことです。

かつてはアメリカ太平洋艦隊の母港に殴り込みをかけた民族の末裔が、学校の下駄箱あたりでなんかゴソゴソやっているいじめっ子と同じレベルにまでなりさがったかと思うと、「国の衰亡」という現象を目の当たりにしたような、砂を噛んだような気持ちになります。中国政府のプロパギャンダと思いたいのですが、多分事実なのでしょう。

矢澤豊

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