IT規制制度改革専門調査会(体験談)

2010年11月16日 23:52

2010年11月16日、15時。合同庁舎4号館12階にある大会議室で、内閣府IT戦略本部内に設置された、ちょっと風変わりな規制改革会議が開催されていた。

中央に設けられた席に四方に向かい合って座る委員の顔ぶれは、パッと見たところ若いのが印象的で、大半は30代に見える。その背後、部屋の両端には、数10名ずつの傍聴者が座っているが彼らの前には、双方に設置されたテレビ中継カメラが2台、会議の風景を映し出している。

この会議の模様が放映されるメディアは、テレビではない。ドワンゴ社が運営する「ニコニコ動画」を通じて、インターネットで視聴可能になっているのである。

それを見る若いネットユーザーたちは、まるでスポーツ観戦に対して野次を飛ばすような感覚で、「IT規制改革」というややもすればシリアスになりかねないテーマについて、いつもと同じように脊髄反射的にウィットに富むコメントを投げかけては笑っている。

また、会議の進行も、通常の審議会の類とは変わっていた。官僚が受け持つ事務局が主導し、民間人の意見を参考に聞いて行くという方式ではなく、実質的に民間人である委員が自ら提出した資料をもとに、ときにはお互い反論をしつつ、議論を行ってきた。事務局は端の方に座り、存在感は薄かった。

議論するテーマについては事務局から提示された候補をベースに、事前にメーリングリストを活用して何往復かの議論がなされてきた。委員間の情報共有は、ハッシュタグ “#itreg” なるものを自主的に作って、Twitter経由でも少しずつ始まっていた。有志で別途集まって、朝食を交えながら意見交換もした。

会議には各自がノートPCを持ち込み、必要に応じてメモを取ったり、調べ物をしたりしながら、議論に参加していた。いずれも民間セクターであれば、驚くことのない日常的な会議の風景である。

しかし、今回大きく違ったのは、これが政府の専門調査会だったことである。事後的に議事録こそ開示されるようになったものの、基本的には情報開示は限定的にしか行われず、また事務局主導で台本通りの結論が得られるのが通常の審議会の類だったとすれば、本専門調査会はまったく別になっていた。ネットなどの技術をフル活用することで、30代の我々が普通に行っている仕事の進め方を導入したのである。

この会合の正式名称は、「情報通信技術利活用のための規制・制度改革に関する専門調査会」。IT戦略本部の司令塔となる「企画委員会」(関連省庁の副大臣級によって構成)の下部に設置され、その目的は「情報通信技術の利活用を阻むような規制・制度・慣行、サービスの仕組みそのものの在り方や運用等の洗い出しを行い、国民にとって利益となる形で抜本的に見直すために必要な調査を行う」こととされた。

委員席を見渡すと、顔ぶれが若いことに驚く。僕の左隣に座る慶應大学院講師の折田明子氏は、同じ1975年生まれ。その隣に位置するマイクロソフト技術標準部長の楠正憲氏は、ネット界の有名人。落ち着いた出で立ちにも関わらず、1977年生まれ。僕の右隣に座ったNPO副代表の石戸奈々子氏は最年少で1979年生まれだとのこと。

テーブルの向かい側には、ダボス会議のYGL(ヤング・グローバル・リーダーズ)の盟友であるオイシックスの高島社長。向かって左隣は茨木大准教授の後藤玲子氏。彼らはいずれも1年か2年上の先輩に過ぎない。

これら6名のメンバーの他は、高島氏の右隣に座っている東大の松村敏弘教授と、本調査会の会長を務める野原佐和子氏が50代、弁護士の森亮二氏が40代と3名が比較的年長になるが、政府の審議会の類(本会議体は「専門調査会」だが)としては、異例の若い顔ぶれである。

医薬品のネット販売に関する規制。個人情報保護の過剰とも考えられる規制。効率的な電子行政を担うために必要な制度整備。国税帳簿書類の電子保存のための規制緩和。ネット選挙や電子投票。フェアユース。デジタル教科書。検討すべきテーマも多岐にわたり、そして重要なものをいくつも含む。

これから何回かに渡っては、この専門調査会に出席して感じたことを書いていきたいと思う。

(次回につづく)

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岩瀬 大輔
ライフネット生命保険代表取締役社長

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