電子書籍の適切な値段とは?

2010年11月17日 10:13

電子書籍界隈もプレイヤーが少しずつそろってきて、以前に比べ、電子書籍の数も増えてきた。そこで改めて考えたいのが電子書籍の値段についてだ。今年の初め、キンドルバージョンの値段について、アマゾンと出版社マクミランがバトルしたのを覚えている方も多いだろう。このときはアマゾンが折れ、結局アマゾンもエージェンシーモデルといわれる方法をとることになった。これは、基本的に販売価格決定権を出版社側がもち、その売り上げのうち数十%を配信手数料としてアマゾンがとるというモデルだ。


この方法は、そもそもアップルがiPhoneのアップストアでアプリ業者に対しておこなっていたモデル。それを受けて、その後開始されるiBooksでも同様の方式をとるとの噂が流れ、アマゾンがマクミランに屈したという見方が大半だった。結局、予想通り、iBooksでもエージェンシーモデルが取り入れられた。

そうして数か月。現状ではamazon.comでも電子書籍の値段は若干上がったように見受けられる。Kindle storeでの有料電子書籍のトップ10の値段は、現在1位のブッシュ前大統領が書いた『Decision Points』(George W. Bush)と同じ11.99ドルのebookが5冊、11.68ドル、9.57ドル、7.20ドル、6.40ドル、4.99ドルとなっている。iBooks storeではトップ10は、1位の『Cross Fire』(James Patterson)が14.99ドル、以下4位までが14.99ドル、5位、6位の書籍が12.99ドル、7位、8位が9.99ドル、9位、10位が12.99ドルとなっている。

つまりアメリカでは、売れている電子書籍の値段は軒並み10ドル以上前後となっているのである。アップストアでの10月のiPadアプリの平均価格が4.97ドル、iPhoneアプリでは4.03ドルだったという(watchtvonmypconline.com調べ)から、アプリの値段よりも電子書籍は高くてあたりまえということだろうか。いずれにしてもエージェンシーモデルは出版社主導の値付けなので彼らのビジネスを考えてのものである。

翻って日本国内ではどうだろうか。まだKindle storeでもiBooks storeでも日本語のサービスがないのでアップストアのブックカテゴリーから漫画と辞書を除いた電子書籍のトップ10を調べてみると、いわゆる“もしドラ”『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』(岩崎夏海)が1位で800円、2位以下は、230円、350円、350円、600円、350円、350円、230円、700円、800円……とこれまた軒並み1000円以下なのである。紙の書籍の半額以下というものもある。もはやバーゲンセール状態!

日本でも電子書籍の値付けは、著者と相談するとしても出版社主導であるからアメリカと同様なはずである。しかしこのように安い値付けはなにを意図しているのであろうか? アゴラブックスでもまだまだ発行タイトルの数は多くはないが総じて値段は安い。これはマーケットを考慮しての値付けではあるが、電子書籍出版社&書店の経営を考えると相当に苦しいというのが実情である。

今後電子書籍を普及させるためには出版社がしっかりとビジネスできなければ続かないはず。しかし日本の場合、現実的には電子書籍制作の原資は紙で稼いでいるのである。だから安い値段をつけられる。つまり紙の書籍と電子書籍はセットなのだ。このような値付けが続く限り、読者にとってはうれしいだろうが、どこかでだれかがコスト構造のブレイクスルーを起こさなければ、電子書籍だけのビジネスの発展は限りなくゆるやかなものになるであろう。

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