社会を変えるのは就活デモではなく、ビジネスだ

松本 孝行

 11月23日の勤労感謝の日、北海道や東京、愛媛で就活くたばれデモが行われました(参照)。就活については脳科学で有名な茂木氏も異論を唱え、アゴラでも新卒一括主義についてのテーマで議論がなされるなど、大きな社会問題となっています。就職内定率が過去最低というニュースがあり、学生もかなりナイーブになっています(参照)。

 しかし、私は学生がデモと言う手段を選んだことを残念に思います。なぜビジネスで社会を変えてやろうと思わなかったのか、と。


 バングラディッシュにグラミン銀行というものがあります。もうかなり有名になった、ムハマド・ユヌス氏が設立したマイクロファイナンスの銀行です。このグラミン銀行はバングラディッシュの農村部、特に女性たちの自立を促し、貧困の解決に寄与しています。その効果を世界も認め、マイクロファイナンスは世界中に広まりました。

 これは一つの例ですが、なぜムハマド・ユヌス氏はデモを行って貧困を解決しようと思わなかったのでしょうか。バングラディッシュ政府に対して、貧困解決を叫ぶという方法もあったでしょう。なぜマイクロファイナンスというビジネスを用いて貧困を解決しようと考えたのでしょうか。

 もっと身近な例を考えてみましょう。孫正義氏はソフトバンクを立ち上げて、日本の通信環境を劇的に変えました。彼はなぜ、デモによって通信環境を変えることを選ばなかったのでしょうか。国やNTTに向かって「高速ブロードバンドを普及させろ!」というシュプレヒコールを上げなかったのはなぜでしょうか。

 ユヌス氏にしても孫氏にしても、もし彼らがビジネスではなくデモによって社会を変えられた、という風にみなさんは想像できるでしょうか?私には想像できません。むしろデモをやらずにビジネスを推進したからこそ、バングラディッシュは成長著しい途上国として見られるようにまでなったのではないでしょうか。そして、日本ではブロードバンド網が整ったのは、ソフトバンクの懸命な企業努力による部分が大きいのではないでしょうか。

 今回の就活デモも、なぜビジネスで就活を変えようと言う方法を選ばなかったのか、残念でなりません。大学生の時ほど自由に時間が使えるときはありません。資金はないかもしれませんが、就活を変えたいという熱い思いに資金を出してくれる人もいたかもしれません。特に就活については、デモよりもビジネスで社会を変える方が有効ではないか、そう思います。

 私は、ビジネスは社会を変えることが出来る庶民が持つ最大の武器だと思います。

 (就活及び就活デモについては私のブログTwitterでも議論を広めて頂ければ幸いです。)

コメント

  1. harappa5 より:

     ビジネスで変わらないと思います。だから、ビジネスで変えようとする意見は、間違いです。
     第一の理由は、社内にいる中高年の社員の雇用を守るために、新卒採用の抑制が計られているからです。これは、ビジネスで打開できますか?
     第二の理由は、企業採用が、新卒一括採用になっている事です。つまり、新卒を逃したら、チャンスはありません。これは、ビジネスで打開できますか?
     社会を変えるために必要な事は、声を上げ、社会を変えるように「声」を高める事です。「ビジネス」ではありません。

  2. 市民A より:

    なら、なぜあなたは金をださない?既得権を守る事に汲々としている強欲老人だからではないのか?くたばれ!!!

  3. ikamet より:

    控えめに言っても理想論の域を出ていませんね。

    現在の就活のシステムは、それが企業にとって合理的(優秀な人材を他より早く獲得する)であるから、現在のような形になっているのであり、企業にとって明確なメリットがない以上、それをビジネスという点から変えていくのは難しいと思われます。

    企業にとっては合理的な行動でも、教育機関には弊害を生じさせるという一つの合成の無謬なんでしょうが、両者の利害は対立しており、そもそも土俵が違います。
    ですのでこれを変えるのであれば(私は反対ですが)、政策によって規制をかけざるを得ない訳です。

    ならばデモという民主的手段によって訴えていくという学生のやり方は、「デモやってる暇があるなら就活しろ!」というそもそもの部分はあるにしても、一つの「合理的」な方法かと思います。

  4. itsukiranru より:

    「ナイーブ」→「ナーバス」 ですね。

    仰ることはまさにその通りです。
    慣行を変えるにしても、なぜ企業がそこまで新卒厳選採用にこだわるのか(結局は雇用規制の問題に行き着くのですが)、その根本から解決しようという意思表示でなければ、結局は何も言っていないのと同じことですから。

  5. デモで訴えてなんとかなるならば何十回でもデモをやればいいよ。

    こういう人々は就職したところで、すべて誰かのせいにしながら生きていくと思うよ。

  6. hiranarihashira より:

    さすがに賛成しかねますね。

    社会を変えるためにはビジネスが有効だというのはその通りだと思いますl。ですがそれはデモに効果はないということにはなりません。
    さらにこの現状を変える手段として有効だとされているのは雇用の流動化ですがこれをさまだげているのは日本の司法であり、つまりは政治家によるものです。
    そして政治家に訴えるために必要となってくるものは国民の声であり、今回のデモはそれを伝えるために有効な手段の一つだと思います。

    また国会は動きが非常に遅いですが、一つの会社が誕生し、社会を変えるためにはさらに長い期間が必要だと思います。例にあるソフトバンクも芽が出るのに10年20年と長い年月がかかっています。5年もほったらかしていたら無職の学生たちが大量に量産されていくでしょう。

    長々と書きましたが要は若者全体でデモをして意思を政治家たちに伝え、制度を変えてもらうのが若者たちにとって一番手っ取り早いんです。
    それと比べると起業はリスクは高く事業が成功する確率も低いし、そもそも就活を変えることで飯を食っていきたいわけでもないからメンドクサイってのが本音でしょう。

  7. bunmei_toyo より:

    それは、デモをしたっておそらく何も変わらないと思いますが、そのはけ口を新たな仕事に結びつけるとしたら、ますます大学が就職のための場になってしまいます。企業としては、その方が楽で良いかもしれませんが、就職することが目的で、お偉い教授先生方の給料を親に払わせるのはおかしい。

    一方で、こうした選考をしないとまともな社員を取れないという現状もマズイ。最終的には、まともな人間にするための教育がしっかりしていなきゃ、デモをしようとビジネスを起こそうと根本の解決にはならないでしょう。

  8. ksmethod より:

    ビジネスで就活を変えるって具体的にどういうことか意味不明です。
    デモをやっている人は、就職したいのであってビジネスを起こしたいわけではありません。
    それに、ビジネスを起こす人と企業に雇われる人のどちらが偉いというわけでもないでしょう。

  9. 松本孝行 より:

    >>harappa5 さん
    ビジネスで変わるかどうかは私も100%変わるとは言えません。それはやってみないとわからないでしょう。ただ、確率は高いと思います。
    現在の就職環境を整えてきたのも就職ビジネスですし、新卒採用を進めてきたのはやはりビジネスです。それを変えるのは政府というよりもさらに良いサービスを提供するビジネスではないでしょうか?
    声を高めるとおっしゃいますが、その後って社会を誰が変えるんでしょう?
    政府でしょうか?企業でしょうか?それとも就職情報会社でしょうか?
    どうもそれだと他人行儀な気がして当事者意識が薄いような気がしますが…

  10. 松本孝行 より:

    >>市民A さん
    私、27歳なんですが初めて老人って言われました(笑)
    早く年金がほしいですね~。

  11. 松本孝行 より:

    >>ikamet さん
    少し論点がぶれますが、この就活デモの本質は「大学生に勉強に集中させろ」なんでしょうか。それとも「就活のシステムおかしいだろ」なんでしょうか。
    おそらくikametさんは前者の意味でとらえておられると思いますが、私はそれも規制で何とかするという考え方は反対です。
    規制によって卒業するまで採用活動をしてはダメと言う風にすると、企業はさらにグローバルに人材を採用するでしょう。採用に規制がある国よりも無い国で採用したいと思うのではないでしょうか。

  12. 松本孝行 より:

    >>itsukiranru さん
    訂正ありがとうございます。
    アプローチの仕方の問題ではあるのですが、今の政治などを見ていると、どうも期待できないという私の気持ちが、ビジネスに向かわせているのかもしれません。
    おっしゃるように根本的に解決する気持ちは一番重要だと思います。

  13. 松本孝行 より:

    >>きちでんせいけん さん
    正直、彼らの今後を考えるとぜひ今回の行動力を生かして、既存の就活ルートに乗らないで生きていってほしいな、と思います。

  14. 松本孝行 より:

    >>hiranarihashira さん
    う~ん、そこまで政治に期待している若者ってどの程度いるのでしょうか?政治に信頼があってこそ、その理論は成り立つと思うのですが。
    どちらかと言うと私は政治に期待していませんし、だからこそビジネスの方が早いと考えています。
    それに制度を変えてもらうという他人行儀な感じがあんまり好きではありません。やるなら自分のことは自分で変えたいと思います。

  15. 松本孝行 より:

    >>bunmei_toyo さん
    大学と就職の関係までは踏み込んでいないのですが、大学で一切就職のお世話をしないと言う大学は世界で普通なんでしょうか?大学から企業という移行期が存在するわけですし、その移行期を大学が担うというのは普通に納得がいくと思います。
    逆に企業にその移行期を担ってもらうというのもアリでしょうが、移行期間を大学に担わせている国の方に企業は重点を置いて採用すると思うので、結局日本人学生にとってプラスにならないのではないでしょうか。
    つまり、大学は就職のお世話をある程度することから逃れられないのではないか、と思います。

  16. 松本孝行 より:

    >>ksmethod さん
    いえ、私は別に起業する人=偉いともなんとも言っていませんが…
    デモをやっている人たちは就職したいのですか?ならデモをやるよりも就職活動を続ける方がいいと思いますが…
    デモをやったのは就活を変えたいという使命感・熱い思いがあったからではないのですか?

  17. agora_inoue より:

     松本さんへ。
     「就職させろ」という人に対して、「起業してはいかがですか?」と助言するのは、マリーアントワネットの「パンがなければケーキを食べればいいでしょう」発言を思い出してしまいます。
     松本さんがどんな職業体験をしたか存じませんが、医師のように規制で新規参入が制限されていたり、社会保険によって支払いが保証されている世界ですら、新卒でいきなり開業する人なんかいません。資金的、技術的な問題もさることながら、「業界事情」がわからないので、開業なんてできないのです。
     弁護士だって同様です。あの世界は、医師よりもずっと独立志向が強いけれど、ソクドクの成功例はほとんどない。やはり、最初はどこかに所属して、ノウハウを蓄積するのです。
     どういう分野に需要があって、自分は技術を身につけたら需要に応えられるのか、顧客(患者)とはどうつきあえばいいのか、いかなる設備が必要なのかなどの泥臭い情報は、どんなに学費の高い医学校でも教えてもらえません。
     マーケットリサーチは他人にアウトソースできるものではなく、自分が肌身で感じるしかありません。
     つまり、就職すらできない状況では、起業は自殺行為以上でも以下でもないのです。

  18. harappa5 より:

    松本孝行さんへ

     御本人から返事を頂けるなんて、恐縮です。私の意見を具体的に説明します。
     第一に、今の雇用慣行は、企業・労働者・就職希望の学生の三方にとって、不合理なシステムである。
     理由は、企業から見ると、景気・繁閑期に関係なく、人を生涯雇い続けなければならない現代のシステムは、無理がある。そこで、雇用を、派遣・非正規・海外へ移そうとする訳です。
     労働者から見ると、生涯同じ会社にロック・インされるシステムは、好き好んで認めた結果ではない。例え、このシステムが嫌でも、システムのせいで、転職市場が大きくならない。そこで、今の会社にしがみつく。しがみつかれると、転職市場が大きくならないから、今の会社にしがみつく・・・・という悪循環に陥るとみています。
     就職活動の学生から見ると、新卒一括採用システムである以上、学業をほっぽり出してでも、やらざるを得ないし、失敗のリスクが怖いから、大企業・公務員に就職したがり、結果として、中小企業は、人を雇いたいが、学生は関心が無い。大企業の場合、人が殺到するから、あぶれる人が出てくるわけです。結果として、合理的な人材の分配が行われない。内定率の低い理由は、不況、不合理な人材の分配ではないか、と思います。
     不合理なシステムが維持される理由は、厳しい雇用システムを社会に強要する過去の判決にあると思います。そこで、新たな法律を作り、三方が支持されるシステムへ変えるべきと思います。

  19. harappa5 より:

    だから、どうすれば良いか?

    >声を高めるとおっしゃいますが、その後って社会を誰が変えるんでしょう?
    政府でしょうか?企業でしょうか?それとも就職情報会社でしょうか?
    どうもそれだと他人行儀な気がして当事者意識が薄いような気がしますが…

     第一に、雇用システムが、社会に有害をもたらしていると、一般的に認識してもらう。第二に、雇用システムを変えるように、政治家に要求する。第三に、政治家が労働市場の流動化の法案を作る・・・という形になると思います。
     だから、問題は硬直的な労働市場なのです。企業の活動で変化できる話ではありません。
     そして、この問題は、積極的な社会運動を前提にしています。「他人行儀」ではありません。

  20. hiranarihashira より:

    >>14 松本孝行さんへ

    お返事ありがとうございます。

    ビジネスが早いか政治が早いかは実際にやってみるまでわからない部分があるのでまぁ横に置いておいてw

    仮に起業する場合、起業する理由は何でしょうか?それは現在の就活制度を変えたいからでしょう。
    ではなぜそう思ったのでしょうか。それは多くの学生は就活がイヤで、さらに就職できないからだと思います。

    そうなると
    就職できない→就活はおかしい→就活制度を変えたい→起業→あれ?就職できた→別に就活制度を変えなくても飯が食っていけるならこれで良くね?

    となりませんかw?もちろん仮定の話ですが……

    就活制度を変えることで社会がよくなるという確固たる意志がある人もいると思いますが、その場合松本さんがおっしゃる起業というアプローチと、政治家になるというアプローチが存在すると思います。
    この場合、その人はどちらを選択するのでしょうか。つまりこの問題はただの慣習で市場の構造の欠陥のためなのでしょうか、それとも司法がからみそうならざるを得ないためなのでしょうか、という新卒一括採用ができた理由に依存すると思います。

    個人的には司法の問題だと思うので自分が政治家になって変えたほうが手っ取り早いということになるのかな。

  21. 松本孝行 より:

    >>agora_inoue さん
    それはちょっと突飛な理論ではないかと思います。
    さすがに医者のように命を直接扱う職業と、一般の求人広告・人材ビジネスを一緒に扱うことはできません。それにちょうど数年前に日本でもベンチャー企業を立ち上げた人たちは一度就職してからでなく、学生から起業した人もたくさんいました。
    また、私は「就職させろ」という人に「起業したらどうか?」と言っているのではありません。「就活を変えたい」と言う人に「ビジネスという手法の方がいいのではないか?」と言っているのです。就職させろと言うのであれば、そのまま就活をしている方がいいでしょうが、彼らは就活に異議を唱えるために立ち上がっているのです。単純な就職を希望している就活生とは一線を画していると考えないとダメでしょう。

  22. 松本孝行 より:

    >>harappa5 さん、hiranarihashira さん
    おっしゃることはわかりました。
    ぜひそのお考えをこのアゴラにて投稿していただけないでしょうか?そうすることで議論が盛り上がり、就活について少しでも考える人が増えると思います。そうなれば、就活デモをした彼らのためにもなります。
    ぜひよろしくお願いします。

  23. はんてふ より:

    そもそも「社会を変えてやる!」という啓蒙的な動機を
    持っている人も、実際そうそう居ないような気もします。
    何というか、多くの人は孫正義氏のような高邁な人生は
    無理です。人生が破綻しますから。

    欲があればよく学び、いい仕事に就く。
    そういう旧帝大的な「明るい資本主義」を喪失したって
    ところも大きいでしょう。
    今更論じる事もないような、単純な事実というか・・・。

    実際、「地域経済のために」「社会のために」というような
    素晴らしい動機だけでは、誰しも続かない。
    そういう啓蒙的な動機付けだけの、職業指導も問題なんじゃ
    ないかなあと漠然と思います。

  24. 次元袋 より:

    就職活動をする学生を食い物にするビジネスが今の惨状を生んだ一因でしょう
    そのビジネスをぶっ壊すのがデモの力では?