就職活動時期を早めるという発想 ‐ 宮本 佳昭

2011年01月17日 18:40

世界金融危機が起こり、日本全体が不景気と騒ぎ出し、本格的に就職氷河期到来と言われた2年前に筆者は新卒で就職活動をしていた。「時期が悪くて可哀想だ」と周囲は言っていたが、自分としては初めての就職活動なので、体験的な比較材料を持ち合わせていない。周りの悲観的過ぎる反応に苛立ちすら覚えた。


社会的に何の実績もない自分を企業が採用するかどうか、経営者の立場で考えた時、答えはもちろん「No」である。本当に企業が欲しいと思える能力や実績を持ち合わせている学生は、ほんの一握りであって、完全なる出来レースであり、その他大勢は、椅子取りゲームをして内定をもらっているようなものだ。

ただ、社会的な実績を持っていなくても、夢や根拠のない自信は多くの若者が持っていて、「実績はないかもしれないけど、俺たちはやれるんだ!」といった気持ちがデモを起こしている就活生にある気がする。彼らに必要なのは実績と社会的視点からの自分を把握することであって、それを解消する手段を筆者は逆に就職活動時期を早い段階から始めることだと思っている。

「大学は遊ぶところ」「就職なんてどっか適当に受かるだろう」と考えている学生は、ほとんどの大学生活を時間の浪費に使い、面接に落ち続けることで、自分の無力さに気づき始める。もう少し早く、自分の社会での無力さに気付いていたら大学での過ごし方も変わってきたのにと思う。そうならないためにも一刻も早く、自分の生かし方を見つけたほうが良い。そして、1年生であっても採用されれば就職できるようにすればよい。もちろん学校は中退扱いではなく、休学扱いだ。企業側は好きな時期に採用活動ができるし、数カ月働いてもらって、気に入らなければクビにすればよい。これによって、企業と学生側のミスマッチを防げるし、学生側も安心して大学に戻ることができる。
学生は4年間じっくり勉強して就職活動をすることもできるし、とりあえず就活をしてみて、やりたいことを見つけていくということも可能だ。

この策は根本的な、雇用の流動性を増やすことには寄与しないが、正社員を採用するのに億劫になっている企業にとっても、約半年くらいの就活期間で一生働く場所を決めなければならないという学生のプレッシャーからも開放できる。新人教育のコストがかかると思う企業は従来通りの4年に上がる前の3年のみの募集をすればよい。つまり、大学生の採用時期を市場が決めるということだ。株価も物の値段も市場が決定し、適正に保たれている。採用時期もこれ以上に最適に調整していくものはない。

よく、就活生は大企業ばかりに目がいって新卒を欲しがっている優良な中小企業を見つけ出せないミスマッチが存在すると言われている。実はこの言い分は大人だけが言っているもので、就活生はそんなことを微塵も思っていない。今年成人を迎えた若者がなりたい職業第一位は、公務員である。そして就活生が面接を受ける企業について話す話題は、住宅手当が何万出るとか、残業代が出るかとか、ブラック企業かどうかといったことがほとんどなのだ。やりたい仕事をするといったことは建前であって、将来の生活が安定していれば多少つまらない仕事でもいいといった本音が根底にある。

この根底を覆すために大事なのは世代間格差、将来の漠然とした不安を無くすことであって、いくら新卒の就活生の環境だけを良くしたところで現状を改善することはできない。大企業に就職すれば将来安泰といった図式が崩れ始めている今、将来の安定を考えずに挑戦するインセンティブを若者に与えない限りは、日本は衰退の一途を辿るだろう。
(宮本佳昭 会社員)

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