ダボス会議体験記 (1)

2011年01月18日 15:15

「ダイスケ、来月のダボス行く?市内にアパート借りたから、シェアできるけど」

昨年末、一通のメールが届いた。差出人は、中国で “Qifang“なる大学生向けローンを扱うP2P(ピア・ツー・ピア)サイトを営む社会起業家のCalvin Chin。アメリカで生まれ育った中国人の彼はイェール大学を卒業後、ウォール街で働いたのち、中国に移住して「すべての大学生に教育の機会を与えたい」ということで、学費を求める大学生とローン先を探している個人を結び付ける、このサービスを立ち上げた。ちなみに、”Qifang” とは毛沢東の「Bai Hua Qi Fang」「100の花を咲かせよう」という言葉から来ているそうだ。


僕たちはいわゆる「ダボス会議」を運営する世界経済フォーラム(World Economic Forum、WEF)の若手コミュニティである、ヤング・グローバル・リーダーズ(Young Global Leaders、YGL)の仲間である。

毎年1月末にスイスの保養地で開かれるこの会議には、世界中から2千名を超える大企業の経営者や政治指導者、学者やジャーナリスト、そして少数ではあるが宗教家やアーティストが集まり、世界の諸課題や将来の在り方について議論を重ねる。

この「本会議」に加えて、毎年世界各地で地域会議が行われる。例えば、去年のYGL総会は5月、タンザニアで行われたアフリカ会議に合わせて行われ、Calvinともここで出会った。東アジア会議は6月にベトナムはホーチミンで行われ、今年はインドネシアで開催される。また地域会議とは別のいくつかの会議が主催されており、例えば “Global Redesign Initiative”と名付けられた会議がドバイで開催され、世界から有識者が1千名近く集まった。

我々「YGL」は地域会議にはすべて参加が認められるものの、ダボスで行われる本会議には全員が出席できるわけではなく、前年の活動実績等に応じて事務局によって参加者は選定される。そして、会議開催期間中はホテルが混み合うため、ダボス市内での宿泊は許されず、30分ほど離れたKlostersという町での宿泊が義務付けられている。

そこで、何度か会議に参加し、慣れている人たちは、直接インターネット等で地元でアパートを探して、数名でシェアするということをやっていた。これによって往復1時間の移動を避けることができ、長靴をはいて雪の中をザクザクと歩いて会場に行き来することができるわけだ。

「あと一人、ルームシェアに興味あるから聞いてみるから、最終確認するまで少し待って」

Calvin からのメールはそのように書かれていたが、すぐにもう一通、メールが送られてきた。

「モザンビークのErikも一緒にシェアしたいって。ベッドルームが一つしかないから3人だとちょっと狭いかもしれないけど、ま、学生みたいなノリで楽しそうだからそれもいいかなと思って」

1週間だけルームメイトとなるこのErik Charas にはまだ会ったことがなかったので、早速グーグルで検索してみた。モザンビークの社会起業家に投資しながら、自身は40万部を超える同国最大の新聞を発行しているとのことだった。

彼がインタビューに答えている動画が見つかったので、視聴してみると、次のように語っていた。

「僕の国では新聞はパン7、8個の値段がするため、多くの人は新聞にアクセスできない。しかし、情報が安価で得られなければ、健全な民主主義社会は成立しない。そこで、僕はこの無料の新聞を広めたいと思った」

ビデオを見て感心していると、すぐに受信トレイにメールがもう1通届いた。Erik からだった。

「俺はアフリカの太っちょだから、ちょっと多めに払ってでもベッドルームもらった方がいいかな。eh eh」

ダボス会議はときには「秘密会議」のように報じられることが多いが、実際には内容のほとんどがマスコミにオープンになっており、最近ではネット配信されている(例えば、去年の会議内容はこちらで見ることができる)。

もちろん、常連となる経営者たちは本会議で行われるセッションとは別にアポを取り、ホテルの部屋で会談を行うようだ。これほどまでのメンバーが一堂に介する機会はそうはないので、商談をする上でもとても効率がよいのだろう。

来週、1月26日からダボスの本会議が始まる。これから数回に渡って、実際に参加したダボス会議の体験談について書いてみたいと思う。

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岩瀬 大輔
ライフネット生命保険代表取締役社長

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