中東問題に日本はどう対応すべきなのか

2011年02月06日 10:49

チュニジアでのジャスミン革命、それに続く、エジプト、イエメンでの反政府運動に対し、アメリカのオバマ大統領、クリントン国務長官は、タイミング良く、明確なメッセージを出している。

それにより、当事国である、エジプト、イエメンのみならず、世界がアメリカの方針を理解し、結果、金融市場、株式市場、商品市場そして為替市場が落ち着きを取戻し、全世界が此の恩恵を享受している。

アメリカに拠る内政干渉と批判する識者、論者もいるが、自分も市場の恩恵を受けて居る事をすっかり忘れている。

両親の庇護の下に暮らす反抗期の中学生が、親に反抗しているのと同じ低レベルな、実に幼稚な話と思う。

ヨーロッパ諸国は基本アメリカに追随。普段、何かと口喧しいロシア、中国も今回は流石に目立った動きを控えて居る様である。

当然の事であろう。中央アジアに、イスラム原理主義の火種を抱えるロシア、そして、状況に拠っては何時爆発しても可笑しくない、新疆ウイグル自治区を抱える中国は、固唾を飲んで、アメリカの手腕を期待しつつ、中東動乱の成り行きを注視しているに違い無い。

翻って、日本はどうであろう。大変残念な話であるが、世界に向けて何のメッセージも出せて居ないのでは無いか。

21世紀に日本が繁栄を続ける為には、軍備で無く、こう言った所謂「ソフトパワー」を使い熟せねばならないのにである。

言うまでも無く、日米同盟を締結する日本は対米関係からも、或いは、中東やインドネシア、マレーシアと言った、イスラム国家で活動する日本企業を支援し、駐在員やその家族の安全を保障する意味でも、中東問題をどう捉え、今後、どの様に対処するつもりなのか、明確なメッセージを出す必要がある。

チュニジアのジャスミン革命以降、ネットには荒唐無稽、笑止千万な記事、エントリーが溢れている。多くの読者は、何と無く判るが良く判らないなと言う所では無いか。

中東から遠く離れた日本に取って、理解すべきは、最低、第二次世界大戦後の中東の歴史と1978年の「キャンプデービッドの合意」とその意味であると思う。

第二次世界大戦後の中東は、正に戦争の連続であった。読者の皆さんも中東戦争と言う言葉位は、聞いた事があると思う。

中東の戦争状態は、「キャンプデービッドの合意」に拠り終結し、以来、極地戦争と、イラクに拠るクエート進行、アメリカに拠るイラク占領を除けば、基本中東の平和は維持されている。

忘れて成らないのは、「キャンプデービッドの合意」の立役者は、アラブの盟主エジプトのサダト大統領であり、サダト大統領が合意の3年後、イスラム過激派に所属する青年将校により、暗殺されたと言うエジプトの血の歴史である。

サダト大統領は自伝でも、自分が、暗殺に拠り死ぬであろう事を予言しており、多くの親しい友人にも生前告げている。日本でも、軽々しく政治生命を賭して等と言う、薄っぺらな政治家が居るが、サダト大統領は自らの命と引き換えに中東和平を実現したのである。

ムバラク現大統領は1975年以降、サダト大統領を副大統領として補佐しており、サダト大統領の暗殺後、後継者と成った。サダト大統領が自らの命と引き換えに成し得た、「キャンプデービッドの合意」の意思を引き継ぎ、親米路線に拠る、中東和平達成の道を選択したのは当然である。

そして、更に一点、「キャンプデービッドの合意」に賛成したイスラムの国は無く、エジプト国内のイスラム過激派組織、イスラム同胞団も当初より大反対であったと聞いている。そこに、政権安定の為の、独裁の必要性があった様に思う。

アメリカが、長期に及ぶムバラク独裁政権の問題に気付ながらも、有効な手が打てなかった背景は、此の辺りにあるのでは無いだろうか。

国際社会が、イスラム国家や、エジプトのイスラム同胞団に問うべきは、「キャンプデービッドの合意」を反故にして、如何なるシナリオで中東和平を達成する積りなのかと言う具体案である。

多分、「邪悪なイスラエルは世界地図から消滅すべき」の如き原理主義と思うが、此れでは、イスラエルは当然として、アメリカも納得出来ない。

彼らが錦の御旗として掲げる「アラブの大義」もサダムフセインのクエート侵攻に拠り、既に色褪せた。アラブ諸国も、所詮自国の利益の為、行動しているだけでは無いか。

厳しく言えば、「アラブの大義」を掲げた、反米、反イスラエル運動の多くは、統治能力の不足や、経済政策の未熟から生じる、国内の貧困問題や、庶民の不満の矛先を、政府では無く、アメリカ、イスラエルに無理やり向けさせているだけの話では無いか。

今回の、エジプトでの反政府運動に関する、BBCの報道を読む限り、反米、反イスラエルのスローガンは見られない。古く成り、使い物に成らなく成った、ムバラク政権の退場を即しているだけの話である。

軍が銃口を向けない理由も此処にあるし、「イスラム同胞団」の限界も此処にある。

エジプトの将来は、エジプト国民が決めるべきと思う。しかしながら、観光立国であり、スエズ運河からの収入を多とするエジプトが西側世界から孤立する事は、賢明な選択とは思えない。

ムバラック大統領の即時退任と、穏健派長老による暫定政権を経て、9月に選挙で民意を問い、中東の平和と経済繁栄を目指す、新たな政権樹立がベストの選択と思う。

扨て、本題の日本政府の出すべきメッセージである。簡潔、明瞭で、誰からも反感を持たれない事が重要である。下記でどうであろう。

1.日本は、中東諸国の平和と安定並びに経済発展を期待する。

2.「キャンプデービッドの合意」を当初より評価し、中東和平に向けての、エジプト、イスラエル、アメリカそして中東関係国の努力を高く評価する。細く棘の道であるが、現実的にこれ以外の中東和平への道は無く、日本としては此れからも支援を惜しまない。

此のメッセージは中東問題に苦慮する、同盟国であるアメリカにもきちんと説明し、対米支援も日本から提案すべきであろう。それが、同盟国と言うものでは無いだろうか。

外務省も、ワインパーテイーの如き、毒にも薬にも成らない文化交流に現を抜かす暇があるなら、少しは仕事をしてはどうであろうか。

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