国家について

小幡 績

アゴラで、平和ボケ論争が行われている。私は、大蔵省時代、同僚に、朝日の腐ったの、と呼ばれ、極左扱いを受けてきたが、世間的には中道だと思う。

池田氏の口調は過激で、暴力装置というのも、学術用語ではあるが刺激的で、軟弱な私として違和感はあるが、事実としては、池田氏の認識が正しいと思う。

別の言い方をすれば、国民国家というのは、戦争のために資本と人民を動員させるために作られた都合の良い箱であり、それを抑止するために人権や民主的な政治が工夫して成立してきたのだと思う。

さて、堀江氏の議論にあった、中国が日本を侵略して何をするか。

それは明らかである。


一気に占領して皆殺しにはしないだろう。それはコストもかかるし、メリットもないからである。しかし、コストがかからなければ侵略する可能性はあるし、それにより大きな経済的メリットと政治的メリットを得ようとするであろう。

これは中国に限ったことではなく、国家を運営している以上、企業が利益を増大させるのが目標となっているように、ごく普通のことなのだ。

実際に、中国は尖閣諸島だけでなく、東南アジア各国と領海争いをしている。あれは、武力で威嚇することと同時に、既成事実を作り、なし崩し的に自国の領土を拡大しようとしている動きである。これは政治的にも軍事的にもそして経済的ににもメリットがあるだろう。

中東で起きている暴動、時間が経てば革命と呼ばれることになるであろうが、原因の一つとして、経済的な若年層の貧困、食料価格の高騰はあるだろうが、やはりその矛先が向うのが政府、とりわけ独裁として有名だった政府に向っているから、当然、政府と民衆の暴力的な戦いであることは疑いない。これまでは、抑圧されており、勝ち目がなかっただけのことであり、勝ち目が出てくれば闘う、これは民衆でも政府でも軍部でもすべて同じことなのだ。

では、そういうことが感じられない日本だけが例外か。そうではないだろう。日本は、戦後の特殊事情の下、平和ボケをしていることが戦略的に最も効率的であっただけのことだ。冷戦構造に恵まれ、そして米国側についた幸運を生かして、その幸運を出来るだけ長く享受したい、というのは、平和ボケ戦略だったのだ。

しかし、現実は変わった。放っておけば、米国の影響力が低下する中、コストベネフィットを考えて、日本の周辺各国は力を見せて押し込んでくるだろう。それは一国に限らず、ほとんどの国でそうで、そうしない国は、今は勝ち目がないから、損失を最小限にするための戦略で動いているだけのことだ。

日本はこの環境変化に対応できないでいる。政府も多くの人間はこの変化に対応しなくてはいけないと思っているし、個別の政治家でもその意識はあるほうが多数派だろう。ただ、認識の違いなどにより、対処法が混乱しているだけのことだ。

国家は闘うためにある。それは動かしがたい事実なのであり、私はその事実は嫌いだが、好き嫌いでは許されないものであり、我々は生きていかなければならないし、国家も同様である。

コメント

  1. koshidame より:

    平和な日本国内ですらホリエモンはボディーガードつけている。鳩山氏だってSP引き連れ沖縄行った。とんだ平和主義者たちだなあと思います。国や人間が弱いとシーシェパードみたいに嫌がらせをする環境保護団体みたいのも出てくる。連中はロシアや中国の調査船が鯨をとったら絶対手出ししないだろう。なぜかわからないのかな?

  2. hogeihantai より:

    米軍の駐留だけが日本の安全保障ではありません。もし米国が日本に大きな経済権益を持っているのであれば、日本が侵略された場合、自国の権益を守ろうと日本の防衛に全力を尽くすでしょう。湾岸戦争の時、クウェートの石油利権を握っていたのは英国でしたが、米国が介入した理由は自国が大きな利権を持つサウジアラビアが次の標的になると恐れたからです。

    日露戦争で英国が日本の味方をしたのも英国が持つ対日債権を失うことを恐れたからです。堀江モンと村上ファンド事件で外資が日本企業を買収することが益々困難になり米国の投資ファンドも腰が引けた状態です。JALも米国航空会社が買収予定だったのに国営となった。郵貯は米国の金融機関に売るべきだ。ドル建てで国債を発行し米国に売るのもよい。頭を使えば、日本は防衛費を増やさなくとも米国が守ってくれるよう仕向けることができる。

  3. sfdx より:

    > さて、堀江氏の議論にあった、中国が日本を侵略して何をするか。

    青山繁晴さんの受け売りですが, 近い将来想定されるのは「資源大国日本の資源を奪うこと」でしょう.

    日本近海の海底資源は莫大な量になります. 日本が資源小国だったのは過去の話です. 現在は技術・コスト面で困難がありますが, いずれ克服されるでしょう.

    実際中国は海底油田を開発済みです. そしてロシア, 実は韓国も同じことを考えているとのことです.

    「尖閣諸島を取られても大したことない」という主張は, 奪われる資源がどれだけ莫大な量か考えていないような気がします.

  4. bellydancefan より:

    問題になった仙石氏の暴力装置発言ですが、これはドイツの社会学者マックス・ウエーバーが唱えたもので、それが英訳され、日本語訳になりました。彼の出世作は、マルクスの上部構造と下部構造の二元論批判にあります。

    人間は本来武器を持たない。それが、武器を手にすると、暴力を行使出来る人間に変わる。それが、国家という単位で武器を持たせたら、暴力を行使出来る軍事国家が完成する。これが暴力装置の解釈だと理解しています。

    そして、中国が日本を侵略する可能性ですが、安倍政権の時に、北朝鮮からの攻撃を過分に受けました。なぜなら、親米保守だからです。菅政権の引き金は、シンガンス問題です。拉致実行犯を釈放してしまった。

    イスラエルのような集票システムが欲しいのであり、普通の一般市民であるノンポリティックスの支持を得ない場合、急進派の組織票・・・・・I’d rather not write more thinking of me!