クラウドと著作権についての補足

2011年02月25日 15:32

昨夜の記事には今までに15万ページビューも集まり、RTも5000を超えました。これはアゴラ始まって以来の記録です。ただ実際にこの判例がクラウド全般に適用されるかどうかについては微妙な問題もあるので、専門家からいただいたコメントを踏まえて、前の記事でふれなかった論点をまとめておきます。

  • まねきTV判決は「テレビの再送信」という特殊な目的のサービスで、一般的なクラウドには適用できない:これは誤りです。最高裁判決は目的も媒体も特定せず「自動公衆送信」一般を対象とする抽象的な論理構成になっており、テレビ番組だけではなく、音楽や書籍なども対象になります。

  • まねきTVは「機材の設定や配線」を行なったことが決定的で、ただ送受信させるだけでは「主体」とならない:これも違います。MYUTAは音楽のストレージで、配線も設定もしていない。PCからサーバに送って携帯にダウンロードする点でMobileMeと同じです。
  • ISPはプロバイダ責任制限法で保護される:これは必ずしもそうでなく、「特定電気通信役務提供者」はサービスの態様で決まるので、電気通信事業者が行なっているクラウド型サービスも訴訟の対象になる可能性があります。
  • まねきTVに入力される情報はすべて他人(放送局)の著作物だが、クラウドの場合は基本的には自分の著作物である:形式的にはクラウドは最高裁の条件に該当しますが、ほとんどのコンテンツは普通の文書ファイルなので、JASRACや放送局に阻止するインセンティブがない。しかしサービス提供企業としては、訴えられたら勝てないサービスを行なうことには法務部が反対するでしょう。

要するに、形式的にはクラウドは著作権法違反になるおそれが強いが、実質的にはそれが訴えられる確率は低い。また最高裁の意図も放送と音楽の既得権を守ることなので、クラウド一般を違法にするつもりはないと思われます。しかし大手企業の法務部は、コンプライアンス対策として予防的にクラウドを自粛せざるをえない。

これは検索エンジンや個人情報保護法で起こったのと同様の過剰コンプライアンスで、是正するには著作権法を改正して自動公衆送信の範囲を明示的に限定する必要があるでしょう。私は、多くの混乱の原因になっている自動公衆送信という概念を著作権法から削除するのがベストだと思いますが。

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池田 信夫
アゴラ研究所所長 青山学院大学非常勤講師 学術博士(慶應義塾大学)

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