「津波被災漁民」をネタに一儲け?―「シーシェパード」の動きが怪しい

2011年03月28日 10:00

シーシェパードの激しい抵抗にあった日本政府は、調査捕鯨を一時中止しました。政府の面子もあり「一時」と発表したのでしょうが、シーシェパードの資金源になった観のある調査捕鯨などは、とっくの昔に止めておくべきでした。

シーシェパードの「可愛い鯨を殺すな」と言う政治的な要求にIWC加盟国の多くが同調する現状で、農水省が「調査捕鯨は国際捕鯨取締条約で保障されたIWC加盟国の権利」一点張りの主張をしても、論議は噛み合いません。それどころか、反捕鯨傾向の強い友好国との外交関係にヒビを入れ、年間100億円近い税金を冗費し、毎年の様に捕鯨船員の犠牲者をだすなど国益に反する事ばかりです。


「科学的データ?」を根拠に、捕鯨の合理性を説く農水省の主張は、中国や韓国の犬猫食用愛好者が「野良犬、野良猫の多さからも、犬猫食用は種の保存に無影響で、伝統や食文化上も容認される」と主張する様なものです。この様な主張を世界の世論が認める状況ではありません。にも拘らず、農水省がこれほど調査捕鯨にこだわるのは、鯨肉愛好家の為ではなく、何処かに天下り官僚と特定業界の癒着があるような気がしてなりません。

一方シーシェパードは、南極海で展開した調査捕鯨妨害活動のビデオを連日の様にTVに流して大稼ぎし、皮肉な事にその資金で購入した高速船の妨害活動が調査捕鯨を中止に追い込みました。この事からも、日本政府が世論公作で完敗した事は明らかです。

TV放映で捕鯨=野蛮と言う世論を作る事に成功した彼らは、日本政府が調査捕鯨中止に追い込まれるのも時間の問題だと察知し、新しい資金源として和歌山県太地町のイルカ漁を見つけ出しました。このイルカ漁を隠し撮りした成果が、アカデミー賞長編ドキュメンタリー映画賞の受賞作『ザ・コーヴ』です。

『ザ・コーヴ』の成功でも大きな資金を手に入れたシーシェパードは、二匹目のドジョウを狙って、六人の隠密撮影隊を岩手県大槌に忍び込ませました。潜入した撮影隊が高台にカメラを据え、大槌のイルカ撲殺(?)の秘密撮りの準備をしていたそのとき、大津波が襲来したのです。

撮影用に見晴らしの良い高台にカメラを据えていた撮影隊は津波の被害も受けず、カメラを素早く津波に切り替えて、その画像をCNNに売り込む抜け目なさです。得意顔で津波の恐ろしさを語る表情から、稼ぎのネタを『憎っくきイルカ漁民』から『イルカ漁民に天罰』に替えてでも、日本を舞台に「もうひと稼ぎ」する魂胆がちらつきます。

農水省のボーンヘッドのお陰で、反日,反漁民が資金集めに効果的だと知った彼らは、益々反日、反漁民傾向を強めています。これを阻止するには「農水省」の馬鹿さ加減を直すしかありません。

調査捕鯨の正当性を主張するなら、農水省はシーシェパードに対抗して世界の世論を説得できるだけの知恵と知識を備えてから始めるべきでした。独りよがりの法律論で「合法」だと強弁する手法は、お上に弱い日本ならいざ知らず世界に通ずる交渉術ではありません。

今頃になって、法律論一辺倒では通じないと知った農水省は、鯨やイルカを食する事は日本の伝統だとか食文化だと言い出しましたが、この論議は少数原住民の伝統保護にだけ認められる論議で、日本がその様なことを主張しても、犬猫食用愛好者と同じ扱いを受けるだけです。

事ほど左様に何処の国でも、動物愛護と伝統文化の関係は微妙な政治問題になっています。日本でも、北海道のイオマンテの儀式が、1995年に北海道知事名の通達によって「野蛮な儀式」として一旦禁止されましたが、少数民族に対する世論の変化を受けて2006年には通達が撤回された実例があるくらいです。

自分で資金を調達しなければ存続出来ないシーシェパードは、政治と世論の動向が資金集めに大きな役割を果たす事を熟知しています。現に、「クロマグロ捕獲禁止」論議の盛り上がりに目を付け、地中海に妨害船を出したものの、漁民の激しい抵抗の割りに世論が味方せず、妨害活動から撤退した苦い経験を持つ彼らは、農水省の役人より遥かに政治的に賢い集団である事を知っておくべきでしょう。

シーシェパードが嫌うのは、今や捕鯨でもイルカ漁でもなく、話題から消える事です。農水省が調査捕鯨とイルカ漁の中止に踏み切る事は、シーシェパードへの屈服ではなく、大津波の被災を受けた漁民をネタに一儲けを企む彼等の意図を砕き、日本を彼らの資金源から断つ正攻法に他なりません。

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