自炊代行提訴について

2011年12月24日 03:23

この問題に就いての基本的な考え方としては、今回訴えを提起された、作家・漫画家と言った、所謂、表現者と、コンテンツの受け手である、ユーザー、消費者の双方が納得出来る仕組みの構築が必要と言う事だと思う。


どちらか一方が犠牲になるというのは、決して好ましい姿ではない。従って、玉井先生のアゴラ記事の結びの三行に、深く同意する。

「作家は自分たちの権利のことばかりを考えて、読者(お客さん)のことを考えていない」という主張に、私はまったく共感しません。彼らの権利主張は正当です。私は、断乎支持します。彼らの勇気ある行動に、私は拍手を送りたい。

さて、それではどうすれば、あるべき仕組みは構築出来るのであろうか?

先ず、原則的な話を整理してみる。

第一に、表現者に取って、メディアは飽く迄自分の作品を読者に伝える為の、ツールの一つに過ぎないと言う事実である。しかしながら、これに付随したプロモーションや印税によるマネタイズが発生するので、矢張り馴染みの所と重点的に付き合いたいと言う気持ちに傾きそうという気はする。

次に、読者は、常に、より廉価で便利なサービスに流れて行く。これは、何も出版に限らない。映画が判り易い例であろう。

当初、劇場で楽しむしかなかった映画サービスであるが、自宅でも楽しめる様にとDVDが販売された。次いで、DVDを廉価に楽しみたいという需要を満たす為、レンタルが開始された。そして、DVDを借りに行くのが億劫というユーザーの声に答えて、アメリカではNetFlixのネットでのVODサービスが大成功を収めるに至った。

日本では、この分野本命のGoogleが出てきて、YouTube が日本でも映画レンタルを開始、新作400円、旧作300円との話だ。

これは、水が高い所から低い場所に向かって流れる様なもので、止め様がない。従って、ハリウッドの映画産業が成功した様に、表現者は新しいメディアを巧く活用し、マネタイズを多角化していくべき、というのが私の基本的な考えである。

余談となるが、テレビの台頭期、ハリウッドはテレビが古い映画産業を駆逐する事を危惧した。しかしながら、ケーブルテレビを、新作映画の宣伝媒体として巧く活用したり、ロードショー、それに続くDVDの販売が一段落した段階で、映画の放映権を、ケーブルテレビのペイチャンネルに売却する等で、最後の一稼ぎに成功した。

古いメディアは、新しく台頭するメディアを敵視したり、恐れてはいけないのである。老練な技で、如何に巧く勢いのあるライバルを、使い熟すかが、運命の分かれ道なのである。今、日本の出版業界が求めれれているのは、多分この辺りの叡智と、強かさではないかと思う。

最後は、以前記事に書いた通り、出版も含まれる、パッケージメディアは所詮、どうあがこうとネットに取って代られる運命という事である。これは、当然この流れに抗う事は、自殺行為である事を意味する。

それでは、今回の自炊代行提訴を受けて、当局が業者への監視と指導を強化したらどういう事態となるのであろうか?

確実な事は、自炊代行市場は現存し、電子出版が進まねば市場は間違いなく拡大するという事である。

一方、業界に加盟する企業はこの記事を読む限り、きちんと登録されている。これは、当局の指導が可能であり、国税に対し申告、納税を行っている事を意味している。

こういう状況で当局が指導を強化すれば、真面な業者が退場し、アンダーグランドな闇の業者が代って暗躍する事になるのではないか?所謂、地下に潜るという奴である。結果、出版関連のデジタルアーカイブが、闇の組織に握られるのではと危惧する。そうなれば、間違いなく、出版業界は負のスパイラルに突入するであろう。

スキャン事業をこのまま放置すれば、無秩序な事業者の参入が進み、作家・出版社が書籍の収益からさらなる創作を行う「創造のサイクル」が大きく害されると説明。

それでは、最後にどうすべきか?の結論に移る。

私は、表現者と出版社が連携して、正規のルートで市場を満足させる以外、負のスパイラル突入を避ける可能性はないと考えている。

電子出版に積極的に取り組み、読者が怪しげな業者とコンタクトしなくても直接電子データーを購入可能にする事が肝心という事である。

価格も妥当なものでないと、商流が確立しないので、値付けへの配慮が必要である事はいうまでもない。

今回の提訴は社会に一石を投じ、この分野での法の支配を訴えた事で、極めて有意義であったと理解している。

しかしながら、今後に就いては、表現者及び出版社は価格と利便性という読者ニーヅを如何に満足させるかという、彼らの原点に立ち帰り、やるべき努力を地道にやって行くべきと思う。

山口巌 ファーイーストコンサルティングファーム代表取締役

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