半年で売り上げを4倍にした

2012年01月22日 06:30

「半年で売り上げを4倍にした」といっても、残念ながら私の会社ではない。昨年、私がコンサルタントを務めた、Sushi&Beyondという社名の、元々月商数百万円程度のケータリング会社の話である。

ケータリング会社というと、「仕出し屋」みたいなイメージをお持ちの方も多いかと思うが、同社はお洒落なパーティーやウエディングを得意としている。


掻い摘んで経緯を説明すれば、3.11の自粛ムードの影響で新規の注文がばったり来なくなり、困り果てた同社社長の管さんが、5月の連休明けに売上を増やす為の相談に来られたのが、話の始まりである。

そして、5月に徹底的に話し合い、6月から施策を実行し始めた所、本来閑散期である8月にそれなりの手応えを掴み、9月に売上の大幅増を達成。

10月~11月は調整して12月に爆発と予定していた所、嬉しい誤算で10月~11月も好調を維持し、12月は大爆発で、結果12月の売り上げは一番落ち込んだ5月の4倍を超えた。

今月も新年会の受注が好調で、月後半になり少し落ち着いた所である。

私と菅さんが何を話し合い、どう理解し、どの様な決定を下し、実行したかは、自営業の方は当然として、会社員の方にも参考になる事が多い様に思う。これが、今回菅さんの許可を得て、記事にする事にした経緯である。

最初に議論したのは、ケータリングに市場はあるのか?という、同社が事業を継続するに際しての大前提である。

事業が巧く行かなくなると経営者は不安になるものである。従って、強い戦いをする為には、先ずこの漠然とした不安を払拭せねばならない。不安は、得てしてこういった根本的な所への疑念に起因する。

結論から言えば、市場は拡大するというものであった。理由は、企業は社内の風通しを良くする為、より頻繁にパーティーを開催する。一方、予算は押さえたいので、会場費のかからぬケータリング業者に仕事が回ってくる筈というものである。

一方、ウエディングに就いても、本当に自分のやりたい結婚式を希望する若者が増えており、当然市場は拡大するであろうというものであった。

後で、振り返ればこういう当たり前の話を、一週間程かけてあらゆる角度から検討したのである。

次に議論したのは、同社がショック死しない為にはどうすべきか?という点である。

企業の突然死はキャッシュフロー枯渇の結果である。従って、議論はキャッシュフローの厚みを増す為に何をすべきか?という具体的なテーマとなった。

最初に施策として落とし込めたのは、「原価管理」の徹底である。同社の「売り」はスタイリッシュなパーティーである為、どうしても旬の食材に走る事になり(決して悪い事ではないのであるが)結果、「原価管理」が少し蔑ろにされて来た。

過去二年の原価を精査した所、案件毎のバラツキが大きい事、上昇傾向にあり、結果利益を圧迫している事が判明した。

早速、今後に就いては原価率を設定しこれを制度的に順守する事とした。このメリットは大きかったと思う。第一に、顧客と契約した時点で粗利とキャッシュフローが確定し、菅さんが資金繰りに頭を悩ます事がなくなった。

従って、以前よりずっと顧客の引き合いに余裕を持って対応出来たり、得意とするパーティーでの空間設計や、サービスに、より時間とエネルギーを割ける様になった。

結果、これが顧客満足度の向上に繋がり、リピーターが増えたと思う。

顧客をどうやって増やすか?も当然の事ながら並行して議論した。

「抜群のサービスを手頃な価格で提供する」という、同社ポリシーからして営業に余り費用はかけられず第一に検討したのはWEBの有効活用である。

しかしながら、結論から言うと同社HPを見易くし、Twitter、Face Bookお客様の声を追加するのに留めた。

一番議論したのは、リスティング広告を強化し、申し込みページでクロージングする、WEB完結の是非である。

本当に長い時間をかけ議論したのであるが、この方法だと結局は値段勝負となり、自らがレッドオーシャンを招きこんでしまう。更に、顧客がどの様なサービスを望むのかコンサルティングが出来ず、結果、問い合わせフォームに留めた。

この間の議論を通じ、同社の「企業ドメイン」を再確認出来たのが、その後の躍進に繋がったと思う。

過去2年間の同社への発注実績を調べてみて驚いたのは、80%~90%がリピーターであるという事実である。昨年の4月~8月の商いの薄い苦しい時期に、注文を出してくれたのも彼らである。そして、新規の引き合いも殆どがリピーターからの紹介である事を知った。

同社のビジネスモデルは典型的なランニングビジネスなのである。従って、プロモーションに就いては、「外資系企業」、「大使館」、「東大等の大学」等既存顧客とのシナジーに配慮したのはいうまでもない。

結局の所、振り返ってみれば、市場はあるのか?を先ず見極め、その市場に対し、自分達は何がやりたいのか、何が出来るのかを自問自答し、「原価管理」に配慮しながら顧客の求めるものを愚直に提供し続けたという事に尽きると思う。

山口巌 ファーイーストコンサルティングファーム代表取締役

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