タイトルだけ見て、「あたりまえじゃないか」と思った方、あたり前の発想をお持ちです。
ただ、このことをあたりまえに思わない人もいらっしゃるようで。
この前の私の記事に対する反論として、「東京札幌間を新幹線で移動する旅客は少ないから、北海道新幹線は無駄だ。」という意見を述べられる方が何人かいた。しかし、その理屈が成り立つのは、北海道新幹線の乗客が東京から札幌まで行く客だけしかいない場合である。
例えば、東京から札幌までの予想されている所要時間と同じ程度の時間がかかっている東京博多間を、新幹線で移動する人の割合は、低い。東京を起点にして、新幹線が競争力を持つのは、広島までだと言われている。では、広島博多間の新幹線は無駄なのであろうか。
そんなことはない。東京起点に考えれば確かに新幹線の優位性があるのは広島までだろうが、博多起点に考えると、新大阪までは競争力が高く、名古屋まででも飛行機といい戦いをしている。東京から博多まで新幹線に乗る人は少なくても、広島博多間は十分採算が取れているのである。
これはごく当たり前のことだ。その程度のことは、誰にでも理解できるだろう。東京から博多まで新幹線に乗る人が少ないからといって、広島から博多までの新幹線は無駄だ、という理屈にはならないのだ。
これを北に目を向けるとどうなるか。東京から札幌まで新幹線に乗る人が少ないだろうことを理由に、函館札幌間の新幹線が無駄だ、と言っていいのだろうか。
札幌起点に考えると、函館までの道内旅客は現状でも相当数あり、青森まで、盛岡まで、仙台までの乗客も、飛行機から大幅に移ることは予想できる。
つまり、函館札幌間の新幹線が無駄だ、と言うためには、道内旅客と、札幌から東北各地へ利用客がどれ位見込めるかを示した上で、その数が少ないから無駄だ、という理由付けが必要だ。
私がここに書いたことは、誰が読んでも当たり前のことだろう。しかし、その当たり前のことすら考えつかずに、東京札幌間の旅客が少ないことだけを理由に、北海道新幹線が無駄だという意見を言う東京人の視野の狭さと思考力の浅さは、地方に住む人間がしっかり指摘しておかないといけない。
前田 陽次郎
長崎総合科学大学非常勤講師