橋下徹氏への反論

2012年04月08日 11:36

きのうの記事に、橋下市長から直接、反論をいただいた。たくさんのツイートにわかれているが、時系列に並べると、

  1. 日本の識者は行政責任を負う仕事をして、そしてまた研究活動に戻るとか、そのような人材流動が必要だと思う。単なる審議会や委員会ではダメだ。で、朝から何をぶつぶつ言っているかと言うと、池田信夫氏にはがっかりした。この人も普通のモノ知りレベルだった。

  2. 何よりも、細かな知識を述べるだけで、事の本質を突いていない。これは行政をやったことがないからでしょう。例えば消費税は20%にする必要があると述べられていますが、今の日本の統治機構のままで消費税を20%も上げれば、どれだけ無駄遣いが生じるか、改革は完全にストップです。
  3. 池田氏は政治のプロセスを全くご存じないようだ。消費税20%と言うのは簡単だが、じゃあどうやって実現するか。今の5%で足りないのは皆分かっている。まず社会保障、特に年金の仕組みをこう変えるという方向性を示さなければならない。詳細は良い。方向性だ。これがないから国民が納得しない。
  4. 財政再建をやるなら消費税を上げることよりも本質的なことをえぐり出さないといけない。受益と負担の関係を明確にし、政治行政の仕組みとして適正な歳出になるメカニズムの構築だ。そのためには、消費税を地方税化し、地方交付税を廃止する。これは絶対に必要だが、官僚組織では言えない、できない。
  5. これからの電力供給体制をどのように持っていくのか。今までのやり方を踏襲するのか、大きく舵を切るのか。今までのやり方で良いと言うのであればそれも一つの考えだが、国民には支持されない。そうなると、これも単に言うだけ。もし電力供給体制を変えるというのであれば、何が必要なのか。[以下略]

2.まず私は「消費税は20%にする必要がある」と書いたことはない。江田憲司氏の批判の中で「5%の税率を10%にするのに15年かかった国で、それを20%以上にできるのだろうか」と書いたが、これは仮定の話である。まして「今の日本の統治機構のままで」などとは書いていない。橋下氏は、私が書いていない税率の話に論点をすり替えている。

橋下氏は、統治機構を変えるまで増税しないというのだろうか。憲法改正には、少なくとも10年はかかる。小黒一正氏のいうように、増税を1年先送りすると必要な増税率は1%上がるのだが、統治機構の改革までに財政が破綻したらどうするのか。

3.社会保障については、私はニコニコ生放送などで、現在の「ネズミ講」式の年金制度を積立方式に移行し、将来は負の所得税のような年齢に依存しない再分配にすべきだと言ってきた。この点は橋下氏と意見はそう違わないと思う。彼が積立方式を主張しているほとんど唯一の政治家である点は評価している(小沢氏は積立方式を主張していない)。

4.私は消費税を地方税にして税率や例外品目が地域ごとに異なると、租税回避が起きて大混乱になると批判したのだが、橋下氏はそれに答えていない。

5.電力供給体制については、私は小口電力の自由化が必要だと繰り返し主張している。発送電の分離については慎重な検討が必要だが、少なくとも機能分離ぐらいはしないと競争が機能しないだろう。

橋下氏も電力自由化論者だと思うが、いま関電などが設置を始めているスマートメーターは他の電力会社と互換性がなく、地域独占を守るための「トロイの木馬」である。これについて河野太郎氏などが経産省に指摘したところ、東電の入札は延期になる見通しだ。橋下氏も関電のスマートメーターの標準化を求めるべきだ。

橋下氏は私のブログをかなりくわしく読んでいるようなので、私が「今の統治機構のままで増税しろ」などと書いていないことはご承知のはずだ。むしろ霞ヶ関を中心とする「官僚内閣制」を変えないと本質的な改革はできない、といつも書いている。その意味で、統治機構を変えるという小沢氏と共通の理念は評価している。

しかし統治機構のコアである霞ヶ関は100年以上の歴史をもち、占領軍でさえ解体できなかった日本最強の組織である。これを変えるには、非常に大きなエネルギーが必要だ。私は経済産業研究所という霞ヶ関の一角に勤務したこともあるので、中央官庁の実態は橋下氏より知っているが、今の維新の会の体制では勝負にならない。

今のように大きな路線転換が求められるときには、橋下氏のような啓蒙専制君主が短期的には必要だと思う。日本の官僚機構はいまだに「天皇の官吏」であり、絶対君主の命令で動く集権的組織だから、民主党のようなコンセンサス型の組織では変えられない。

専制君主は「裸の王様」になるリスクをはらんでいるが、橋下氏には批判に耳を傾ける柔軟さがある。少なくとも、こんなふうにツイッターで批判に直接こたえるリーダーは、今まで日本にいなかった。こうした新しい政治スタイルが、日本を変えるきっかけになるかもしれない。

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池田 信夫
アゴラ研究所所長 SBI大学院大学客員教授 学術博士(慶應義塾大学)

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