電気料金や消費税上げへの抵抗の理由 --- 岡本 裕明

2012年04月11日 07:30

日本の社会面のニュースでしばしば見かけるのが国民の消費税上げと電力値上げに対する必死の抵抗。カナダに住んでいると値上げが日常茶飯事で起きているのでここまでの抵抗はあまり見受けられません。もちろん、値上げに対する反対の声はあるにはありますが、あまり声を上げすぎると自分が値上げするときに困るので必然的に声が小さくなります。

例えば私のビジネスのひとつの駐車場運営事業。特定エリアの駐車料金には通常の12%の消費税の他に21%の駐車場使用税がかかります。この理不尽な21%の使用税はバンクーバーエリアの公共交通機関を運営しているトランズリンクという会社の赤字補填に使われています。

その上、同社がマストランジットの路線拡大をするにあたり資金が足りず、もっと広範なところから税金を集めようとしています。この駐車場使用税も更に上げることが検討されています。


これに対して市民からの反対のボイスはあまり聞こえてきません。値上げに対する理由が明白に市民に伝わっていることで理解されているか諦めているのかもしれません。

では東電と消費税。日々のニュースを見ていると私でもよく見ていないと何かが起きているか分からなくなるほど刻々と状況が変わります。メディアも細かいところをどんどん書いていくため、全体像が見えなくなります。結果としてほとんどの国民の反応は、

東電→原発トラブルから生じた自業自得で値上げは認められない。
消費税→景気が悪いこんなときに税金を上げるのは言語道断。

という比較的単純図式の利用者目線からの意見となっているのではないでしょうか?

カナダでなぜ前述の税金が認められたかといえば公共交通機関の経営が悪化すれば市民生活に重大な支障をきたす、また経営は透明化され、その上でのこの値上げはやむをえないものである、という判断が効いています。この目線はどこにあるかといえばより大所高所。

では日本で大所高所の目線にならないかといえば目線が上げられないほどの状況になってしまったデフレを通じた国民の経済余力、あるいはビジネスの経営余力の欠如のように見えます。

デフレの初期はものの値段が下がり国民はウェルカムだったはずです。100円ショップが雨後の筍のようにできたのも100円で買えるものが増えたからに他なりません。ですが、結果として一般店では100円ショップとの競合が生じ、経営不振になり、値下げは経営維持のための最大の武器と化したわけです。

その結果、これ以上コストを落とせない限界を超えると人材削減と給与、賃金の低迷。それはデフレ初期に喜んでお金が節約できたはずのものがいつの間にか100円ショップでしか買い物ができなくなる罠となっているのです。

日本の名目賃金は1995年から11%の下落に対してアメリカは72%、ヨーロッパも40%の賃金が上がっています(日経)。カナダBC州では最低賃金は1年半で28.5%も上昇します。

とすればこのデフレは国民のロジックからすればみんなで値下げしてきたのだから電力や消費税だけが値上がりするのは許せない、と聞こえます。しかし値下げすることは必ずしも美徳ではありません。なぜなら誰かが破綻するシナリオになるからです。特に電力や国が破綻する訳にはいきません。公開されている情報からすれば電力会社も国家財政も常識的には持続不可能になりつつあります。

「そんなこと俺は知らない、自分で考えろ」というボイスが聞こえてきそうですが、電力も国家もきわめて公共性が高いこと、代替が直ちに存在しないことまで考えればメディアも今一度、なぜ値上げが必要なのかを検証し、本質をきちんと伝えるべきではないかと思います。私には政府や電力会社が考えていることと国民の間には大きな温度差があるような気がいたします。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2012年4月10日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。
オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。

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