どうして「財政に時間がない」と考えるのか

2012年04月13日 12:35

今回の橋下大阪市長の議論では,財政の捉え方の違いもわかりました。私は,もともとは消費税増税のみには反対(2年前の記事)なので,(この議論とは別に)反対する人の意見にはうなずけます。けれども最近は,反対が許される状況ではなくなってしまったと考えています。

ここでは,その理由を利払費からみていきたいと思います。ポイントは(社会保障の他にも)利払費が構造的に財政赤字圧力になってきているということです。財政にとって金利上昇はどちらかといえばリスク(国内消化の問題はすでに構造的かも)ですが,利払費の増大は構造的なので対応を確実にしておく必要があると考えます。


* 国債費と利払費について

まず,国債費について説明します。財政はそれぞれの国が独自の制度を持っています。なかでも日本のは特殊で,そのうちの1つがこの国債費です。

国債費は主に利払費償還費からなります。平成24年度の国債費22兆円のうち利払費は約9.8兆円で,残りの約12兆円程度が償還費などです。44兆円を借りている(赤字)ので,実際には借りたお金で借金を返す状態,さらに追い貸し状態にさえになっています。(前からですが)

償還費は借換えとも捉えられるので,借り換えを分けたときの財政赤字規模は44-12=32兆円ともいえます。(なお,最近の借換の総額は100兆円規模です。)

* 償還費と金利

ここで論点が2つあります。1つは,もし金利が一定なら償還費12兆円は,国の財政に何の影響も与えないということです。借りて返すだけです。

金利が低下していく場合には,むしろ償還費が大きい方が有利で,住宅ローンの借り換えと同じ仕組みが働きます。(日本の場合は財政赤字につながるので,赤字が良いという日本の財政形式はおかしいというわけです。)

逆に,国債の金利が上昇に転じた場合は,利払費が増えていきます。例えば1%上昇した場合,単純に考えると(100兆円規模で借換えを行っているので)毎年1兆円の利払費(そして財政赤字)増加になります。残高が1000兆円程度とすると,10年後の10兆円の規模の追加増加まで続きます。(さらにその場合は金利が上昇し,借換えが増えるので実際にはそれ以上と予想されます。)

* 構造的に利払費(財政赤字)が増えていく

そこで論点の2つめは利払費です。利払費は金利が上昇するか,残高が増大すると増えていきます。私が注目するのは指摘の多い金利ではなく,残高にともなうものです。ここ数年で低金利による利払費の減少効果が,残高増加による利払費増大を下回ってしまったということです。

下の図は利払費の推移(2012年度は当初予算,2011年度は補正後,その他は決算)で,低金利にもかかわらず今後は増えていきそうです。残高もこのまま増えていきそうなので,今後毎年1兆円規模で利払い費が増えていくと予想します。

intpay_2012

(予想は残高の推移と平行するというものです。ただ,細かなデータをもつ財務省でも予算と決算とでずれがあるので,それほど単純ではないようです。)

何が問題かというと,構造的に利払い費が増えていくため,仮に加えて金利が上昇に転ずることがあると,これまでよりも財政の対応できる範囲が狭まっていきそうだということです。これは,景気が回復して金利が上昇した場合も同じで,経済成長(税収増)による財政再建の可能性が小さくなったということです。

例えば2015年度に今より3兆円程度利払費が大きくなっていたとします。この時に金利上昇が生じてその後数兆円~10兆円超規模でさらに利払費が増えていくことが予想されたとします。この時,どのように対応できるでしょうか。

ちなみに,かつて2007年度の国債費は19.3兆円,うち利払費は7.4兆円,上で考えて(低金利時の)実際の財政赤字は今からみればわずか13.5兆円でした。

現在はそれが32兆円ですから,消費税率引き上げ5%の国分3.8%(含む交付税分)を差し引いても,少なくとも10兆円を超える歳出削減がさらに必要です。

(なお,辻氏が指摘するように今の消費税5%のうち,国は4%(平成24年度約10.4兆円)のみです。1%は地方消費税で直接都道府県へいきますが,さらに国分4%のうち1.18%が地方交付税交付金となります。引上げ後は10%のうち合計で3.72%が地方へまわることになります。)

* この先数年で,ある程度の財源確保が必要

まとめると,「消費税の地方税化」などの提案は1~2年前であれば議論の余地があったのではないかと思います。(消費税の地方税化がなぜ時間がかかりそうかはまた書きたいと思います。)けれども現状においては,数年で基礎的な財源を確保する必要があり,その可能性は今の政府案のみです。それでもさらに金利上昇リスクに対する備えや歳出の見直しも必要だと考えます。

*追記
利払費の見通しについては小黒氏による詳しい推計がありました。10年で最低でも17兆円に膨らむ予測とのことです。(小黒先生,ご紹介ありがとうございます。)こちらも是非御参照ください。http://agora-web.jp/archives/1417854.html なお,私の今回の主張のポイントは,金利に関わらず増えていく分があるということです。

岡山大学経済学部・准教授
釣雅雄(つりまさお) @tsuri_masao

アゴラの最新ニュース情報を、いいねしてチェックしよう!

アクセスランキング

  • 24時間
  • 週間
  • 月間

過去の記事

ページの先頭に戻る↑