書評:藤井敏彦著『競争戦略としてのグローバルルール - 世界市場で勝つ企業の秘訣』 --- 北田 浩二

2012年04月17日 08:00


競争戦略としてのグローバルルール – 世界市場で勝つ企業の秘訣

本書を読んで、まず、私は、こんな話を思い出した。それは、英国人が、車の全く走って来ない道路で横断歩道の信号が赤の場合でも、自分の判断で、リスクを身に背負って、道路を渡る、というが、日本人は、車が全く走ってこない道路で横断歩道の信号が赤の場合でも、信号が青になるまで待って(日本人の中でも信号が赤でも渡るという例外はいると思うが)、道路を渡る、という話である。

これは、法(ルール)に対する西洋と日本の考え方の違いを明確に表わしたものであろう。


さて、本書は、世界の中で技術力に勝るの日本企業がなぜ世界の市場で主導権を握れないのか、その原因は、何なのか、さらに、今後、日本企業が世界の市場で主導権を握り、世界をリードするには、どうしたら、良いかについて極めて適切に説いたものである。本書は、著者の藤井氏が、アームチェアに座って、他者の知見などが記載された書籍や論文などを調べて書かれたものではなく、著者の藤井氏自身の経験に基づくものであり、それゆえとても説得力のある内容となっている。

著者の藤井氏は、2000年から2004年までベルギーのブラッセルにて在欧日系ビジネス協議会(JBCE)の事務局長として、対欧州のロビイストとして活動した経験を持ち、日本に帰国後も、経済産業省の通商機構部にてWTO等の交渉を担当して来ている。

本書は、この海外との豊富な交渉の経験を背景に記載されているのである。

藤井氏は、職人の技に支えられたアナログの時代から、デジタルの時代へと移り変わった現在、技術標準などのルールも世界中に伝播し、また、インターネットが世界中に広まったため、ルールのひろがりもグローバルにならざるを得なくなった、という。

そのようなルールのグローバル化の流れに対して。日本企業は、総じて無関心なのか、はたまた、自身の技術力への過信のためか、ルールメイキングの主導権を握ることにとても消極的である。

例えば、中国の環境規制の作成への協力について、欧米の企業は規制の作成に協力を惜しまないにに対して、日本企業に声がかかっても、参加しようとせず、欧米の企業からその消極性について心配されている、という。

この現象を、藤井氏は、ルールのガラパゴス化をまねいているのではないか、と説いている。

藤井氏は、「技術で勝って、ルールで負ける」ことを「技術のパラドックス」と言い、これらの事例を多く本書の中で紹介している。日本企業は、何故、世界(の市場)で負けるのか。藤井氏は、その原因を、日本企業が、異質なプレイヤーとの戦い方を心得ていないからだという。その異質なプレイヤーとの戦い方を伝授してくれている。

本書は、日本企業の世界市場へ向けての経営戦略についての本であるが、それに劣らず、著者自身の異文化接触を元にしたルールというモノに対する欧米と日本との比較文化論の趣きも拭いきれないほど秀逸である。

本書を日本企業のマネジメントに関わる多くの人に読んでもらいたいと心から願うものである。

北田 浩二
一般社団法人 電子情報技術産業協会(JEITA)
インダストリ・システム部 情報システムグループ兼調査統計室

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