外務省に見る小さな政府の欺瞞

2012年04月29日 10:34

昨日のアゴラ記事、何故「天下り」を許してはいけないのか? に引き続き、3日前のアゴラ記事、電力は「第二の米」になるに寄せられたコメントを参照する。


JICA勤務、太田氏の下記コメントである。

H17の総務省の委託による野村総研の調査では、国、地方の公務員と公的機関に勤務する職員を合わせた数は、人口あたりの比較で、おおよそ仏国の5割、英、米の6割といったところです。この割合は私の知る限り過去十数年変わっていません。国家公務員の新採を約6割減らすそうですが、今後何年も継続すればたいへんなことになると思います。

大変意外であったが、同様の考えの方が結構多い様である。しかしながら本当であろうか?

太田氏勤務JICAの上部団体である外務省とJICAそのものを検証してみる。

先ず外務省である。

外務省-1fig05_02_00_01

成程、このグラフを参照する限り、日本の外務省は人口当たり、フランスの四分の一、ドイツの三分の一の職員で遣り繰りしている事になる。

しかしながら、外務省には大変申し訳ないが、こんな数字はインチキだと言わざるを得ない。

少し古い話であるが、発展途上国を訪問して、欧米の在外公館に勤務するコマーシャルアッタシェと面談して何時も感じたのは、経済協力プロジェクトや相手国内情に精通しているという事実である。

この事実から、彼等が前面に立って仕事を進めているのが伺い知れた。

方や、日本大使館は如何であろう?

大使閣下が「文化交流会」や「ワインの飲み比べ」の如き案件に多忙な事以外は余り見えて来ない。

業務負荷のかかるODA案件に就いて、実務はJICAと言う棲み分けが出来ており、公電の発信と訓令の受領以外何もやっていないのではないか?

中抜きと言うか、何と言うか、こんなハリウッドの映画撮影用、張りぼてセットの様な業態なら大したスタッフは必要としない。これで、少人数で業務を熟していると胸を張られても納税者としては困惑する。

それでは、JICAはきちんと機能しているのであろうか?

常勤職員の数(定員ベース)

1,827名(2012年3月末時点)

との公表である。成程、全世界のODAを2,000人弱で管理、監督出来ているのであれば優秀である。

果たして本当であろうか?

JICAは「民活」、「アウトソーシング」と称しその調査業務の多くを外部委託している。受注金額最上位の日本工営のホームページを参照する。

海外事業については、新興国を中心に経済成長に伴って活発化する物流活動を支えるための交通インフラ整備、ゴミ、水、交通渋滞などの都市問題の解決や地球温暖化防止に向けた環境対策事業などが増えつつあります。2009年度JICA(国際協力機構)のコンサルタント契約実績によると、コンサルタント業務の契約総額が600億円を突破するなど、海外への投資案件は増加の傾向があります。我々は海外事業においてもリーディングカンパニーとして業界を牽引しています。

何と年間600億円超の調査業務を外部に発注しているのである。

仮に一人当りの人件費を@1,000万円とすると、600億円÷@1,000万円=6,000人と言う事になる。

この6,000人と言う数字は無論、外務省の数字にもJICAの数字にも出て来ない。

問題なのは、話がこれで終わらない事である。

JICAが公表する下記ニュースを参照する。

これに対し、田中理事長は、東日本大震災に対するカンボジアの支援に感謝の意を表明。また、2012年のASEAN議長国としてのカンボジアの役割に期待を表し、「日本企業の進出が進む中、JICAは、経済インフラや投資環境の整備のほか、上下水道をはじめとする社会インフラ整備、法整備など、幅広い協力を実施している。中でも、幹線道路の整備については、カンボジアの発展のみならず、ASEAN全体の連結性に裨益するプロジェクトであり、それに貢献できることは日本にとっても望ましいことだ」と述べた。

日本は言うまでもなく「要請主義」の立場を取っている。従って、相手国政府から日本政府の評価に耐える「要請書」が出て来なければ話は進まない。

例えば、飽く迄一般例として説明するが、「上下水道プロジェクト」を推進する為には現地調査が必要で、この為にJICAはコンサルタントに調査の業務委託を行う事になる。

受注したコンサルタントが自分で仕事をすれば話は判り易いのであるが、実態は真逆である。

先ず、下請けのコンサルタントに自社の取り分を抜いた上で丸投げする。

下請けのコンサルタントは更に孫請けに丸投げする場合もあるだろうが、自分でやるとして、「掘削業者」、「配管業者」、「ポンプメーカー」等に協力を要請する。

ここで問題なのは、調査段階の仕事に対し、業者に経費が支払われない点である。暗黙の了解で、協力案件での受注、しかも先行して発生するコストの回収を可能とする契約金額と言う事がある筈だ。

従って、JICAは600億円程度の予算で、これ程の調査を実行していると胸を張るかも知れないが、600億円は飽く迄氷山の一角に過ぎず、実際に調査業務を行った業者のコストは含まれていない。

このスキームは良く理解されないままに、官民癒着とか、腐敗の温床とか批判される事が多いが、こう見て行くと調査に協力した業者が高値(先行投資の回収可能な)での確実な受注を前提とした「制度設計」である事が理解戴けると思う。

ここまで読まれて、いい加減うんざりされた方も多いと思う。

しかしながら、これ以上に遥かに本質的な問題がある。

総合商社の存在である。

これまで述べて来たJICA関連の話は、飽く迄プロジェクトありきの実務的なものである。

一方、総合商社は相手国政府との折衝を含めプロジェクトの表裏全てを取り仕切っている。嘘だと思うのであれば、大使館の担当にプロジェクトの中身を質問してみれば良い。一般的なスケジュールの様な点を除いて何も答えられない筈である。

そして、そもそもが大使館の職員に質問に行くような人間等いない。技術的な内容であれば、コンサルタント。それ以外の全ては担当する商社の人間と言う事になる。

こう考えて来ると、ODA関連日本大使館の機能は「床の間の掛け軸」程度であり、方やJICAは毎朝この掛け軸を拝み、民間に仕事を丸投げし、手柄を横取りする事と推測されるが、如何なものであろう?

繰り返しとなるが、こういう状態で、外務省やJICAは少ない人数で頑張っていると胸を張られても納税者としては困ると、一言言っておきたい。

そして、ODAの現状の仕組みも問題であるが、このゴールデンウイークに外務大臣以下政務三役うち揃って「外遊」の方が遥かに問題かも知れない。

そもそも、外務省の政務三役はこの様なODAの現状、そして、それを必然とするスキームを理解しているのであろうか? 

山口 巌 ファーイーストコンサルティングファーム代表取締役

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