軽々しくインターンシップを募集するな

松本 孝行

少し前に、プロボノというものが社会起業家界隈では流行しました。サービスグラントなどが仲介を行っているもので、高いスキルを用いてボランティアをすることをプロボノと言います。今までのような肉体労働ボランティアとは違い、生産性の高いボランティアという点が注目され、関西でもイベントが行われて認知度が上がってきたようです。

その一方で、NPOやベンチャー企業では当たり前のようにインターンシップの学生を募集することが行われています。ただ傍から見ていると、余りにもインターンシップを軽々しく募集しようとしすぎではないかという印象を受けます。インターンの学生は無賃労働で働く奴隷ではありません


インターンシップの本来の目的は会社へ労働力を供給するというものではなく、学生の労働研修という意味合いが強いものです。学生が将来働きたい仕事の導入部分として、インターンシップが存在しています。ですから単純に雑用をさせるのはインターンシップではありませんし、雑用をしてくれる安いor無料の労働力がほしいからといってインターンシップを募集するのは間違っています。

本来的な意味から考えればインターンを募集するのであれば、その仕事内容を明確にして、インターンシップで体験する仕事を通して、将来のキャリアに役立つような道筋を作る、ということが必要です。単なるコピーをとったりご飯の買い出しをしたり、調べ物をするだけの雑用では一般職の一部の仕事と変わらないですし、何らキャリアに寄与することはないでしょう。

昨年アゴラで若者は「海外に行け」という言葉に耳を貸すなというエントリーを書いたことがきっかけで、ニューヨーク・タイムズから取材を受け、先日コラムとしてアップロードされました(Young and Global Need Not Apply in Japan)。その時に日本の就職活動について色々話しましたが、ニューヨーク・タイムズの記者の方は日本の就職活動そのものに、大変驚かれていました。

取材の中で、インターンシップについても話をしましたが、一般的に記者になる前には3ヶ月ほどインターンシップをして、その後記者になるそうです。海外の新聞・雑誌などの記者の多くは、こうやってインターンシップを経験してから、採用されると教えてもらいました。ただ、その時はコーヒーを買ってきたりするような雑用ばかりをやらされるそうで、海外では日本以上にインターンシップと労働に関して、社会問題として取り上げられているようです。

そのかわり、海外と日本では明らかにインターンシップに違いがあります。海外では修行のようなインターンシップ期間を乗り切れば、その後は記者になるという道が拓けます。海外のインターンシップは、将来のキャリアへの直接的な足がかりとして機能していると言えるでしょう。一方の日本では経団連が採用につながるインターンシップというのを禁止しているため、このような将来のキャリアの一歩としてインターンシップが位置づけられていません(参照)。これは学生にとっては非常に大きな違いです。

冒頭にプロボノというボランティアについて紹介しましたが、単純に労働力が欲しいというのであればアルバイトや正社員を雇用すべきで、「ベンチャーやNPOには金がないんだ」というのであれば、ボランティアを募集すればいいことです。お金がないからインターンシップを募集する、という安直な考え方は賛成できません。もしインターンシップを募集するのであれば、学生の将来を考えた実地研修を用意すべきではないでしょうか。

最近インターンシップを「若い労働力を安く手に入れられる方法」と勘違いしているんじゃないか?と感じることがあります。インターンシップは若者を安く使い捨てるための手段ではありません。