外交交渉下手の汚名は時間かけても返上すべき --- 岡本 裕明

アゴラ編集部

北方領土問題をめぐり、メドベージェフ首相が二度目の北方領土訪問を行い、日露間の期待が大きくなりつつあったプーチン大統領との前向きな交渉に「冷や水」を浴びせたような状態になってしまいました。新聞には野田首相のコメントとしてこの動きが理解できないとありました。本当に理解できないのでしょうか? 私は理解できないフリをしているだけではないかという気がしております。


プーチン大統領とメドベージェフ首相はパーフェクトなコンビでこの二人で芝居をうっているような気がします。平たく言えば悪役と良い人役。今回の場合、プーチンが良い人でメドが悪役です。ロシアが一定の好条件を引き出すために政治基盤が安定しない日本をゆすっているのだろうと思います。そして、首相の発言からは国後、択捉を返還する気はまったくないとロシアの位置づけをしっかり印象付けているスタンドプレーではないかと思います。

仮に今年後半、日本の首相(最早、誰になるかわかりません)なり、プーチン大統領と一定の関係を築いている森元首相がお会いになったとしてもプーチン大統領はロシアの考えはぶれていない、と強く主張するだけだと思います。つまり、最良の結果で二島、しかも面積的には7.5%しかない二島返還を主張するでしょうし、それで手打ちをすればいくつかの重要な問題が発生します。

  1. 軟弱外交のレッテルが世界を駆け巡ります。
  2. アメリカが黙っていないでしょう。理由は今、折衷する十分なる根拠がないからです。
  3. 日本として7.5%の土地を貰うことに経済的な意味は大きくありません。
  4. 韓国との竹島問題、中国との尖閣問題に対して悪い影響が出ます。

となれば今後、何十年、何百年かけても戦ったほうが良いという見方が優勢になると思います。特に石原都知事が極めて強い姿勢で尖閣に対する主張を続け、近いうちにアメリカの主要紙に意見広告を出すともされている中で日本が領土問題には一歩も譲れないという立場を貫かなくては筋の通った外交になりません。

長い年月の中で二国間の力関係は必ず強弱が出てきます。それは外交上であったり、経済上であったり、内政であったりします。日本はそのタイミングをひたすら待ちながらも日本側も相手を揺さぶる必要があります。日本はロシアを通じた経済的つながりを考慮しどうしても強気の発言が出来ません。その失敗例としてソ連崩壊前後にこのディールを纏められなかった外交力の弱さということでしょうか?(あの時はもう一歩というところだった気がします)

私が以前にも指摘したようにロシアは天然ガスを日本にもっと売りたいと思っていますが、あと3~4年もすればアメリカとカナダから安値安定供給を受けられる可能性が高く、これはロシアを揺さぶるには絶好のネタであると思います。

私は海外で20年間、ビジネスを通じて戦争を続けてきました。海外でのネゴシエーションはシェイクハンドをしながらお互いの戦略を読みあい、交渉という話術の戦争を経て落とし所を探ることが多いと思います。それに対して戦後の日本外交は従順で無抵抗、事なかれ主義が続いている気がします。

これでは石原慎太郎都知事が影の外務大臣と言われてしまうのではないかと思います。石原氏は極端な例にしても外務省は外務省としての色を出すべきです。戦前はそういう意味で立派な外交官が多かったと思います。

今日はこのぐらいにしておきましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2012年7月10日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。
オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。