法人税は間違った税である

2012年08月07日 15:51

産経新聞によれば、大阪府は、府外から府内の特区に進出した企業に5年間法人事業税などの地方税を全額免除する「関西イノベーション国際戦略総合特区」条例案を9月定例府議会に提案することを決定した。

これについては先月、橋下市長とツイッターで議論したが、消費税より法人税のほうが地方税に適している。これを突破口に、法人税をすべて地方税にするよう財務省に圧力をかけてほしい。先月15日のメルマガの記事を引用しておこう。


地方税にするなら、消費税より法人税のほうがいい。これは世界的にも下がる租税競争が起こっていますが、日本はそれに乗り遅れ、実効税率は世界最高です。特にアジアとの差が問題で、台湾やシンガポールは日本の1/3。たとえば鴻海がシャープを買収したら、日本に子会社は置かないでしょう。


法人税を下げろというと労働組合が反対しますが、法人という人はいないので、最終的には個人が負担します。負担がどう転嫁されるかはケース・バイ・ケースですが、大阪のようにアジアとの競争が激化している地域では、新しい工場がアジアに建つという形で雇用が流出します。株主にとっては工場がどこに建つかは大した問題ではないので、法人税の負担の多くは労働者に転嫁されると考えられます。

法人税を下げると企業を誘致できるので、それを少しでも下げようという租税競争が起こります。これはゲーム理論でいう囚人のジレンマなので、税率を下げれば下げるほど有利になり、特に他に税収の少ないタックス・ヘイブンは、法人税率をゼロにして付随する収入でかせごうとします。

現実にEUでは、この10年間に税率が10%ぐらい下がりましたが、税収はほとんど減っていない。他方、日本の法人税収は2006年の半分以下です。これはもちろん金融危機の影響もありますが、円高とあいまって法人税の引き下げが遅れたことが、製造業の海外移転が進んだことも影響したと思われます。

OECDはこれに対して、ケイマン諸島などのタックス・ヘイブンとの金融取引を規制したり、租税競争の自粛を呼びかけたりしていますが、タックス・ヘイブンはOECDには加盟していないので、効果は疑問です。アメリカはテロ対策としてケイマン諸島の「マネーロンダリング」を摘発しましたが、アングラマネーは香港やマカオなどに逃避して増え続けています。

経済学者は、租税競争には好意的です。そもそも法人税は、企業の利益に課税した上に、そこから支払われる配当に課税する二重課税だからです。また経済学的には借り入れで資金調達するのも株式の発行で調達するのも同じことですが、税制では支払い利息は経費として控除されるのに配当には課税される非対称性があるため、企業は借り入れで資金を調達するバイアスが生じます。

したがって理想をいえば、法人税はゼロにすることが望ましいのですが、その代わりに何を財源にすればいいのでしょうか。世界的な税率のバランスでいうと消費税で、20%ぐらいまでは上げてもいいでしょう。これが日本の「隠し財源」になっていますが、消費税は政治的な争点になりやすく、引き上げが困難です。所得税も世界的にみて低いが、これは捕捉率に差が大きいので好ましくない。

課税強化の余地があるのは、資産課税でしょう。相続税も所得税を払ったあとの資産に課税する二重課税ですが、日本の相続税の課税ベースは4%と極端に狭いので、これを広げる必要があります。ただ、あまり税率を上げると最富裕層が海外に資産逃避して税収が減るので、税収には限界があります。

もう一つ有望な資産課税としては、固定資産税があります。これは税率が低いだけでなく、土地の評価額が低いので、これを正常化するだけでも増収が期待できます。土地には登記簿という動かぬ証拠があるので、捕捉率100%になるのが大きなメリットです。「土地持ちに不利だ」という意見があるかも知れないが、固定資産税は賃貸料に転嫁できるので、借家人も負担します。

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池田 信夫
アゴラ研究所所長 SBI大学院大学客員教授 学術博士(慶應義塾大学)

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