福島みずほ氏の合理的な空論

2012年08月16日 01:02

きのうのニコ生は、うまく話が噛み合わなかった。福島みずほ氏が延々と無内容な話を続けるので、田原総一朗氏も切れてしまった。常識派の橘川武郎氏と澤田哲生氏と私はほとんど同じ意見だったが、番組の中で説明を尽くせなかったので、細かい点を補足しておく(テクニカル)。


国家戦略室の「原発比率シナリオ」には、まったく意味がない。政府が保険機能を果たさない日本では原発は採算に合わないので、これから原発を建設する電力会社はないからだ。現状のまま放置すると、20年後には15%ぐらいになるだろう。そんなことはどうでもいいし、政府が決めるべきことでもない。重要なのは、社会的コストと便益を考えて、便益を最大化(コストを最小化)することだ。

エネルギーの便益を電力供給とすると、長期の社会的コストを最小化することが問題になる。直接コストでみると原子力が不利だが、外部コストは原子力が最低だ。外部コストには大気汚染、温室効果ガス、事故の死者が含まれるが、これは福島事故のあとも変わらない。

田原さんも納得してくれなかったが、原発事故の損害はほとんど外部コストに影響しない。福島の賠償額を5兆円としても、原子力安全委員会のIAEA基準で計算すると0.006~0.008円/kWh。石炭火力の2.55ユーロセント(2.3円)、天然ガスの1.12ユーロセント/kWhとは比較にならない。原発事故はマスコミが派手に伝えるので大損害のようにみえるが、原発は年間3000億kWhも発電しているので、kWh当たりのコストは小さいのだ。

だから国家戦略室が想定しているように「危険だが経済的な原発」か「安全だが不経済な火力」のトレードオフから原発比率を選ぶのではなく、直接コストは高いが外部コストの低い原発かその逆の火力かの選択なのだ(再生可能エネルギーは補助金なしでは問題にならない)。これは一種のポートフォリオ選択で、直接コストと外部コストをどう評価するかによって最適な組み合わせは異なる。高率の炭素税をかけると、原発が経済的になることもありうる。

核廃棄物の最終処理については、橘川氏と澤田氏の意見が食い違った。私の意見は澤田氏と同じで、これは技術ではなく政治(あるいは感情)の問題だと思う。核燃料サイクルは採算に合わないので直接処分が合理的で、日本海溝に投棄するのがもっとも低コストだ。これは通産省も投棄実験をやったことがあり、1万mの海底に捨てるとマントルに飲み込まれて消滅する(現在はロンドン条約に加盟したため不可能)。核廃棄物の体積は石炭火力の1/10000以下なので、原発の敷地内に埋めてももよい。いずれにしても、核廃棄物は技術的には大した問題ではない。

最大の問題は20年後の原発比率ではなく、いま福島で16万人が家を失っていることだ。ICRPは「1~20mSvの範囲で最適化すべきだ」と勧告しているのに、政府は「1mSvまで除染する」という原則を変えないため、被災者はいつまでたっても帰宅できない。線量基準を上げようとすると、福島氏のような「ゼロリスク教」の信者がヒステリックに反対するからだ。

私が「今のままでは除染に何十兆円もかかり、被災者は永遠に帰宅できない。それでいいのか」と質問したら、福島氏は話をそらして逃げた。目を見ればわかるが、彼女は自分の言っていることを信じていない。空論を承知で「正義の味方」を演じているのだ。どうせ社民党は結果に責任をもたないのだから、それは合理的な行動だ。政治家としてではなくタレントとしては、それなりに成り立っている。

アゴラの最新ニュース情報を、いいねしてチェックしよう!
池田 信夫
アゴラ研究所所長 SBI大学院大学客員教授 学術博士(慶應義塾大学)

アクセスランキング

  • 24時間
  • 週間
  • 月間

過去の記事

ページの先頭に戻る↑