「ゼロリスク信者」が16万人の帰宅を妨害する

2012年08月25日 13:34

福島民報によると、福島県双葉町は被災者を帰宅させるための国との協議を拒否した。国は被災地のうち、年間50mSv超を居住を認めない帰還困難区域、20m~50mSvを帰宅や通過を認める居住制限区域、20mSv以下を除染して早期帰宅させる避難指示解除準備区域に再編する方針だが、双葉町は「チェルノブイリ原発事故では5mSv超の地域の住民を移住させた。その4倍も高い20mSvを基準とする国の方針は認められない」と主張している。


この記事を読んで思い出したのは、先日のニコ生で森ゆうこ氏が「チェルノブイリの立入禁止基準は5mSvだが、国の基準はその4倍も高い」と批判していたことだ。彼女のように「どんな低線量でも放射能は危険だ」と宣伝するゼロリスク信者が16万人の被災者の帰宅を阻み、600人以上の犠牲者を出したのだ。

除染も中間貯蔵施設も瓦礫の除去も、同じ理由で進んでいない。専門家は「線量の高いところからできる範囲で除染し、並行して帰宅を進めるべきだ」と助言しているが、国は「原則として1mSvまで除染してから帰宅させる」という方針を変えないため、避難指示を解除しても帰宅できない。

皮肉なのは、双葉町が町内すべてを帰還困難区域に指定しろと国に要求していることだ。常識的に考えると帰宅できないのは困るはずだが、今さら被災地に帰っても仕事はない。それより帰還困難区域に指定されれば、住宅や不動産が全損とされてその評価額を東電が賠償する。帰宅するより補償金をもらうほうがいいのだ。

こういう要求がエスカレートすると、国の再編方針は空文化し、被災地の大部分が廃墟になり、その不動産を東電が買収する結果になる。この除染と買収のコストを加算すると、東電の負担は数十兆円になるだろう。東電の経営は破綻しているので、そのコストは結局、国民負担になる。

混乱の元凶は、非科学的で一貫性のない政府の線量基準だ。居住の基準を年間20mSvとする一方で除染は1mSvを目標とし、学校は2mSv以上をすべて除染し、瓦礫は1mSv以下に規制する。その科学的根拠を説明しないから、反対派が現地で反対運動を繰り返し、瓦礫の撤去さえ進まない。政府は除染や帰宅の基準を統一し、その科学的根拠を国民に説明すべきだ。

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池田 信夫
アゴラ研究所所長 SBI大学院大学客員教授 学術博士(慶應義塾大学)

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