ベビーカー問題は、ピークロードプライシングで解決できる

井上 晃宏

「満員電車ベビーカー論争」を読んでみた。

甲論乙駁あるようで、抜けている視点がある。

ピークロードプライシングだ。


満員電車といっても、乗車率が150-200%にもなるのは、朝夕の合計6時間くらいで、他の時間帯は空いている。ベビーカーを載せても、どうということはない。つまり、ピークを平坦化できれば、何も問題ない。

時間帯別料金を設けて、混雑路線のラッシュアワーだけ高額料金を取ることにすれば、ピークは平坦化することができる。

混雑料金による余剰収入は、他の時間帯の料金の値下げに回せば、オフピーク時乗客の消費者利益を増やすし、需要が喚起されて、オフピーク時間帯の乗車率が上がれば、設備の稼働率向上と同じ効果がある。

昨年から検討されている、電力ピークシフトと全く同じ話だ。ピーク電力の限界費用はとても高いが、ベース電力の限界費用は安いので、ベース電力を使うように消費者を誘導すれば、全体のコストを抑え、電力料金総額を下げることができる。

時間帯別消費量を測定できるスマートメータが、まだ、設置されていない電力網にくらべて、大半の鉄道には、すでに、ICカードを扱える自動改札機が普及しているので、時間帯別料金を取ることは技術的に難しくない。改札機のソフトウェアを書き換えるだけでいい。

紙の乗車券やプリペイドカードを廃止し、電子マネー乗車券のみに統一する。乗車時刻、乗車駅、降車時刻、降車駅の記録から、乗車時間帯と乗車路線を割り出し、課金する。将来的には、車内や構内で、ICカードに電波でアクセスし、細かい移動経路を記録することもできよう。定期乗車券は廃止し、その代わり、大口利用者向けの割引電子マネーを販売する。

ピークロードプライシングは、ずっと以前から、電話料金では、実施されている。23時から翌8時までの定額通話サービス、テレホーダイ(懐かしいね)は、初期のインターネット接続のインフラとなった。

有料道路においても、ピークロードプライシングはある。深夜、休日割引が設定され、混雑を分散することに成功している。

技術的にも、理論的にも、鉄道のピークロードプライシングは問題ないし、長距離列車の特急券では、繁忙期料金という形で、すでに導入されているのだが、通勤路線では導入されていない。この理由は、単に、料金を認可する政府当局が、世論の反発に抵抗する気がないからだ。

鉄道保守作業上の問題があることは承知しているが、将来的には、都市部では、鉄道を24時間連続して動かすことが、必要になるだろう。タイムシフトは、結局、24時間都市に行き着かざるをえない。

参考文献
首都圏鉄道網におけるピークロードプライシングの導入

(追記)書き終わってから気がついたが、鉄道ピークロードプライシングは、都市部の電力消費のピークシフトにもなる。始業時間、終業時間がばらばらになるから、電力ピークは平坦になる。