非核三原則という虚構

2012年11月11日 12:15

橋下市長が広島で、非核三原則に言及した。各メディアでニュアンスが違うが、読売によれば、発言は次のようなものだ:

非核三原則は基本的に堅持するが、「持ち込ませず」というのは日米安保条約の中で可能なのか。(現実に核が)持ち込まれているなら、国民に開示して議論しなければならない。米海軍第7艦隊が核兵器を持っていないことはあり得ない。日本が米国の核の傘に守られている以上、持ち込ませる必要があるなら国民に理解を求めたい。


この発言は矛盾している。第7艦隊が核を搭載していることは明らかで、日本に寄港するときだけ外すことはできない。それを容認するなら、非核三原則は「堅持」できない。おそらく「堅持」のほうは広島へのリップサービスだろう。それを除けば、彼の発言はごく常識的なものだ。

アーミテージ=ナイ報告もいうように、アメリカにとって非核三原則は「もう終わったこと」である。そもそも中国と戦争が起こったら、日本は核攻撃の対象になるのだから、われわれは核戦争のリスクの中で暮らしているのだ。防衛のための核兵器だけを「持ち込まない」ことは、核の脅威から日本を守るどころか脆弱性を増すだけだ。

むしろ深刻な疑問は、もし中国が日本を核攻撃した場合、アメリカは本当に日本を守ってくれるのかということだ。日米安保条約には「両国は共通の危機に対処するように行動する」と書かれているだけで、アメリカが日本を防衛する義務は明記されていないが、アーミテージは「駐留米軍が核有事の際にアメリカが日本を守る担保だ」という。沖縄の人々が騒いでいるのとは逆に、彼らの生命を守っているのはアメリカ兵という「人質」なのだ。

しかし核戦争になれば、アメリカ本土が中国のICBMで攻撃されるリスクがある。米政府が本当にそのリスクをおかして日本を守ってくれるかどうかはわからない。日本を守る義務は日本政府にあり、米政府は自国の国益にそって行動するだけだ。それが心配なら、日本は核武装するしかないが、これにはアメリカが強く反対している。彼らがもっとも警戒しているのは、日本が核武装して対米戦争を仕掛けることなのだ。

実はこの問題が、「原発ゼロ」をめぐるドタバタの背景にあった。日本はすでに潜在的な核保有国であり、その気になれば1ヶ月もあれば核兵器をつくることができる。アメリカは日本が大量の余剰プルトニウムをもっていることを警戒しているのだが、民主党政権はまったくそれに気づかず、幼稚な「原発ゼロ」政策を打ち出して1週間足らずで撤回した。

他方、アメリカにとって日本の戦略的重要性が大きくないと判断すれば、米軍基地を撤収するだろう。日米同盟がなくなったとき、日本は核兵器なしで中国の脅威に対抗できるのだろうか。現状で日本が核武装することは現実的とはいえないが、そのオプションを残す必要はある。

橋下氏もいうように「核廃絶は理想だが不可能だ」。中国が核兵器を増強しているとき、アメリカが一方的に核兵器を減らすことはありえない。歴史的な役割を終えた非核三原則は廃止し、日本は現実的な核戦略を構築すべきだ。

追記:このブログ記事によると、第7艦隊の原潜に搭載されていた戦術核はすでに退役し、艦載機にも核は搭載していないようだ。未確認だが、これが事実だとすると、この記事も橋下氏の発言も間違っていることになる。

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池田 信夫
アゴラ研究所所長 SBI大学院大学客員教授 学術博士(慶應義塾大学)

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