「脱原発」の終わり

池田 信夫

太陽の党が日本維新の会に合流して「第三極」が話題になっているが、前回の総選挙で似たような政策を掲げたみんなの党が小選挙区ではほぼ全滅したことを考えると、比例で10~20議席がいいところだろう。政策合意にも見るべきものは少ないが、維新の会がこれまで主張していた「脱原発」が消えたことは大きな前進だ。


橋下氏は昨年の夏には過激な「脱原発」を主張していたが、今年の大飯再稼働のころから、現実的な主張に変化していた。読売テレビの番組で私と議論したときも「原発は火力より安全だ」と認めていた。ただ「エネルギー戦略会議」の反原発派に引っ張られて、みんなの党との政策合意では「脱原発」を打ち出していたが、石原氏に説得されて反原発派を切り捨てる区切りがついたのだろう。

他方、野田首相は解散会見では「原発ゼロ」を掲げた。これは論理的に矛盾しているばかりではなく、野田氏の考えとも違うと思うが、自民党との差別化のための戦術だろう。実質的な政策決定を行なう細野政調会長は原発容認派だし、今の執行部からは菅政権をミスリードした反原発派はすべて排除されている。

自民党は「10年以内に結論を得る」という無内容な公約を掲げているが、甘利政調会長以下の執行部は容認派なので、今回の総選挙の争点の一つになるエネルギー政策をめぐっては、民主党と自民党の対立は鮮明ではない。むしろ現実主義の自公民と、脱原発を掲げる泡沫政党の闘いだ。維新の会が前者に近い政策を掲げれば、選挙の結果次第では政権の一角に入る可能性も出てくる。

世論調査をみると、自公で過半数はむずかしい情勢だから、自公民の連立政権になる公算が大きい。その最大の障害は「野合だ」という批判が出ることだが、このように政策の相違が小さくなってくると大した問題ではないだろう。むしろ自公民のシェアがあまり大きくないほうがいいので、泡沫政党ががんばることに期待したい。