違法状態のまま総選挙を行う国の民主主義のセンスと #若者参画2.0

2012年12月06日 08:30

最高裁判所に「違憲状態」とされた「1票の格差」の問題は、いわゆる「0増5減」によって法改正されたものの、実際には「違憲状態」とされた選挙区のままで今回の総選挙が行われている。こうした中、衆議院総選挙の公示日12/4火、総務省が選挙人名簿登録者数を発表したが、300小選挙区のうち有権者が最も多い千葉4区と、最も少ない高知3区の「1票の格差」は2.43倍となり、「違憲状態」とされた2009年の衆院選の2.30倍よりもさらに広がった。


もう1つの「違法状態」として、日本国憲法の改正手続きに関する法律の附則3条で、施行日である2010年5月18日までに選挙権年齢を18歳に引き下げるために必要な法制上の措置をとることになっているにも関わらず、放置されている問題もある。
「1票の格差」の問題は、民主主義の本質であることはもちろんだが、一方で「都市部と地方」といった政治構造、同様に都市部と地方における世代の割合を考えれば、「若者と高齢者」という世代間の問題とも言い換えることができる。なぜ、この国は、民主主義の根幹である選挙の仕組みすらこうした状態のまま総選挙を行うのか、国のセンスとこれからの若者参画について考えたい。

今年10月、「1票の格差」が最大5.00倍だった2010年の参議院選挙の選挙区の定数配分は違憲として選挙無効を求めた裁判で、最高裁が「違憲状態」との判断を示し話題となった。さらに約1年前、最高裁は2009年の衆議院総選挙においても選挙区で「1票の格差」が2.30倍あり「違憲状態」としていた。最高裁は、とくに各都道府県に1議席ずつ割り振る「1人別枠方式」について「格差の主因」として廃止を求めた。単純に人口比例で議席を配分するため、大都市部の議席を増やし、21県の議席を1つずつ減らす「21増21減」が考えられ、実現すれば「1票の格差」は1.64倍にまで縮まるが、減らされる県の議員らが反発し、この改革は事実上見送られた。
急な形で衆議院が解散となり、場当たり的に5県で1議席ずつ減らすいわゆる「0増5減」の法改正は行われたが、冒頭でも書いた通り、今回の総選挙は、そのままの選挙区で行われており、格差は2.30倍から2.43倍とさらに拡大してしまった。こうした「違憲状態」を理由にした選挙無効を求める裁判が、選挙後に行われることになるのだろうが、その格差が最も大きいのが千葉4区だというのも考えさせられる。
「1票の格差」の問題は、民主主義の本質であることはもちろんだが、一方で「都市部と地方」といった政治構造による産物であり、同様に都市部と地方における世代の割合を考えれば、「若者と高齢者」という世代間の政治力による産物だと言い換えることもできる。

さらに、若者の参画を阻むものとして上げたいのが、選挙権年齢の引き下げの問題だ。
日本国憲法の改正手続きに関する法律(国民投票法)の附則3条では、「国は、この法律が施行されるまでの間に、年齢満十八年以上満二十年未満の者が国政選挙に参加することができること等となるよう、選挙権を有する者の年齢を定める公職選挙法、成年年齢を定める民法(明治二十九年法律第八十九号)その他の法令の規定について検討を加え、必要な法制上の措置を講ずるものとする。」とされており、施行日であった2010年5月18日までに18歳選挙権を実現するよう公選法を改定しないことは「違法状態」となっている。
こうした状況について、以前、『違法状態になっても若者に声を出させない日本の民主主義』と書いたが、こうした民主主義の根本の部分にすら様々な政局や政治力によって、若者世代にとって、その権利が脅かされる状況になっていることを、ぜひ多くの同世代で共有できればと思う。

若年世代の投票率が低いことは、世界共通の課題であり、この国においてもその状況は例外ではない。しかし一方で、20代の投票率は、この数回の国政選挙では上がり続け、その上昇率は、どの世代よりも大きい。こうした状況は、世代間格差の問題や、少子高齢化や経済の低成長により大きな転換が求められる社会システムの問題など、多くの若い世代が「自分たちが何とかしないと、この国はこのままではダメだ」と思い始めたことを示しているのではないだろうか。
 この国の政治についての関心が最も高まり、この国の仕組みを国民レベルで考える唯一のタイミングが、総選挙だ。与えられた権利と世代の持つ能力を最大限に生かしながら、何ができるかを考えてもらいたいと思う。

2006年からこうした世代間格差の問題、とくにシルバー・デモクラシーとも言える高齢者の声が過度に反映される政治状況を変えていくために、ユース・デモクラシー(若者民主主義)が必要だと訴え続けてきた。こうした中、国会議員や官僚、学者から見ても「正論だ」と言われるシガラミのない中で創ったレベルの高い「ホンモノ」の政策の提言をと2008年に発表したのが『ワカモノ・マニフェスト』だった。
今回の総選挙に向けて新たに改訂し、『ワカモノ・マニフェスト2012』(http://t.co/vPebYswp)を発表した。ユース・デモクラシー構築のために提示したのは、若者の声が必然的に反映される選挙制度の改定、政策形成過程に若者の声が反映される仕組みの構築、そして政治家が無視できない若者の政治力を高める仕組みづくりだ。
1つ目の若者の声が必然的に反映される選挙制度改革として挙げたのは、「千葉4区」「東京18区」とエリアで分かれている選挙区を「若者区」「20代区」といった世代区に分ける「世代別選挙区」の導入や、選挙権のない世代の子どもたちの投票権を子どもに代わり親が投票するという「ドメイン投票」の導入、「選挙権年齢の16歳への引き下げ」、「被選挙権の成人年齢への引き下げ」等といったものだ。
2つ目として挙げたのが、若者の意見反映を義務付ける「若者参画基本法の制定」や「若者政策担当大臣の配置」だ。
こうした選挙や政策形成プロセスにおいて、若者の声が反映されるガバナンスの仕組みを創ることが本質だと思うが、一方で、シルバー・デモクラシーの本質である政治への影響力をつけなければ、こうした仕組みすら構築できないと問題もある。
こうした視点から3つ目の若者の政治力を高める仕組みづくりとして挙げたのが、「SNS等ICTを活用したオープン・ガバメントや直接参画 の仕組みの構築」と「インターネット選挙の解禁」である。
若者の政治的な参画を『見える化』することで政治的な力をつけていく必要がある。その仕組みとしてSNSなどインターネットの活用には大きな可能性がある。
『コンクリート化』した政治的な利益団体のようにとは言わないが、若者もまた『コンニャク化』せめて『飲むゼリー化』程度に世代としての政策課題や争点を共有し、また世代としての『想い』や『問題認識』、『動き』が、政治家はじめ上の世代から『見える』ようにする必要がある。
政治や行政主導のこの国のガバメントの仕組みに、新たな「第3の仕組み」を加えた新しいガバナンスの仕組みを創ることの必要性を強く感じる。民主主義2.0と言われる新しい仕組みを構築して政治的な影響を与えていくことこそ、これからの新しい「 #若者参画2.0 」と言えるのではないか。
この国の政治は、あと数回の選挙で、構造自体が大きく変わるだろう。単に政界再編レベルでないガバナンスの転換だ。個人的には、社会システムや政治システムを転換する本当の勝負は次回だとは思っているが、次につながるキッカケをどう創れるか、また、どこまで仕掛けを仕込めるかが、今回の選挙で求められている。

<参考>
ワカモノ・マニフェストHP
『ワカモノ・マニフェスト2012』
『若者度評価』

高橋亮平
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