「賃上げ要請」でスタグフレーションが起こる

2013年02月12日 12:40

アゴラではアベノミクスを批判する記事が多いが、これは編集部が検閲しているからではない。小倉正男氏の記事は珍しく安倍政権を賞賛する意見としておもしろいので、簡単にコメントしておこう。


まずローソンが「アベノミクスに賛同して賃上げする」という発想が奇妙だ。もちろんローソンの業績がよければ賃上げするのは経営者の自由だが、もともとインフレ目標まで設定して物価を上げようとしているのに、賃上げしたらインフレの効果が帳消しである。

「日銀に雇用最大化の義務を課す」といっていた安倍首相が企業に賃上げを要請したのは、彼がリフレの意味を理解していないことを示している。安倍氏のブレーンである浜田宏一氏も次のように述べている。

よく「名目賃金が上がらないとダメ」と言われますが、名目賃金はむしろ上がらないほうがいい。名目賃金が上がると企業収益が増えず、雇用が増えなくなるからです。それだとインフレ政策の意味がなくなってしまい、むしろこれ以上物価が上昇しないよう、止める必要が出て来る。

次に「内部留保を取り崩して賃上げする」というのもおかしい。内部留保(利益剰余金)は「余っている金」ではなく、企業の設備投資の原資である。それを賃金に回すということは、ローソンの出店資金が減ることを意味する。もちろんそれも一つの経営判断だが、政府が口を出す筋合いの話ではない。

もし政府が「要請」してすべての企業がローソンと同じように3%の賃上げをしたとすると、浜田氏もいうように雇用が減る。コストが圧迫されてインフレも起こるだろうが、企業収益は賃上げで相殺されるので、失業とインフレの同時進行、すなわちスタグフレーションが起こるだろう。こういうナンセンスな話を政府や経営者が議論するのは恥ずかしい。

アベノミクス擁護論にはこういう初歩的な間違いが多いが、論争は大いに歓迎するので、遠慮せずに投稿してください。

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池田 信夫
アゴラ研究所所長 青山学院大学非常勤講師 学術博士(慶應義塾大学)

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