為替は「うねり」ながら変化する --- 岡本 裕明

2013年03月09日 12:15

統計局発表の1月の消費者物価指数。総合が前年同期比マイナス0.3%、食料品を除くいわゆるコアインフレ率がマイナス0.2%、食料、エネルギーを除くコアコアがマイナス0.7%とデフレの傾向は今のところとどまるところを知りません。

安倍首相が金融緩和を叫ぶはるか前の昨年2月14日に日銀のバレンタインサプライズ緩和を含め、度重なる緩和政策を行っています。勿論、安倍首相になってからも行っています。がデフレから脱却できる気配は見出せません。新日銀総裁には黒田東彦氏になる公算が高いと思いますが、いくら黒田氏でもいわゆる緩和という手法では底が知れているという状況にあると思います。


そんな中、急速な円安により貿易収支が悪化してきているのには注目すべきかと思います。日本は歴史的に貿易で稼いできたのですが、このところ、赤字が続き、経常収支の悪化に繋がっています。理由は円安による輸入物価の上昇による影響が大であります。ある金融機関の専門家が円安により輸入物価の上昇よりも輸出によるメリットの方が大きい、と述べていたのですが、日本が内需主導ですからそんなはずはないと思います。

輸入物価の上昇はある時点で必ず製品に価格転嫁されます。特に日本の場合、いわゆる安売り競争でギリギリの採算でビジネスをしていることが多いかと思いますので企業により為替予約が切れるこの春以降確実に最終価格に転嫁されてくると思います。その際、もしかしたら「値上げする勇気」がたたえられる会社が出てくるかもしれません。そうすれば日本企業は実に節操がないですからどの会社もここぞとばかり値上げに走るはずです。

つまり、日本がインフレに転換するきっかけは案外ほんのちょっとしたマインド変化で爆発的におきると見ています。そうであれば2%のインフレは可能かもしれません。しかしながら、景気が低迷したままでの2%のインフレは先日申し上げたようにスタグフレーションとなります。健全なるインフレにするには多少、タイムラグが必要となります。

そのタイムラグとは株価が上昇し、地価が上昇し、結果として国内景気が回復し、賃金上昇に繋がるという一連の長いサイクルの中で賃金上昇が原則一番最後であるという点においてタイムラグがあるということであります。

また、インフレだけが先に進んでしまった場合、金融緩和からの離脱、つまり金利上昇の余地を残すことになり、結果として円が買われ円高に逆戻りすることもありえます。白川総裁が気にしていたのはこのストーリーではないかと思っています。

よってこれから向こう半年間の貿易収支と消費者物価指数の動向は極めて重要な判断材料になると思います。少なくともアベノミクスでもっとも効果的だったのは金融緩和をする、という言葉に強く反応した為替だったような気がします。ただ、先日のG20で麻生大臣の強気発言とは裏腹に今までの口先介入が出来なくなり、要人の為替に関する発言に厳しい統制が敷かれています。そのうえ、アメリカから外債購入の手段を封じられましたので今後は円の水準の正しいジャッジメントを探る展開になるはずです。

円安傾向が続けばよいと考える人は多いと思いますが、世界情勢を見る限り主要通貨の天秤を考えた場合に円がこれ以上安くなるより高くなる理由も多いと思われます。アメリカの財政問題、イタリアの選挙結果は先行き大きな頭痛の種になりそうです。以前も申し上げましたが為替はうねるのです。一方通行は平常時ではありえないということを前提にすれば、90円台の為替水準をベースにじわっと来る物価上昇に気を引き締めておかねばならないということでしょうか?

今日はこのぐらいにしておきましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2013年3月6日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。
オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。

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