朝日新聞の生み出す「国体」と「空気」

2013年04月11日 17:36

朝日新聞が「原発の再稼働はあと数年できない」という記事を1面トップで出している。それによれば「原子力規制委員会は10日、原発の新しい規制基準案をまとめた。原発を運転するには基準への適合が条件。適合には数年単位の時間がかかるものもあり、半数の原発は当面再稼働できなくなる」そうだ。


いまだに朝日新聞の社会部は法律を理解していないらしい。朝日の論理を電車に適用すると、こうなる:

地下鉄のある駅で、プラットフォームから落ちた酔っぱらいが電車にひかれて死んだ。これを受けて国土交通省は「駅のプラットフォームに防護壁の設置を義務づける」という規制案をまとめた。電車を運転するには新基準への適合が条件。すべての駅に防護壁がつくまで全国の電車は運行できなくなる。

たしかに駅に防護壁をつければ安全になるが、そういう法律ができたとしても既存の駅には適用されないし、電車の運行にも関係ない。そもそも安念潤司氏の指摘するように、規制委に再稼働するかどうかの審査権はない。すでに定期検査には合格しているからだ。

ただ原発のように特に高い安全性が要求されるプラントについては、例外的に既存の発電所に遡及して改善するバックフィットが求められる場合がある。原子力規制委員会設置法43条の3の23では、次のように定める予定だ:

原子力規制委員会は、発電用原子炉施設の位置、構造若しくは設備が[・・・]原子力規制委員会規則の規定に違反していると認めるときは、その発電用原子炉設置者に対し、当該発電用原子炉施設の使用の停止、改造、修理又は移転、発電用原子炉の運転の方法の指定その他保安のために必要な措置を命ずることができる。

しかしこの規定はまだ施行されておらず、そのもとになる新基準も「案」にすぎない。基準案に入っているフィルター付ベントは、米NRCも義務化を見送った。しかも西日本のPWR(加圧水型)はフィルター付ベントをつけなくても再稼働を許可するが、東日本のBWR(沸騰水型)はだめだというのも恣意的な裁量行政だ。

「なぜ定期検査の終わった原発は再稼働させてほしいと言わないのですか?」と電力会社の幹部にきくと「そんなこと言ったら非国民扱いされます」という。原発は戦前の「国体」のような不可侵のタブーになってしまったのだ。戦前にそういう「空気」をあおって日本を戦争に引きずり込んだ朝日新聞が、同じ手法で原発を廃炉に追い込もうとしているのは、それなりに一貫した社風ともいえよう。

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池田 信夫
アゴラ研究所所長 青山学院大学非常勤講師 学術博士(慶應義塾大学)

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